蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「白と黒の恋人たち」

ビデオジャケットの解説を読んで、なかなかよさそうだと思い、借りてきた。
映像は、モノクロの美しさとドラマティックさを、よく表現していてよかったのだが、私はストーリーに不満が残った。
監督は、ゴダールからカラックスまで、世界中の映画監督から熱狂的な支持を得ているフィリップ・ガレル。
この作品は、彼の自伝的要素が強いらしいのだが、そんなにドラマティックだとは感じなかった。

主人公は若き映画監督のフランソワ。
「麻薬に溺れる若者を描き、その恐さを訴えたい」と思っている。
それは、彼が以前同棲していたモデルのキャロルの映画でもあった。
女優の卵、リュシーと出会い、恋に落ちたフランソワは、彼女をこの映画のヒロインにすることに決める。
脚本を書き上げ、資金集めに奔走するが、なかなかパトロンが見つからない。
そんなとき、友人に紹介してもらったシャスという男は、自分の頼む仕事をしてくれたら資金を出すと言う。
その仕事とは、麻薬の運び屋だった・・・。

主人公のフランソワの苦悩が、あまり見ている方に伝わってこない。
元恋人のキャロルについて、少々説明不足なのではないだろうか。
キャロルとフランソワの愛の説明が不十分だったので、フランソワの苦しみや、この映画にかける意気込みが、まったく感じられない。
ただの甘っちょろいボンボンにしか見えない。
世間知らずで「善」の世界しか知らない男。
その点、百戦錬磨のシャスは、いくら汚い仕事をしているといっても、男として魅力的である。
世の中の苦味を知っている。
「麻薬撲滅」の映画を撮りたい男に依頼した仕事が、麻薬の運び屋だとは、シャスという男、なかなか洒落ているではないか。
資金がないと映画が撮れないと、フランソワはしぶしぶ承諾するのだが、なにせ覚悟ができていないので、見ていて滑稽である。
そんな彼と、悲劇性もなにもないリュシーが恋愛しても、全然切なくもなんともない。
ラストシーンを見ても、フランソワのマヌケぶりと、リュシーのバカさ加減が際立っただけ。
久し振りに、ハズレの映画だった。

「白と黒の恋人たち」公式HPhttp://www.bitters.co.jp/shirotokuro/


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