蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「中原淳一展」

西宮市の大谷記念美術館で開催中の、「中原淳一展」に足を運ぶ。
玄関で目に付いたのは、ひまわりの造花。かわいらしく咲いている。そこを過ぎると、目の前に真白い大きな机。机の上にはミシンが置いてあった。
その机では、裁縫や食事、絵を描いたり、化粧をしたりするなど、いろいろなことができるように工夫されている。
机の横には、こじんまりした部屋がしつらえてあった。
それは中原淳一が提案した、新婚家庭のインテリアが置かれていた。それは華美なものではなく、むしろつつましいという印象を受けた。色彩は明るいのだが、6畳一間の狭い空間をセンス良く暮らす工夫がされているので、そう思ったのか。

あとは、彼のイラストや人形、雑誌の付録、衣装などが展示されていた。
どれも華やかな色に覆われていて、美しい。影絵のイラストも、ドレスの模様やレースを細かく描きこんでいたので、華やかな印象を受ける。
『ソレイユ』第5号に載った「きものの柄」を興味深く見た。矢がすりやいげたなどの着物の柄を、きちんと描いてある。こういう絵が欲しい。
『それいゆ』第9号の「SHOES」は、女性の靴のデザインを40種類以上も描いてある。もちろん現在でも通用する美しいデザインである。
他に気に入ったのは「娘十二ヶ月」の連作。一月から十二月まで、それぞれの季節に合わせて、和服を着た少女を描いている。
彼が竹久夢二の影響をうけていたのは、初期の作品からうかがえるが、この「娘十二ヶ月」や後期の作品である「蝶々夫人」を見ても、夢二の影響を感じ取れる。
特に立ち姿の「蝶々夫人」は、夢二にも似た構図の絵があったと記憶している。
それにしても、『それいゆ』の表紙画の女性たちは、どことなく若かりし頃の美輪明宏氏に似ていると思う。もちろん当時中原氏の服のモデルをしていた浅丘ルリ子に似た作品もあるのだが、美輪氏に似た絵のほうが多いような気がする。
『ジュニアそれいゆ』のグラビアを飾った、当時のスターたちの写真も展示してあった。若い頃の浅丘ルリ子が、細川ふみえに似ていることを発見。もう少し知的ではあるが、似ている。あと当時の市川染五郎(現松本幸四郎)の写真もあった。『ジュニアそれいゆ』に載ってたんだ、幸四郎さん。

盛りだくさんの展示内容で、昭和という時代の空気を満喫できた。

ここの美術館は、日本庭園も散策できる。美しいものを見て、ほてった体を冷やすにはもってこいの場所である。

2003年10月4日~11月9日 西宮市大谷記念美術館



中原淳一展





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