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食品への放射線照射(日本では1972年、馬鈴薯の発芽防止を目的として…)

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数多くの食品に対して、殺菌、殺虫、発芽防止を目的として、世界各国で放射線照射が許可・実用化されている。

日本では1972年、馬鈴薯の発芽防止を目的として放射線(コバルト60のガンマ線)照射が許可されて、1974年1月から北海道土幌町農業共同組合で照射が実施され ているが、その量は年間数千トンに減少している。
  (馬鈴薯は、発芽が始まると毒性物質のソラニンが蓄積され、人体に有害である。
   ・発芽防止の目的で,ばれいしよに放射線を照射する場合は,次の方法によらなければならない。
    (1)使用する放射線の線源及び種類は,コバルト60のガンマ線とすること。
    (2)ばれいしよの吸収線量が150グレイを超えてはならないこと。
    (3)照射加工を行つたばれいしよに対しては,再度照射してはならないこと。

   ・食品の製造又は加工において、その管理を行う場合には、食品への放射線照射は認められている。
   ・その場合、食品の吸収線量が、0.10グレイ以下でなければならない。
   ・使用例: 1)異物混入の検査
         2)食品の厚みの確認 など。
   ・食品の保存の目的で、食品に放射線を照射してはならない。

   (出典)昭和34年12月厚生省告示第370号)

   ・現在、照射食品について、わが国では、食品衛生法第11条に基づき定められる「食品の製造・加工基準、保存基準」において、原則禁止とした上で、ばれいしよに対する放射線照射のみ許可している

   ・ 「フリッケ線量計によるばれいしょの放射線照射線量の測定」 (平成23年9月16日厚生労働省医薬食品局食品安全部長(食安発0916第2号))

また、種子では、稲・大豆・梨・桃など 突然変異による品種改良への応用 として放射線照射が行われている。

世界には、タマネギやニンニクの発芽防止のために放射線照射を行っている国もある。

(1)2006年現在で、食品照射は57ヶ国で何らかの食品について照射食品 が認められている。
食品への放射線照射の目的は、
   ・オゾン層を破壊する臭化メチル燻蒸による殺虫の代替
   ・微生物による汚染防止のための殺菌
   ・腸炎ビブリオ菌・サルモネラ菌・リステリア菌・コレラ菌・黄色ブドウ球菌・大腸菌O157などの食中毒防止のための病原菌の殺菌
   ・害虫の羽化・不妊化防止
   ・貯蔵期間延長など

対象となる食品は次の8項目に分類されており、各分類中のどんな食品でも許可している国も数多くあり、又個々の食品名を示している国もある。
それらは
  1)球根及び根茎、塊茎、
  2)新鮮果実及び野菜、
  3)穀類及びその粉末製品、ナッツ、油糧種子、豆類、乾燥果実、
  4)魚介類及びその製品、
  5)生の家禽肉、畜肉及びその製品、
  6)乾燥野菜、香辛料、調味料、動物飼料、乾燥ハーブ及びハーブ茶
  7)動物性乾燥食品、
  8)その他、蜂蜜、宇宙食、病院食、軍用食、液体状卵、濃縮剤等、となっている。
なかでも6)の乾燥野菜、香辛料、調味料、動物飼料、乾燥ハーブ及びハーブ茶の全て、又は一部については上記57ヶ国のうち、日本とウルグアイを除く全ての国で許可されており、世界共通で照射処理が許可されているとも言える食品である。
  ( 香辛料については、その産地 の状況から微生物による汚染が著しい。
   これらの微生物の多くは有芽胞菌であり、加熱しても死滅しにくいとされている。)

     食中毒防止の観点から、そうした有芽胞菌の殺菌が求められ、わが国では、食品衛生法において、 「食肉製品および魚肉練り製品を製造する場合、使用する香辛料は、その1gあたりの芽胞数を1,000個以下にすること」 を義務づけられている。

     ・現在、わが国における香辛料の殺菌には、気流式過熱蒸気殺菌だけが唯一の方法となっている。

     ・2000年12月に、全日本スパイス協会から香辛料について微生物汚染の低減化を目的とする放射線照射の許可の要請が出された。
     ・それに対し消費者団体が連名で全日本スパイス協会に、必要性や安全性が疑問として反対を申入れるといった動きがあった。

(2) 肉類に対しては、サルモネラ菌や腸管出血性大腸菌O157などの肉類を汚染している食中毒菌に対する対応策として、欧米諸国では食鳥肉、牛肉などの赤身肉などへの放射線照射が許可されている。

(3)米国では、成熟抑制を目的とした青果物への放射線照射、
   殺虫を目的とした全食品への放射線照射、(例えば、かんきつ類であるグレープフルーツ、オレンジ、レモンへのミバエ殺虫を目的とするγ線照射(100krad以下)を1986年4月許可した)
   殺菌を目的とした香辛料・調味料への放射線照射、
   病原菌制御を目的とした食鳥肉、牛肉などの赤身肉、卵(殻付き)への放射線照射などが許可されてきた。(FDAは、1990年食鳥肉の病原菌の殺菌処理の目的で3kGyの照射を許可)

(4)EU(欧州連合)では、香辛料類については、EUとして統一的に許可されており、その他の食品については、各国で個別許可となっている。

(5)オーストラリア/ニュージーランでは、香辛料類、熱帯果実が許可されている。

(6)アジア諸国では、もっとも流通量が多いのは中国で、ニンニク、玉葱、米、調味料等が照射されている。

   ベトナムなど東南アジアの多くの国においても食品照射が行われている。

(7)WHOは「照射食品は、安全で、栄養学的にも適合性がある」という結論に疑問を挟む様ないかなる論拠も持ってはいないとしている。

   そして、この化合物の毒性/発がん性について残された不確定要素の解明のための研究を実施することを引き続き奨励していくこととしている。

(8)ベビーフード事件:1978年9月、ベビーフードの原料に用いる乾燥野菜に、食品衛生法に基づく許可がないにもかかわらず、放射線殺菌を実施して販売して摘発された。
   本件は、法律に基づいた安全性の確認が行われていない食品を販売したものであり、食品の安全に関する企業コンプライアンスの欠如として、厳しく律せられるべき問題である。


(9)食品への放射線照射を検知する技術としては、わが国の行政検査に用いる公定検知法として実用化された検知法は未だ存在せず、公定検知法の採用等が急がれる。

(10)照射食品の表示:照射食品については、許可・実用化の進んでいる米国やEU等においても、放射線照射が行われたことについての表示が行われている。

例えば、EUでは、照射された食品について「放射線照射済」又は「電離放射線処理」と記載することとされている。

照射食品に関するコーデックス一般規格では、出荷書類に照射の事実を記載すること、

    最終消費者に対しバラ積みで販売される食品の場合、売り場において食品名と照射されている旨を食品が入っている容器に表示すること、

    また包装済み照射食品については、以下に示す包装済み食品の表示に関するコーデックス一般規格に従うよう定めている。


    a) 照射された食品は、照射された事実を、食品名の近くに言葉で表示しなければならない。
      国際食品照射シンボルは任意で表示しても良いが、表示する場合には、食品名の近くにしなければならない。

    b) 照射された製品が、他の食品の原材料として使用された場合は、この事実を原材料リストに表示しなければならない。

    c) 照射された原材料を用いて調製された単一成分食品については、照射された事実を表示しなければならない。
      (わが国においては、照射馬鈴薯に関する表示は従来ダンボールに対して行われていたが、最近個装にも行われるようになってきている。
       照射食品の表示は、包装食品、バラ積みの何れに対しても行うべきものであり、さらに原材料として利用される場合にも行うべきものである。)

照射食品が社会に流通するにあたって、消費者が選択することを可能とするように、照射食品の表示が行われていることが重要である。

(10)わが国においては、再照射を防止する観点から食品衛生法において、また、消費者の適切な選択に資する観点からJAS 法に基づき、既に、生鮮食品に対して表示義務が課せられている。

    現在、輸入食品の監視に当たっては、 食品衛生法に違反する食品の流入を防ぐため 、輸入時には厚生労働省が毎年度定める「輸入食品等監視指導計画」に基づき国の食品衛生監視員によって、国内流通時には都道府県等が毎年度定める「食品衛生監視指導計画」に基づき都道府県等の食品衛生監視員によって監視・指導が行われている。

    その際、食品衛生法で認められていない照射食品への対応として、輸入された個々の食品について輸入時に製造方法を確認しているほか、過去の違反事例や海外情報等により食品に対し放射線照射を行っている可能性がある国からの食品であって殺菌処理を行っている場合には、輸入者を通じて製造者からの文書を入手し、食品に対して放射線照射が行われているかどうかの確認がなされている。

放射線の照射が確認され、食品衛生法違反であることが判明した場合には、規制当局により、廃棄・積戻し等の措置が行われることとなる。

食品衛生法における食品照射の取り扱いについて (平成18年5月厚生労働省食品局食品安全部)


●FAO/WHO国際食品規格委員会(コーデックス(Codex)委員会)
  消費者の健康の保護と食品の公正な貿易の確保を目的として、1963年に第1回総会が開催された。国際食品規格などを作成している。参加国は173ヵ国1機関(欧州共同体)が加盟、27の部会と一つの特別部会からなる(2006年2月時点)。
  食品に10kGy以下の線量の放射線を適切に照射して国際間で流通させるための基本的な規格として、「照射食品に関する国際一般規格」と「食品照射実施に関する国際規範」を作成した。これらが照射食品と食品照射実施の国際的なルールの基本となっている。

●放射線照射食品であることは一般的には見た目や食味からは判別することはできないが、これを検知するための方法の確立は食の安全、安心を確保するためには重要である。
 検知技術の標準法としてヨーロッパでは、ガスクロマトグラフによる方法、電子スピン共鳴(ESR)測定による方法、熱発光測定による方法など10種類の方法が確立され、Codex標準分析法として9種類の方法が採択されている。

●日本では、乾燥食品(香辛料・茶などとその付着物)に対する検知技術として平成19年7月には厚生労働省からの通知法として、国内における TL法 による検知技術手法が制定された。


「食品衛生法における放射線照射の取り扱いについて」平成18年5月 厚生労働省医薬食品局安全部  より 抜粋・転載

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              2011.10.13一部改定

関連: 放射能検査: 一般財団法人 日本穀物検定協会のH.P.

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関連: お米及び穀物|放射能検査地図(2015年)( ホワイトフード株式会社)
放射能はかけ算なので、たくさん食べる量が多い主食、お米に注意が必要です。
特に玄米は汚染度合いが深刻なので、注意が必要です。

関連: 放射能への対応のガイドライン【穀物2012用】2013年6月20日版( 日本GAP協会)

関連: 農業分野の放射線利用の現状( 内閣府原子力委員会)


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