家庭保育室太陽

家庭保育室太陽

関連情報


「ドンマイの会」




ボランティアの人と、ホットケーキ作りを楽しむ子どもたち
 「高機能自閉症やアスペルガーの若者は社会に適応できず、ひきこもってしまうことが多い。そんな時、理解してくれる友人がいたら…」。こんな思いから、高機能自閉症やアスペルガーの子どもの親らが02年6月、地域の理解と支援を広めるため「ドンマイの会」を発足した。


「次は何をすればいいのかなぁ」とホットケーキ作りの手順を確認する
 同会代表、村田昌俊さんによると、高機能自閉症やアスペルガーの子どもは、知的な遅れはないが、脳の一部に機能障害があるため人とのコミュニケーションが取りにくく、人間関係を築くことが困難な場合が多いという。「それでも小・中学校までは教員らの支援もあり、なんとかやっていけますが、青年期になると深刻さが増し、就職しても長続きせず、家でもポツンとしていることが少なくない」と話す。

 職場の中では、例えば品物を棚に並べたり、衣類をたたんで同じところに置くなどといった、決められた手順をきちんとこなす仕事は得意だ。しかし、慣れてくると、もくもくと仕事をこなす姿に周囲の要求も高くなり、人とのコミュニケーションの機会が増える仕事や、判断が必要とされる仕事を求められるようになる。そうすると、追い詰められてしまうことが少なくない。

 同会の相談役で北海道教育大学で発達障害を研究する安達潤助教授によると、「高機能自閉症などの若者は、人の表情から気持ちを察するのが苦手です。たとえば同僚が好意で仕事を手伝ってくれたのに、自分の仕事を取った、と考えトラブルになることがある」と話す。また、「『だめ』という言葉を、周囲の人が軽い気持ちで笑って言ったとしても、気持ちを読み取ることができないため、自分が全否定されたと思ってしまい、落ち込んでしまうといったことがある」と話す。

 こうしたことから、職場での人間関係がうまくいかなくなってしまう。「家にひきこもり、無気力な状態が長く続くこともまれではありません。そんな時に仲間がいてくれたら、なんとか切り抜けられるのでは…」と村田さんは話す。

 親も、理解不足の周囲から「わがままな子」などと非難されることがある。状況を説明しても理解してもらえず、悩みは深まってしまう。「親同士が連携すれば、心の負担を軽くすることができるのでは」という思いもあったという。


「親の会」で日ごろの悩みを打ち明け合う
 メンバーは、札幌、旭川市周辺の家族75組と、臨床心理士、特殊教育の教員ら専門家を含むボランティア85人で構成されている。毎月1回、さまざまな遊びを通じて仲間を作る「本人活動(=仲間作り活動)」と、親の悩みを打ち明け合う「親の会」を開いている。このほか、週2回、親が悩みの事例を報告して、その状況を話し合う研修会も開いている。


フットサルの練習で、ボールをける子どもたち
 この夏の「本人活動」では、小学生はホットケーキ作り、中学生は体育館でフットサルを行った。ゴールめがけてボールをける元気な姿に触れた母親の一人は「学校だとける順番が回ってこなくて、自分はダメだと思ってしまうけれど、今日はのびのびと楽しそう」と、うれしそうに語っていた。

 安達助教授は、「自分の役割を自覚し、みんなと一緒に楽しめることをすることが、セルフコントロールの向上につながります。同じような波長を持った人の中で、人とつきあうのも悪くないと思ってくれることが大事」と話す。

 子どもたちが遊んでいる間、別の部屋では「親の会」が開かれている。学校や家での様子を打ち明ける母親たちから時々、失笑も漏れる。「ほかで話しても分かってもらえなかったけれど、ここでは『うちもそうよ』と共感してもらえて不安がなくなります」と。

 「ドンマイの会」は昨年から、仕事先や学校で追い詰められてしまった場合のカウンセリングを始めている。こうした相談に対応できるためのカウンセラーの養成は急務だ。また、子どもらの就労や生活上のアドバイスができるように、親自らがジョブコーチの研修会にも参加する。地域の人々と連携し、子どもたちの将来への支援をしていくつもりだ。【文・写真、和田明美】

◇北海道高機能広汎性発達障害児者親の会(ドンマイの会)
北海道旭川市住吉4条1の4の13
TEL&FAX0166-53-0219
メール:masa3@potato2.hokkai


© Rakuten Group, Inc.
X

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: