蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「野村万作・萬斎 狂言会」



大阪の大槻能楽堂で、「野村万作・萬斎狂言会」を鑑賞。
番組は、「隠狸」「萬斎さんトーク」「六人僧」

「隠狸」
太郎冠者・・・野村萬斎
主・・・高野和憲

『太郎冠者が上手に狸を捕るらしいと聞いた主人は、狸汁をふるまうつもりで客を招くが、冠者が「狸など捕ったことはなち」と答えるので、市で狸を買ってくるように命じる。実は昨夜も大狸を捕っていた冠者は、主人に内緒で狸を売ってしまおうと、狸をかついで出かけるが、先回りしていた主人に出くわし、あわてて狸を腰の後ろに隠すが・・・。
主人と太郎冠者の虚々実々の駆け引きが見所で、酒盛りや舞の稽古にこと寄せての相舞など、趣向もたっぷり。和泉流だけに見られる狂言。

「六人僧」
参詣人・・・野村万作、石田幸雄、深田博治
妻・・・野村萬斎、高野和憲、月崎晴夫

三人連れで参詣の道中、一人で眠っている間に、二人のいたずらで坊主頭にされた男。ふたりの女房に「二人とも水死した。自分は弔うために坊主になった」と嘘をつき、嘆いた女房たちは尼になろうと剃髪するが、そこに二人が戻ってきて・・・。
これも和泉流だけに伝わる珍しい曲で、落語「大山詣り」の原話と思われる。』

(『 』内は野村万作、萬斎狂言会パンフレットより抜粋)

先月の「せぬひま」で萬斎さんの「三番叟」に酔いしれたのが昨日のことのよう。
今回は、萬斎さんの狂言を楽しむため、大阪の大槻能楽堂へ。
前回の「三番叟」で、初めて能楽堂デビューした私。
「せぬひま」公演をした京都・大江能楽堂は古さがなんともいえない味わいを醸し出している建物だった。
今回の大槻能楽堂は、大江能楽堂よりも広く、照明も近代的。
大きなホールの舞台よりも、やはり能楽は能楽堂で見るほうがよいと感じる。

「隠狸」では、なんと狸のぬいぐるみ?を萬斎さんが持って出てきたのでビックリ。
「大狸・・・」と言っていたが、なんとも愛らしい狸だった。
その狸を主人に見つからないように腰にくくりつけて、太郎冠者は酒を飲んだり、舞を舞ったりする。
酒を飲むたびに、ひょいと腰の狸を見て、持っていることを確認する仕草がなんともユーモラス。観客の笑いを誘う。
うさぎについての舞を舞うときも、主人の前で一回転するとばれてしまうので、別の方向に主人が目をやるように仕向け、その間にさっと回って舞を終わる太郎冠者。
すべての動作がユーモラスである。
でもあの狸のぬいぐるみを見たとたん、劇団☆新感線の舞台「阿修羅城の瞳」を思い出してしまった私。
市川染五郎さんが演じる、病葉出門が持っていたのが、「パトラッシュ」という名前の狐。
狐のぬいぐるみを抱きかかえながら、出門が舞台に登場し、「パトラッシュ」と呼びかけるシーンでは笑ってしまった。
萬斎さんの狸を見て、あの狐を思い出した。(笑)

20分の休憩を挟んで、萬斎さんのトーク。
いつものように、やや冷めたような語り口。そこがいいんだけど。(笑)
「オイディプス王」の話、ギリシャ悲劇と能との対比、「三番叟」などでするトリップのこと、「子午線の祀り」の宣伝などを、とうとうと語る。

最後は「六人僧」
ここまで来て、かなり眠気が出てきてしまい、万作さん演じる参詣人のように、ついうとうとと・・・。
妻役の萬斎さんは、なかなか舞台に登場せず、他の演者の声を心地良く聞きながら、私は舟をこぐ。
最後の方で、尼の扮装をした萬斎さん登場。
6人の謡で幕を閉じる。
その謡は、先に萬斎さんが説明をしていたように、まさにトリップするよう。
朦朧とした私の頭にガンと響き、五臓六腑に染み渡った謡であった。

2004年10月6日 大阪 大槻能楽堂



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