蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「夢の仲蔵 千本桜」




大阪・松竹座で久々の染タンの舞台!
今月の演目は「夢の仲蔵 千本桜」
父上の松本幸四郎さんと共演。

この舞台は、純粋な歌舞伎ではないんだよね。
歌舞伎と時代劇をあわせたような・・・。
歌舞伎好きならば、うれしくなってしまう演出。
歌舞伎の「義経千本桜」の舞台と、その裏の楽屋の様子を、回り舞台で見られる趣向。

時は安政。江戸三座の一つ、森田座ではきらびやかに「義経千本桜」が上演されていた。
「伏見稲荷鳥居前の場」「大物浦の場」「道行初音旅」と物語は進んでいく。
舞台の上とは違い、楽屋裏では座頭の中村仲蔵が役者たちを叱り飛ばしていた。舞台の出来が悪いと文句を言う仲蔵に、借金取りがいやみを言ったり、役者が聞く耳を持たなかったりと、なかなか収拾がつかない。
そんな中、一番弟子の中村此蔵だけは、座頭の味方だった。
芝居が好きで好きで仕方がない此蔵の頭の中には、給金のことよりも、憧れの役「佐藤忠信」のことで一杯である。
いつか「狐忠信」を演じて見たい。そう思って稽古に励んでいた。

そんなバタバタとした楽屋に、とんでもない知らせが入る。
忠信役を演じていた四郎十郎が奈落で死んでいたのだ。
座員が大騒ぎする中、仲蔵だけは冷静に、四郎十郎の代役を大吉に申し渡す。
しかし今度は大吉が奈落に落ちて腰を強打し、動けなくなる。
悩んだ末、仲蔵は狐忠信の役を此蔵にやらせることにする。
大喜びする此蔵。
果たして、四郎十郎は殺されたのか?大吉は誰に突き落とされたのか?
謎が謎を呼びながら、森田座の「義経千本桜」は此蔵を代役に幕を開ける。
さてその出来は?犯人はいったい誰なのか?

↓以下ネタばれあり。



染五郎さんがすばらしかった!
どうしたんだろう?(といっては失礼かもしれないけど)
此蔵の座頭への屈折した感情と、芝居への愛着が、見るものにビンビン伝わってくる。
番附に演劇評論家の松岡和子さんが寄稿されているのだが、私も同じ感想。(恐れ多いけど)

以下抜粋
「染五郎を芯に据え、半歩引いた位置をとりつつ此蔵を手の内に収める仲蔵=幸四郎の大きさが際立つ。それにしても染五郎は素晴らしい。姿の美しさ、たたずまいの端正さ、踊りのうまさ、声のよさ、演技の哀切さ、コミカルなところも垣間見せて、惚れ惚れせずにはいられない。『裏』で描かれる役者同士の、特に仲蔵と此蔵との愛憎半ばする心理の絡み合いは、現代劇もよくする幸四郎と染五郎の独断場である」

あぁ、そうなんです~。
「義経千本桜」の舞台の上の染五郎さん=此蔵は、ホント艶やかな色気にあふれていて、もううっとりしながら舞台に目が釘付け状態。
歌舞伎の衣装の華やかさが、よく似合っていたし、踊りの場面の所作の美しさも、ため息モノ。

こ、こんなに素敵だったっけ?染五郎さん。いえ、素敵なのは先刻承知なんだけど、でも今回の舞台は今まで以上に男っぷりをあげていたなぁ~。
ま、声のよさってのは、まだまだだと思うけど。
なんたって幸四郎さんの滑舌の良さにはかなわないよね。
染五郎さんは、早口になったところはセリフが聞き取れなかったりするもの。特に狐詞のところ。この「四の切」は猿之助さんの舞台を何度か見たことがあるんだけど、やっぱり彼の狐は最高だった。本当に狐が化けているように感じたもの。染五郎さんはまだ若いから、これからも修行だよね。頑張れ!染タン。

殺しをした後の此蔵のぞっとするような色気と狂気。
今までの純粋な此蔵ではなく、肝を据えた人間の強さが感じられた。

演出も、「義経千本桜」の「四の切」では早変わりが当たり前なのだが、そこはもちろんのこと、他でもいろいろな工夫があった。

此蔵が奈落で大吉を殺した後、出番が来てスッポンから舞台に上がっていく。
舞台上手のセットから、此蔵が上へ上がっていったと思ったら、花道のスッポンから此蔵が現れた。え?一瞬の出来事だよ。どうやって来たの?

森田座の楽屋裏のセットも、2階建てになっていて、話の中心が1階か2階かでセットが上下していて、見事だった。

それから今回は大向こうさんも工夫していた。
楽屋裏の話のときは、それぞれの役者の屋号「高麗屋!」などと声をかけるんだけど、いったん「義経千本桜」の舞台になったら、中村仲蔵や此蔵の屋号「坂田屋」?に変わっていた。すごい、芸が細かい~~~。感動しちゃった。

私はオペラグラスで染タンばかり追っていたんだけど、いやはや素敵過ぎて目の保養になりんした。

ラストシーンは泣きますぞよ。
私、また泣いちゃったもん。
此蔵の悲しいまでの気持ちが、胸に迫ってきて、泣かずにはいられない!
此ちゃ~ん!辛かったねぇ~、おばさんが抱きしめてあげるよ~。(こればっか。苦笑)


舞台が終わって劇場から出るとき、8年ぶりぐらいにOL時代の会社の上司にバッタリ。びっくり~。久しぶりにお茶してきました。奇遇ですなぁ~。(笑)




2005年9月10日 大阪・松竹座 


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: