グリーンカード当選物語


ある1枚の手紙を受け取った。

「グリーンカードに当選されましたので
至急下記までご連絡ください。」

身に覚えのないはずはなかった。

3年前から応募し続けていて、
過去2回は落選していたから、
今度もダメだろうと半ばあきらめていた。

それが、まさに「3度目の正直」と、
昔の人はよく言ったもんである。

なんと私、受かっちゃったんであ~る!

女25歳、不思議と迷いはなかった。

決めたら最後、爆走(笑)しちゃうのが
私のいい所でもあり、悪い所でもある。

それからというもの、
仕事の休みを利用しては、大使館での
面接に向けて、提出書類を集めていた。

そして月日は流れて、翌年の冬、
朝8時半までに赤坂のアメリカ大使館へ
着くため、早朝電車に飛び乗った。

もちろん、目的は面接。
いよいよ、最終関門なのであ~る。

面接官の前で粗相があってはいけない。

用意周到な私は、
アルク「起きてから寝るまで英会話」の
本を買い、こっそり勉強もしていた。

(さらには、すっかり受かったつもりで、
アメリカ暮らしQ&Aという本も買っていた)

シーンと静まり返った大使館の窓口で、
持ってきた書類を提出すると、
確認するのでまた2時半に戻って来いと言う。

「えぇ、あと6時間も待つのぉ。」

と、ブツブツ言いながらもやっぱり、

どこの誰ともわからない外国人に、

「あんたは、もう一生アメリカに住んでも
ええねん!」(⇒なぜ関西弁?)

などという実に太っ腹なお墨付きを、

しかも、抽選であげちゃおうってんだから

「アメリカよ、あんたはエライ!」

と表彰状を高らかにあげてしまいたいほど、
気分はハイになっていた。

そして、少し早いランチを食べてから、
面接官との質疑対応に備え、
また例の英会話アンチョコ本に目を通す。

まず、
面接官と目が合ったらニッコリ笑って、
「Hello,How Are You,Ma’am」なんて
言っちゃおう。

そしたら、
「おっ、コヤツなかなかできるな」と思われて、
かなりポイントアップかもしれない。

(ハイ状態のときの私はかなりおめでたい)

約束の2時半がきて、私が窓口に戻ると、
さっきとは違って男の担当官が立っていた。

緊張してきた私は、今まで練習した挨拶を
「Ma’amじゃなくて、Sirに直さなくちゃ。」
などど、超マイナーな問題に気を使っていた。

その担当官が言った。

「右手を挙げて。」

宣誓しなさいという意味である。

何を言ったかはよく覚えていない。

アメリカの一員となるための
心構えみたいな確認事項だったと思う。

さあ、ここからが本番勝負の面接ね。
練習した英語をうーんと使ってやれぃ!

ところが、
担当官は、すばやく私のパスポートに
バン、バンッとスタンプを押したかと思うと、

「Welcome To United States.(アメリカへようこそ)」
と、言い放った。

あれ? ・・・・面接ってこれだけなの?

いろいろ問題もあるけれど、
私は、この大雑把なアメリカが基本的に好きである。


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