蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「竹久夢二展」

夢二の作品が大好き!という訳ではないのだが、どうしても見たい絵がある。
それを見たいがために、わざわざ電車を乗り継いで、見に行ったのだ。
その作品は「立田姫」

幼い頃、来客が菓子折りを置いていった。なんと言うお菓子だったかは忘れたが、私は箱の中に入っていた栞に目がいった。描かれていた絵がとても美しかったのだ。しばらくうっとりと眺めている。
そして、栞を自分の机に大切にしまい、時々出しては眺める時間を楽しんだ。
栞に描かれていた絵は、夢二の「立田姫」だった。

私がOLになったばかりの5月、生まれて初めて一人旅をした。
行き先は岡山県の倉敷市。
大原美術館と夢二郷土美術館を訪れた。
幼い頃から好きだった「立田姫」に、ようやく会うことができた。
目に馴染んだ紅い着物。白い肌。たおやかな体。
ずっと、ずっと、見ていたかった。「立田姫」と向かい合ったまま、時間を止めたいと思った。

何年ぶりだろう。
今日、再び「立田姫」と出会えた。
彼女の左には、群馬・伊香保にある竹久夢二伊香保記念館から「榛名山賦」が置いてある。
この作品も、「立田姫」同様に、紅い着物の女性が手を広げて立っている構図である。
しかし、瞳を開いている。
「立田姫」は、夢二特有の大きな憂いを含んだ瞳を閉じているのだ。
なぜかその表情が、とても気になる。
意志が強いようでもなく、そうかといってなよなよとしただけの女性とも思えない、不思議な表情。
その表情に惹かれ続けている私。

夢二自身もこの「立田姫」を一生涯における総くくりであり、ミス・ニッポンであると言っている。

今度彼女に会えるのは、いつなのだろう。

2004年4月14日~26日 大阪・なんば高島屋


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