蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「辛淑玉のアングル」

書籍名:辛淑玉のアングル
著者名:辛淑玉
出版社:草土文化

感想:とても読みやすいのだが、内容はゴツンゴツンと私の胸にぶち当たる。
最初の頁を開いて、まずショックを受ける。
そのまま本から顔があげられなくなった。

女性だからマイノリティー(少数派)だと思っていた私だが、日本人としての側面ではマジョリティー(多数派)だったと気がつく。
当たり前だと思っていたことが、実は当たり前ではなかった。
そんなことにも気がつかなかった。自分は恵まれた環境で生きてきたと痛感。
特に印象に残ったのが「タマイカ・すご」という章。
「タマイカ?タコイカの間違いじゃないの?」と思いながら読みすすめる。
少し引用すると・・・。
「どだいこんなバカげた話があるのか。多摩川にプカプカ浮いていたアザラシの『タマ』に、横浜市西区は住民票を渡すという。
この国は、三代四代にわたって百年近く日本で暮らしている在日を含め、外国籍住民にはいまだに住民登録を許していない。外国人登録証で管理され、行政サービスからも排除されている。」
(「辛淑玉のアングル」辛淑玉著 草土文化より抜粋)
そうか、在日の人たちには住民票が与えられていなかったんだ。
ということは選挙権がない。しかし税金は払っている。
タマちゃんはたしかにかわいいが、周りの人間のあの熱狂振りには驚いてしまう。
まさに平和ボケした日本の現状を露呈していた。
さて「タマイカ・すご」とはどういう意味か?
著者は言う。
「多摩川で泳いでいれば住民票がもらえるなら、私も泳いでやる!タマと結婚すれば住民票がもらえるなら、婚姻届でも出しましょうか?
税金を払い、日本人と同じように責務は負わされ、そして、排除される。
私はタマ以下なのだ。
これからは、自分の日本名を『タマイカ・すご』にでもしてやろうかと思っている」
「タマイカ・すご」・・・この名前を我々日本人はどう聞くか。
あとがきの「声を出そう」の内容も、「タマイカ・すご」同様心に突き刺さった。



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