忘れん坊将軍


忘れん坊なのかと不思議になる。

別に、物覚えは悪くないんだけどさ、
なんていうか記憶力が麻痺してる感じ。

先週、夫は会社から特別の臨時休暇を
もらった。

前に書いたけど、会社も景気が悪いので、
残業した分をお金じゃなく、その代わり
時間で払いましょうと言うことらしい。

そんなわけで、急にまとまった休みが
取れたので、心優しい妻は、
「Honey-Do」リストを作ってあげたのだ。

その「ハニーデューリスト」というのは、
「あなた、これやってね、あれもお願い」
などと、休みの間に夫にして欲しいこと
を書いたものだ。

つまり、ここぞとばかりに「こき使おう」
と言うわけ。

ウシシシ。

1バスルームのはがれたタイルを直す。
2カーポートにセンサーライトを付ける。
3ファイヤーアラームを新しいのに変える。
4クローゼットの留め金を付け替える。
5フロアにスチームバキュームをかける。

などなど、あげれば切りがない。
(人呼んで、鬼嫁とは私のことか!?)

ついでに、
銀行で、「セービング用の預金口座を
作ってきてね」とも言っておいた。

(本当は、芝刈りに植木の手入れも書いて
おきたかったけど、我慢した)⇒まだか!

我ながら、ちょっと書きすぎたかしらと
思い返しもしたけど、何も全部やらなくて
いいわけだしねぇ。

前置きが長くなったが、とにかく夫の方も
「フンフン♪」と、ハナ歌交じりにリストに
取り組んでいた。

ここまではいい。

しかし、悲劇はすぐ訪れた。
しかも、しょっぱな1番のタイル貼りで。

タイルを貼り終え、固まって接着が完了
するのに48時間かかると書いてあった。

その間、
バスルームを使わずにはいられないから、
何か大きなハードカバーの本でも載せて
おこうよと提案した。

そしたら、万が一誰かが踏んだとしても、
本がガードして、タイルがへこむことは
無いだろうと思ったから。

それなのに、
夫ときたら、ドアをロックしておけば、
開ける度に注意するから大丈夫だと言う。

しかも、言い張る。

私としては、自分が踏んでしまうかもと
心配するより、「夫が絶対うっかり踏んで
しまうに違いない」との120パーセントの
予測の元に出した提案なのに。

結果は予想のとおり。
午後、私が念のために確認しに行ったら、
張り替えたタイルの一部が見事ボッコリ
へこんでいた。

・・・・・ははあ、ヤツに違いない。

ちょっと小休止して、ソファでうたた寝する
夫を起こして聞いてみる。

すると、踏んだこともさえも覚えていない。
どころか、私か息子が踏んだんじゃないのと
シラを切る。

フフンだ、そうくるかと思って、私は別の
トイレを使っていたんだもんねぇ。
上の息子にも、そうさせていたし。

グニョリとへこんだタイルを見て、夫しばし
呆然。(目が現実逃避をしていたよ、ゼッタイ)
そして、すごすごとハードカバーの本を探しに
彼の本棚に向かっていった。

まったく、何も最初からあんなに言い張らずに
「万が一の場合」を想定しておけばよいものを、
アメリカ人ってのは、自分が完璧だと思える
方法をトコトン信じて曲げないんだから。

「万が一の油断もないからダイジョウブ」
そんな思い込みがスキを作るのよ。
日本語にはねぇ、「備えあれば憂いなし」って
言葉があるんだから。

ガックリ落とした背中に、そこまで言うのは
かわいそうなので、思いっきり笑い飛ばして
あげたとさ。

やれやれ。




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