神頼みな毎日

神頼みな毎日

これまたミカン


 今日、最高の出会いを果たし人生変わった。灰色だったいままでの人生が、一気にばら色、桃色、桜色。世界は幸福で包まれた。
 もう本当に一瞬で、一秒にも満たない小さな時間だった。俺は人目彼女を見ただけで完全に魅了されていた。惚れた。もう一目惚れとかそう言うレベルじゃない。いや、一目惚れなんだけれども。でもこの気持ちはそんな安いもんじゃない。いや一目惚れなんだけれども。
 そう言う瞬間のことを稲妻が走るとかよく言うけど、本当に今全身にぴりりって走った。いや、ぴりりどころじゃない。がががって感じだった。突き抜けるような、それでいて甘く切ないような。死にそうな、焦げそうな。痛いような、そうでないような。とにかく稲妻だった。
 可憐な彼女が歩いている。
 彼女の長い髪が風に揺れてる。腰まで届いている黒い髪は幻影じみた綺麗さがあった。思わず見とれる。
 丸い瞳が愛らしい。瞳の色の闇は純真で、その眼に俺が映っていた。一生そこに映っていたい。しかし見つめ合っていると彼女の中の黒い世界に引き込まれそうになる。しかし眼は離せない。
 彼女の頬のラインは滑らかで、暖かい白さを持っていた。体の線は細く、まるで貴重な芸術品のようだった。それでいて女の子特有の体の曲線は、十分すぎるほど大きくカーブしていた。
 ――完璧。そんな言葉が頭に浮かんだ。彼女は全人類的に完璧な容姿を持っていて、尚且つ俺の個人的な好みにもストライク。俺にとって完全無欠、天下無敵。俺史上最強の美少女だった。 
 そんな美少女が向こうから歩いてきて、弁当食べてる俺達の前を微かに甘い匂いを残しながら通過し、そして校舎のほうへと歩いてく。
「太陽? 太陽ぉーっ!」
「ッ! おう、なんだ?」
 耳元で大きな声を張り上げてる弥太郎に気付き、慌てて反応する。
「何ぼぉーっとしてんだよ」
 弥太郎は怪訝な顔で俺を見つめて、そして今歩き去ったばかりの美少女の小さい背中を見つめた。そしてにやりと笑みを作る。
「ははぁーん。お前さては、俺らが羨ましくなって早速その気になりやがったな!」
 俺の肩に手を回し、何故か小躍り加減に左右に揺れだす弥太郎。
「な、なんだよ」
「俺に最近彼女ができたからって、そんな慌てて恋することもなかろうに。ハッハッハッ!」
 この野郎。めがね叩き割ってやろうか。なんてことを思いながら嬉しそうに笑う弥太郎の横顔を見ていた。



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