蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「人魚の嘆き 魔術師」

書籍名:人魚の嘆き 魔術師
著者名:谷崎潤一郎
出版社:中央公論新社

感想:本屋で偶然見つけ、表紙の絵や作品中の挿絵の美しさに、思わず買った本。
巻末の解説で、中井英夫氏がこの装画はビアズレー(ビアズリー)の「サロメ」を模していると言っている。
そうそう、私はビアズリーの絵も大好きなので、その挿絵にもひかれて買ったのだ。
タイトルにある「人魚」「魔術師」という言葉も、私の胸をくすぐる。
そして内容の不可思議な世界が、すっかり私を虜にした。
「人魚の嘆き」は、まるで山田章博氏の作品「人魚変生」のように、最初の1行から私を異界へ呼び込んだ。
中井氏の解説には、このような谷崎の耽美主義が、江戸川乱歩や横溝正史に多大な影響を与えたとある。
まさに、乱歩の嬌艶さや横溝の「蔵の中」「鬼火」「面影双紙」のような壮絶な美しさは、谷崎からきているのだ。納得。

中国がまだ清朝だった頃、南京の街にうら若い貴公子がいた。
彼は財産はもちろんのこと、類まれなる才智と美貌を兼ね備えていたのだった。
そんな彼が、日々の豪奢な放蕩にも倦み、新たな刺激を求めているとき、オランダ人の男があるものを持って、貴公子の前に現れる。
彼が貴公子の前に運んできたのは、人魚だった・・・。

この「人魚の嘆き」も「魔法使い」も、その煌びやかな言葉の装飾に、私は目がくらんだ。
そしてお気に入りの作品リストにこの2作品を入れた。




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