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"菜翁が旨"さんのほほ~ぇむ健康ペ~ジ
ST管、GT管、MT管そして命を守る発想(文部省認定通信教育…ラジオ教育研究所)
ST管、GT管、MT管
真空管のことである。
中学生のころ、ラジオのキットを買って組み立てて、屋根に藪から竹を切ってきてアンテナ線を張って放送を受信していた。
そのころは、文部省認定通信教育というのがあって、新聞の第一面の最下段に広告が載っていた。
そのなかに、「ラジオ教育研究所」というのがあった。
東京都豊島区池袋だった。
通信教育で学んで、キットを買って組み立てたのである。
そのころ、ちょうど「五球スーパーヘテロダイン検波ラジオ」が出回り始めたころでもあった。
それまでは、再生式ラジオが主流であったが、安定した受信が」難しいラジオであった。
「五球スーパーラジオ」は、LC回路(コイルとコンデンサ)の発信回路を組み込んで455kHzに同調した中間周波数トランス2個を使って飛躍的に安定した受信が出来るラジオであった。
高周波増幅、発信回路、中間周波増幅、低周波増幅、そして整流電源回路のそれぞれに真空管を一個ずつ使用していたので、「五球」が名称の頭につけられたものである。
そして、そのころの真空管はまだ大きなST管であった。
商用の交流電源をラジオで使う直流に変換する整流回路は半波ではなく全波(あるいは両波)が主流であった。
ちなみに、鉱石ラジオは放送電波を半波整流してイヤホンで聞いていたものである。
このキットをラジオ教育研究所から買って半田付けをして組み立てて、調整して鳴らしたラジオであった。
回路図のほかに、実体配線図というものがついていたので、中学生でも簡単に組み立てが出来ものである。
何ヶ月かすると、時々、鳴ったり鳴らなくなったりすることがあった。
たたくとしばらくの間は鳴り続けるのである。
いわゆる「蹴っ飛ばすと鳴るラジオ」というやつである。
古くなって写らなくなった真空管式のテレビを「叩いたら写り始めた」という話もあながちウソではない。
この頃のテレビの修理をアルバイトにするには、テレビで使う真空管一式をそろえておけば、結構稼げるアルバイトになったものである。
つまり、真空管を取り替えるだけで、ほとんどの場合、写るようになっていた。
夏休みに、じっくりと調べてみると、半田付けの箇所がぐらついてほんの僅かであるが、くっついたりくっつかなかったりしている不良箇所が見つかって、原因はそれであった。
いわゆる、「いも半田」であった。いや「いぼ半田」とも言ったのかな?
半田がちゃんと線同士をつながずに、盛り上がっているだけの下手くそ半田のことである。
つまり、下手くそな半田付けの箇所が何箇所かあった、というわけである。
そのころは、半田付けをする箇所には、やすりで磨いてペーストを塗って半田付けしなければならなかった。
半田を持つ手と半田コテを持つ手のほかに、半田をつける箇所をしっかりと固定するための第三の手が欲しいかったものである。
男の第三の足があるのに、なんと役に立たない情けない足なんだ、と嘆いたものである(笑)
そして、ラジオキットや道具を買う費用は、といえば、当時は親から小遣いをもらえるような時代ではなかった。
近くの一級河川でミミズのえさで籠を漬けて、獲れたうなぎを魚屋に売って小遣いを稼いでいたものでる。
しばらく経って、電池式の携帯ラジオが出てきた。
大きなGT管に代わって小さなMT管が出回り始めたのであった。
そして、五球スーパーラジオもMT管で作れるようになり始めた。
書店の店頭には、「初歩のラジオ」という雑誌が並び始め、ラジオのキットやパーツも大阪では日本橋でも入手できるようになり始めていた。
おじ・おばが大阪・船場の唐物町三丁目で繊維問屋を営んでいたので、夏休みには数日遊びに行っていたので、日本橋にも足を運ぶことが出来たのだ。
店の番頭さんは、大津(近江商人)の人であった。
受信回路の同調コイルを何種類か組み込んでロータリースイッチで切り替えて、短波放送を受信出来るようにしたりもしていた。
コイルはボビンとエナメル線を買って、自分で巻いて何個か作る幅広い周波数の受信が出来るシロモノであった。
勿論、受信したい周波数帯を決めて、インダクタンスを求めて、そこからボビンの直径に対するエナメル線の巻き回数を決めるのである。
このようにして複数個のコイルを組み込んで、ロータリースイッチで切り替えて受信周波数帯を選択できるように組み上げるのである。
したがってロータリー・スイッチも沢山の切り替えの出来るものが必要であった。
キットで買った中波放送受信用のラジオを短波放送も受信できるように改造したのである。
自作の短波受信機であるから、市販のものより受信できる周波数帯が広かった。
短波放送を受信して世界各国の放送局に「SINPOコード」と呼ばれる方式で受信報告を出して、珍しい切手を貼ったベリカード(ベリフィケーション・カード)を送ってもらって楽しんだりもしていた。
勿論、本当に受信できた「証(あかし)」として、放送の内容とか特徴的なフレーズを書き添えるのが礼儀であった。
あて先は、国名と放送局名だけで、充分に届いていた。
短波放送の電波は、電離層で反射するので、うまくいけば、地球の反対側からの放送電波も受信できることがある。
これが、短波放送の受信の楽しみであり、醍醐味でもあった。
たとえば、英国のBBCのロンドンからの電波も受信できたことがあった。
BBCは近年では、香港やカナダからの中継電波で充分に受信できるようになっているようである。
また、世界各国の短波放送局も、自局の電波が地球上のどのあたりまで、どのくらいの感度で受信できるのかを知る手立てのひとつとして、受信報告を活用していたので、各局がきれいな特徴的なベリ・カードにその国の珍しくて特徴的な切手を貼って返信してくれていた。
さらにまた、雑誌に載っている回路を参考にして、自作のラジオに発信回路を組み込んで電波を発信して、受信した短波放送を中波で放送(?)して楽しんだりもしていた。
この行為は「アンカバー」と呼ばれて、電波が強い場合は「電監」に受信されれば違法行為で警告・警察へ通報・逮捕されることもある。
「電監」とは「電波監理局」のことである。
この頃に、中波の放送で「立体放送」が行われ始めた。
NHKの場合は、第一放送と第二放送を使ってそれぞれ、左右二つのマイクを使って別々に且つ同時に録音した放送を流すものであった。
民放の場合は、二つの局が提携して放送していた。
聞くほうは、二つのラジオを並べて数メートル離して、それぞれの放送にチューニングして聞くのである。
放送開始時には、音声が二つのラジオの真ん中から聞こえるようにヴォリュームを調整するためのインターバル放送が行われていた。
ラジオを二台も持っている家庭なぞ珍しい時代に、自作のラジオでこの「立体放送」を楽しんでいた。
大阪難波の南街劇場で左右に赤と青の別々の色のセルロイドの眼鏡をかけて観る、世界初の立体映画を見たのも、丁度このころであった。
確か、「戦略空軍命令」という、「総天然色映画」であった。
もちろん、テレビはまだモノクロで、カラー映画は「総天然色映画」と呼ばれていた時代であった。
画面が変わって突然、ジャングルの中から、タイマツ炎が突き出されたときには、椅子に座っている観客一同が嬌声を上げて思わず頭をのけぞらせたことがいまだに記憶に残っている。
そんなことも影響したのか、高校受験は全国で三校しかなかった国立の電波高校へ行きたかった。
近くでは、四国に「宅間電波学校」があった。
しかし、よく考えてみると、私は、こちこちの「かなづち」であった。
うなぎ獲りの籠も、友達は潜って深いところにつけて(沈めて)いたが、私は浅瀬専門であった。
電波学校の卒業後の就職先には、船に乗る仕事が一番多かったのだ。
船舶通信士である。
「金槌」の私は、命が惜しかった。
太平洋のど真ん中で船が沈没でもしようものなら・・・
電波学校への進学は、それで、あきらめた。
「命あってのものだね」である。
このおかげで、他人に命を預ける乗り物には、「安全確保」が出来ているかどうかに関心を持つことが出来るようになった。
遊園地のジェットコースターに乗るなど、私にとっては、もってのほかである。
なぜなら、乗り物そのものは安全に出来ているかもしれないが、メンテナンスに不備があれば命にかかわるからである。
なぜなら、メンテナンスが行き届いているのか、見落としなどの不備があるのかなんぞ、知ることなど一介の個人にとっては、不可能だからである。
近年ではあらゆる場面で人命が軽んじられているように思えてならないように思えるのも、実は、自分自身が、自分の命を守るための発想がおろそかになっていることにも起因するのではなかろうか、とも思える。
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