息抜きの間の人生

第２章　捜査網の端

県警中央本部、刑事部刑事総務課の部屋で後藤はタバコを吸う。
「後藤さん、ここは禁煙にしたいのですが」
同室の泉は煙たそうに窓を開ける。スーっと初夏の風が部屋に入ってくる。
「・・・泉、今日は勘弁してくれよ」
「何ですか？いらいらですか？」
「まぁ、そんなところだ、篠原は何処に行ったかな。知らないか？」
「さぁ？　後藤さんコーヒーでもどうですか？　入れますよ」
コーヒーメーカをカタカタとセットしながら泉は言う。
「うん、貰おう」
「はい、で、篠原君に何を頼んだのですか？」
マグカップを机に並べる。
「警部、出ましたよ」
篠原が部屋に入ってくる。
「これだよ。泉、で、どう？」
「泉？　ああ、コーヒーですか。俺も貰う」
数枚の資料を後藤に渡す。
「デス・シャーマン。何だこりゃ」
書類に目を通しながら、ぼやく。
「直訳で死の商人ですよ。篠原君カップがないよ。どこにやったの？」
泉が篠原の手から、残りの資料を取り上げる。
「どこぞの国の別名みたいだな・・・」
「・・・どこの国ですか？」
「・・・知らんのか？　なら、知らんでいい」
パラパラとめくる。
「害者の吉川隆の別名ですね」
泉は資料をめくりながら椅子に付く。
「うわ～、嫌なことしたんですね。この人は・・・」
「そうだな。児童ポルノに臓器密売かぁ。お勧めは出来ないな。お～い、篠原。カップ見つけたらコーヒー出来てるだろうから、入れてくれよ」
後藤は新しいタバコに火を着ける。
「・・・はい、ちょっと洗ってきます」
いそいそとカップを片手に持って篠原は部屋を出る。その姿を確認しながら泉は口を開く。
「後藤さん、本当に『ＰＬＡＮＥＴ』を見つけるんですか？」
泉の資料には『ＰＬＡＮＥＴ』の記述が多々ある。
「・・・この人達の人生はどんな感じなのでしょうか？　依頼を受けて、人殺しをし、そして、対極の人助けをする。必要とあらば、窃盗もハッキングも行う。何をしても表の世界には名前が出る事もなくて・・・。でも、名前は残してるんでよね。現場に」
『ＰＬＡＮＥＴ』の犯行履歴を見ながらつぶやく。後藤は答えることなく、タバコをふかす。
質問に答えない後藤を見て、泉はため息を付き、資料に目を戻す。
「私、一人で喋ってますね。どうして、マスコミに『ＰＬＡＮＥＴ』の名を出さないのですか？」
目を向けることなく、言ってみる。
「さぁね、お偉方はその名を外に出すなと言ってるよ。だから、出さない。例外はあるよ。一回出したね」
返ってくることの無いと思っていた質問に答えが返って来た。興味深い言葉である。
「出したことあるのですか？」
「あるよ」
フー　　と煙を吐き出す。
「書いてあるだろう。下の資料に」
「えっ」
あわてて、資料をめくる。
『ＰＬＡＮＥＴ』について　と書いてある資料が目に付いた。
「こんなことがあるんだ・・・」
その資料には、警察官さえも狙った殺人事件についてまとめてある。
「あるんだよ。しっかり、読んどけよ」
「・・・はい」

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