蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「芦屋能・狂言鑑賞の会」

学生時代、学校から見に行って以来、初めて見る能楽の舞台。
動機は、最近野村萬斎さんのファンになったからなのだが、狂言はまだしも、能を見るのは、寝てしまいそうでなんだか不安だ。
現に、学生時代に見た舞台は、ほとんど覚えていない。
ただ、能の演目が(能楽の場合は番組というのだろうか?)「葵上」だったということだけは、覚えている。
なぜかというと、葵上の演者は、人ではなく着物だったからだ。着物を、人が寝ているように置き、他の演者がそれを葵上にみたてて演じる。その設定のみが、面白かった。
今日の番組は、仕舞「田村」、舞囃子「鵺(ぬえ)」、狂言「寝音曲」、独鼓「井筒」、能「求塚」だった。
これだけ全部で3時間ちかく・・・。歌舞伎の3時間はあっという間だけど、能楽の3時間はちょっときついかも。
仕舞から独鼓まで、1時間ほど。あとの能が2時間だなんて・・・。
舞台は、能楽用にしつらえてあった。それが美しく、そこだけ空気が澄んでいるように感じる。

能楽の舞台

仕舞や舞囃子は、以前萬斎さんの番組で見た「三番叟」を彷彿させるもので、心地よく鑑賞する。(専門家が見たら、全然違うモノなんだろうケド)
狂言は太郎冠者が茂山千之丞さん、主人が松本薫さん。千之丞さんが、なんとも憎めない愛すべきキャラクター太郎冠者を、好演していた。
独鼓の謡は観世榮夫さん。もうかなりお年を召されたご様子。しかし声の艶はすばらしい。他のどの謡手よりも、はりのある声だった。
そして、能の時間・・・。
見事に船をこいでいた私。
しかし(言い訳?)あの囃子方の音の心地よいこと。
あの音色に漂わされた。
クラシック音楽の音色は、心を沸き立たせる、或いは切なくさせる
ものが多い。
邦楽の、鼓や笛、太鼓などの音色は、違和感なく体の細胞に染み渡っていく感覚があった。日本人のDNAのなせるわざか?
能デビューは惨敗したが、邦楽の心地よさに再度開眼した夜だった。





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