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2015年10月20日
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カテゴリ: 漫画・アニメ





電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊11巻読了。


13世紀の中国、新興勢力のモンゴルが隣国の西夏や金への侵攻を強める中で、徹底して西夏文字を滅しようする皇帝チンギス・ハン (テムジン) の謎を、文字を守ろうとするテムジンの庶子の少年や、シュトヘル (悪霊) と呼ばれた女戦士らの姿を通して炙り出してゆく歴史ファンタジー。


かなり画力のある作家さんで、絵柄自体に魅力がある。 上手さに任せて、たまにデッサンが粗く感じることが無くもないが、構図や、余り色を多用しないカラー画のセンスが優れている。


現在、放送中の 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 のキャラクターデザイン が、ちょっと独特だなと思ってたら、この伊藤さんの原案らしい。

アニメーターやラノベの挿し絵画家によるデザインだと似た雰囲気 (萌え系?) が多くなるので、時には漫画家に任せるのも面白いと思う。 『アルノドア・ゼロ』 も、志村貴子 ( 『青い花』 など) のキャラデザがなかなか新鮮だった。


最近の劇画は、アシスタントの人海戦術なのか パソコンの活用によるものか、立体感や陰影にこだわった作画が増えているが、この伊藤さんの場合、メインキャラだけでなく、馬やモブや背景も 均一な線画で白っぽく、その分、「手描き感」が満載だ。 実際のところはどうだか知らないが、かなりの部分を作者自身で描いているのではないかと思わせる。


ただ、作画やキャラクターは確かに魅力的だし、皇帝の血を引きながらモンゴルに背いて西夏文字 (文化) を守ろうとする架空の少年をメインに据えるなど、先が気になる物語性はあるものの、戦闘・殺戮シーンの多さに 「よくある青年向け歴史漫画か」 と感じさせられるところも大いにあり、一方で、現代日本の高校生のタイムスリップだの、悪霊と化した女性戦士だのというファンタジー要素を絡めるなど、今いち作者の意図が掴みにくいところもあって、途中まではそれほど感情移入は出来なかった。


『三国志』 『ビン~孫子異伝』 の感想でも書いたが、古代の戦国ものは、得てして「戦略」や「謀略」の how-to みたいな内容に傾きがちで、私的にはそれ自体にはさほど興味が持てないので、持って回った特異な設定で引き付けておいて、結局はただの 「戦闘・戦略」 もので終わるかもしれない …と疑心暗鬼に読み進めたのだが、11巻まで読んだところで言うと、思っていたよりもずっと、テーマが深淵で複雑なようだ。

単なる文化の象徴とか民族の誇りとしてだけでなく、「文字」 の持つ、真の意味や役割、人間の 「復讐心」 や 「愛」 や 「信頼」 の力など、読者に訴えるものは多岐に渡る。


あくまでもメインキャラとしては、皇帝やその親族、武将らを派手に用いながら、作者の視線は常に、敗者や末端の兵士の 「救い」 へと向いているようだ。 巻末の、一見おふざけのオマケ漫画にも意図があるように思えてくる。

現段階での印象だが、キャラクターの目つき・表情の描き方含めて、ちょっと、 『カムイ伝 (第一部)』 (白土三平) に趣が似ている (そこまでの名作にはならないだろうけど)。


いくら作画が良いと言っても、しつこくワンパターンな戦闘・殺戮シーンにはだんだんウンザリしてくるが、悲劇的になり過ぎず、淡々と描かれることで、余計に、戦争の理不尽さが伝わってくる。

最初のうちは余り必然性を感じなかった 「現代日本の少年」 との絡みも、テーマ上、意味があることが分かってくるにつれ、こういう歴史ものにしては、案外、無駄な描写やエピソードが少ないことに気付かされた (その分、感動の波も大きくはないが)。


ただの 「勝った負けた」 の歴史漫画かと疑いながら読んだせいでスルーしてしまったシーンやセリフがありそうなので、完結したら、最初から通して読み直したい作品だ。




<関連日記>
2012.8.17. 勧善懲悪の戦国物語に辟易 ・・・ 横山光輝  『 三国志 』

2013.2.25. 少女たちの痛々しい恋の有り様 ・・・ 志村貴子 『 青い花 』

2013.2.28. 大作家 最後の大長編 (?) ・・・ 竹宮惠子 『 天馬の血族 』

2014.7.9. 心優しい軍師が魅力の歴史ファンタジー ・・・ 星野浩字 『 臏(ビン)~孫子異伝 』












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最終更新日  2016年10月10日 22時18分36秒
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