旅の途中、寄り道の日々

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魔法少女「藤崎 歩」第1章「下僕」



無断転記禁止です。

では魔法少女『藤崎 歩』第1章『下僕』始まります。





世界には現実と非現実がある。

まあ、普通は高校2年にもなれば子供の様な非日常的なことを望むやつなんていないだろう。

今日は始業式、新しいクラスの仲間達とうまくやっていけるだろうか・・・

そんなことを思いつつ歩く俺の名前は「古舘 明」趣味は特に無し・中肉中背でスポーツも勉強もそこそこのどこにでもいる高校生だ。

誰に説明してるって?画面の前の君だよ君。

まぁ、それはいいか。

すでに小学生からの日課となっている遅刻1時間前登校はやっぱり良い、静かだし清々しいし何より考え事をするのにはぴったりだ。

そうして始業式である今日も教室に一番に入った。はずだった・・・

そこに変なやつがいた。

変としか言い表せないやつがいた。

フリフリのドレスを着て腰のベルトにロッドを差して机の上で腰に手を当ててポーズを取っているのだった。おまけに黒猫を机の上に載せて何かぶつぶつ言っている。

なぁ、母さん。一つ聞きたい、ここは学校だよな。そして日本だよな。

なら、何故目の前に机の上に立ってゲームのヒロインみたいな格好をしたやつがいるんでしょうか・・・

俺は思わず心の中でそう思ってしまった。

突然、光が俺を襲った。

それは一瞬だった、瞬きの間でしかなかった。

しかし、驚いた俺は音を立ててしまった。

その変なやつはこっちを向いた。

あろう事か。目が合ってしまった・・・

待て待て、落ち着け俺。

まずは挨拶だ。おそらくはクラスメイトなんだろう。挨拶は重要だ。

「おっ・・・おはよう。」

「おはよう!」

おっ、挨拶は普通だ。案外普通の子なのかも。

「私、藤崎 歩17歳!!魔法少女なの!」

「君の名前は?」

とりあえず、俺は頭の中で3秒前に彼女を少しでも普通の子と思ってしまった俺を抹殺した。

少しの静寂。今の俺には永遠の長さに感じた。

「ん?・・・どうしたの?大丈夫?」

「えっと・・・君何歳?」

「ハハハ、面白い人、君と同じ17か16よ」

俺は一時クラスを出た。

クラスに貼ってあるクラス名簿を見る。

見事に僕の名前と「藤崎 歩」とか言う女の名前が載っていた。

ここまで来ると流石に僕も落ち着いてきた。

僕はクラスに戻ることにした。他の人が来るまでの時間はまだたっぷりあった。

「1時間前登校を始めた小学校の俺をここまで嫌に思えたのは初めてだな」

思わず出た独り言だった。

クラスに戻ると彼女は座席表を確認してすでに普通の制服に着替え終わって自分の席にいた。

うん、はっきり言って、ちょっと可愛い。

ああ、良かったさっきのは夢だったんだと思った矢先のことだった。

「で?君の名前は?」

おそらく今の「で」は聞きたくなかったことランキングトップに位置するだろう。

もう、あきらめることにした。

「古舘 明です、よろしく」

「ふーん、明君って言うんだ」

ずいぶんとしたしたしいやつだ。

「私はさっき自己紹介したとおり藤崎 歩」

「歩って呼んで」

「でね、私、魔法少女なんだ」

俺は思わず言ってしまった

「頭大丈夫か?」

さっきまで初対面だった相手にこんなことを言う日が来るとは思わなかった。しかも女の子に。

「大丈夫よ、健康で尚且つ頭もいいんだから」

「そうか、しかし聞きたい」

「なに?」

「頭のいい人は自分を魔法少女などとは言わないぞ」

「それなのよね~」

「私も昨日父親に言われたのよ」

「今日まで黙ってたがお前は魔法が使えるんだ、だから明日からは魔法少女として生きなさい、服もちゃんとあるから」

「ってね」

「へー、とりあえず父親の頭は大丈夫か?酔っ払ってなかったか?」

「失礼ね、うちのパパはダンディよ、写真見る?」

俺は写真を見せてもらった確かにかっこよかった。

「それに昨日はお酒も飲まなかったんだから」

「そうか、それで?君はどんな魔法が使えるわけ?」

俺は試しに聞いてみた。

「君、なんて止めてよ。今日からあなたは私の下僕なんだから」

「はっ?」

「はっ?じゃないわよ。明君が魔法の最中に入ってきたからいけないんじゃない!」

「魔法ってあのポーズとってたのが?」

「そうよ!私が覚えたばっかの使役の魔法の最終段階だったのよ!」

「本当は実験だったからネコを使うはずだったのに詠唱をしてる時に明君が入って来ちゃたんじゃない!」

なるほど、さっきの黒ネコはそれだったのか。

「って・・・はぁ?」

実験?詠唱?現実では聞かない言葉が僕の耳に入ってくる。

「要するに明君はこれから私の下僕ってことよ!」

「はぁぁ?」

父さん・・・僕は新学期早々変な女に下僕にされかけています・・・

俺は小さい時父に言われた「女には気をつけろ」という言葉を思わず思い出してしまった。

「あんたさっきから「はぁ?」しか言ってないけどそれ以外喋れないの?」

怒鳴り声で言われた。

「歩さん、一つ言わせてくれないか」

「何よ!」

「頭、大丈夫かお前」

この言葉も本日3回目だ

「お前って何よ!様をつけなさい!歩様って!そうね・・・歩でもいいわよ」

なんだかすごい偉そうだ。

呼び捨てでいいならそうしようと思った。様付けなんてぜったいに嫌だ。

「じゃあ、呼び捨てにするが歩よ」

「何よ、明」

俺も呼び捨てにされた。

「お前キャラ変わってないか?」

今現在の素直な疑問だ。

「変えてるのよ、魔法少女はやっぱ純粋じゃないといけないじゃない」

さらっ、っと言われた。

「そこまで言うなら俺が下僕だって証拠を見せてもらおうじゃないか!」

俺も強気で言う。下僕なんて真っ平ごめんだ。

「そうね・・・ならこれにしましょう」

そうして何か言い始めた。

「全ての下僕に命じる・・・自分を殴れ!」

今まで寝てた黒猫が突然起き上がってネコパンチをした。・・・自分に

俺の方はなんとも無いようだ。

「あれ?」

歩はちょっと戸惑った様子だ。

「まぁ、100万歩譲って魔法少女というのは信じよう。だが俺は下僕でもないし何の関係も無いただの高校生だ」

「今日のことは黙っておくから今後このようなことはよしてくれ」

俺は弱った歩に対して一気そう言った。

「そんな、そんなはず・・・」

「私が失敗するわけないじゃない!そうよ!これは夢なのよ!」

歩はまだ動揺していた。

どこからどこまでが夢なんだろうと俺は思った。

そして歩が叫んだ。

「下僕に命じる!・・・私を殴りなさい!」

すでに歩は半泣きだった。

その瞬間だった。

体が勝手に動く。

体の自由が利かない。

「あっあれ?」

バシッ!!

俺と黒猫は歩にビンタを食らわせてた。

「痛った~!何するのよ!」

怒られた。

「ごっ・・・ごめん・・・」

「殴る気は無かったんだ、なんだか体が勝手に・・・」

その瞬間、僕は思ってはいけないことを思ってしまった。

「えっ?」

ちょっとなみだ目の「藤崎 歩」がこちらを向いた。どうやら何かに気が付いたようだ。気が付かないでほしかった。

「やったわ!中途半端だけど成功だったのね!」

すごく喜んでいる。笑った顔も又ちょっと可愛かった。と思ったのもつかの間。

「よろしくね下僕」

すごいことを言われた。

「下僕?俺が?」

「そう、明君、いえ、明!あなたは今日から私の下僕よ!」

指をこちらに差して腰に手を当て仁王立ちで言われた。

それはおそらく僕が出した声の中でもっとも大きい声を出した瞬間だった

「はぁぁぁぁぁ!?」

こうして俺の新学期は始まった。

同時に1時間前登校なんてしなければ良かったと心底本気で思った瞬間でもあった。


                      続く?




あとがき^^;

小説第1弾はこんな感じになりました。

テーマは日常に存在する非日常。

明君はどうなるんでしょう?

それは作者の僕も知りません。

「魔法少女『藤崎 歩』第2章『召使』」に進む

感想はこちらまで。

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