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家庭保育室太陽
自閉症とその家族4
自閉症児とその家族/4 貧困な乳幼児期支援
◇担任がADHD「何ですか?」/「わがまま」といじめの標的/初診まで2年9カ月待ち
まだ長女(13)が小学1年生のころだった。居眠りや忘れ物が多く、よく一人遊びをしていた。「うちの子は何か問題があるのでしょうか」。相談した母親(36)は、担任教師の冷たい視線に押し黙るしかなかった。
<しつけの悪さを、子供のせいにしている>
担任の顔にそう書いてあった。
家では明るい普通の子だった。「顔を洗いなさい」「もう学校へ行きなさい」と言えば素直に従った。ところが、学校では一変。チョウを見ると授業中でも追いかける。集団行動ができず、3年生のころ、注意欠陥多動性障害(ADHD)ではないかと思った。が、当時の担任も「何ですか、それ?」。
「わがまますぎる」とクラスで浮き上がり、いじめの標的になった。青あざが絶えなかった。「うちでは普通なのに……」。母親はノイローゼ気味になった。長女に包丁を向けた。風呂で沈めようとした。「ここまでやれば責任取ったことになるんでしょ、と世間に言いたかった」
6年生になり、新しい担任が教室の異常に気づいた。「あまりにひどい」と泣いて児童に迫った。いじめは止まった。中学のスクールカウンセラーと連絡を取り、専門医からアスペルガー症候群と診断された。
「もっと早く分かっていれば、学校生活は違うものだったかもしれない」と母親は悔やむ。
× ×
窓辺に置かれた電車や積み木の自動車で、高機能自閉症の男児が遊んでいた。あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)の心療科診察室。
「次回は9月にね」。杉山登志郎心療科部長は、A4判ファイルが並んだ2段重ねの棚から次の患者のファイルを取り出した。この日の患者数は40人。週1回の発達障害の外来日には県内外から患者が殺到する。
同センターは四つの専門外来がある。初診を受けるのに心身症と不登校は1カ月半、虐待など子育て支援は2週間待ちだが、発達障害は実に2年9カ月も先だ。子ども本人だけでなく、親や学校の先生にもじっくり話を聞かなければならない。だが、発達障害を診察する児童精神科医は全国に約200人しかいない。杉山心療科部長は「待っている間に幼児期が過ぎてしまう。発達障害は早く気づいて早期療育につなげることが大切なのに」と懸念する。
× ×
アスペルガー症候群も高機能自閉症も知的障害を伴わないだけに、なぜ周囲との不調和が生じるのか、本人や家族もわからない場合が多い。いじめ、排斥など2次的被害にも苦しめられる。
成長とともに自己決定を尊重し、本人中心の生活を支援する態勢の充実が求められており、医療主導の治療や教育偏重には批判も根強い。しかし、乳幼児期を支える医療現場はあまりにも貧困だ。子ども10万人当たりの児童精神科医数(96年)はスウェーデン12・5人、スイス12・0人に対し、日本は0・35人しかいない。【神戸金史、鈴木玲子】=つづく
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