蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「クリムト展」

8月5日に「クリムト展一日講座」で教わってきた通り、会場全てにクリムトの絵が掛けられている訳ではない。同時代の画家による女性の絵や、クリムトの愛用した品や衣服も展示してあった。
クリムトの絵だけを集めて日本で展覧会を開く、というのは難しいからだ。それはクリムトの絵が金箔を使っていて動かしにくい、クリムトは壁画も描いているが壁画は移動できない、クリムトの作品をなかなか所蔵美術館が貸したがらない、などの理由かららしい。故に講師の学芸委員は、今回のクリムト展は、「クリムトと女性たち」という、ヨーロッパで開かれた展覧会を下敷にしていると言っていた。

会場で、まず最初に出会ったのは「アパラス・アテナ」
鎧と兜に身を包んだゼウスの娘アテナ。その瞳は挑発的で恐いほどだ。彼女が手に持つ彫像(ヌーダ・ヴェリタス)の持つ輝きが美しい。これから始まるクリムトへの美の旅を誘ってくれる灯火に見える。
「フリッツア・リートラーの肖像」にしても「エミーリエ・フレーゲの肖像」にしても、これほどの色彩を駆使して描いている絵だと言うのに、煩さが全く感じられない。
今まで絵葉書やポスターで見ていたクリムトの絵の印象は、「色彩は綺麗だけど、ごちゃごちゃ感があるかも・・・」だった。
しかし今回ホンモノに出会って、そんな感想は吹き飛んでしまった。艶やかな色彩は、決して自己主張しない。統一された清涼感と共にあるのだ。
そしてクリムトの絵には「肉」がない。
他の画家の人物画も展示されているから、よくわかる。
クリムトも女性の体を描いているのだが、女性の体重が感じられない。まさにミューズを描いている。
イキイキと画面に息づいているミユーズ達。魅惑的に鑑賞者を挑発する。
特に「ユディットⅠ」これほどまでに見るものを陶酔させる絵も珍しい。やっぱり私も「ユディット」にやられてしまった。
「ファム・ファタール」・・・宿命の女。上等じゃないか。

と言うわけで「クリムト展」鑑賞一回目。ざっと見たけど見ごたえがありました。今度は平日にゆっくりと行きましょう。


2003年6月28日~9月21日 兵庫県立美術館


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