たぬきぶたの日記2

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さらば青春(5)




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さらば青春(5)



さらば青春(5)

突然の展開に唖然とする俺。

二人の間に立ちふさがる難問を解決するには、ひかるさんの両親の意向も大事な要素です。だから前に進むには避けて通れない事です。

しかし、しかし・・・・・

思わぬ事態に戸惑う俺。でも迷うことなく了解の返事をした。

「俺はひかるさんと結婚したいことを伝える。」そう決心した。

でも、でも、どきどきですよね。どんな挨拶をしようかな。話はどんなふうに展開するのかな。

心配と不安が混じった複雑な心境です。ひかるさんは何か心に決めたものがあるような、そんなオーラを感じます。

計画では明日は彼女を家の近くまで送って、僕はそのまま兵庫まで帰る予定でした。

でも、ひかるさんの心境の変化なのか、それとも前もって決めていたのか分かりませんが、実家まで送ることになった。

たしかに彼女の実家は山の斜面にあるし、そこまでに行くには運動オンチの彼女には難しい道です。

「自分の家まで自動車で帰るなんて、そんなことできないよ~。家まで送ってね。」 

「はい。」

気軽に返事はしたけど、家に上がり込んで両親に挨拶するなんて想定していなかった。

あ~、どきどきする。みなさんはどうだったんですか?

どなたも相手の実家に挨拶に行ったことはあると思いますが、初めての時の心臓どきどきは人生の中でもめったにあることではないでしょう。

普通は1回ですよね。場合によっては頭を下げて「お嬢さんを下さい」というかもしれません。

明日のことを考えると、もう今夜は落ち着きません。昨夜は初めてひかるさんと枕を並べて、心の葛藤に苦しみました。今夜はもっと悩みます。

一歩前進したのかな。それともゴールまで進めないことがはっきりして、諦める決断をすることになるのかな。

今夜も二人並んで寝たけど話が進まなかった。不安でしかたがない。ひかるさんの手をしっかりと握った。

今夜も何もなかった。

(2007.11.08 21:51:41)


今日は帰り支度です。ひかるさんは午前中は仕事の残りをすませて、昼過ぎに帰ってくることになった。

僕はこの間に何をしたかの記憶がない。どんな時間つぶしをしたんだろうか。思い出せない。
昼頃に彼女は帰って来た。彼女に頼まれたことがあった。

外に野ざらし駐車している車を何とか修理してくれということだが、これはバッテリーが弱っている事が判明して、交換する以外に処置はない。

とりあえず、年越しの間に劣化しないように、実家に帰っている間は外しておくことにした。
運転席に移して再セットのやり方を教えて措置は終了ということになったのだが、はたして戻ってきた時に正しくできたのだろうか?今もそのことは疑問なんです。

文学少女にはエンジンルームの説明をしても難しかっただろうと思う。

彼女は部屋の片づけなんかを済ませ、帰り支度は調った。さあ、出発です。

ここから彼女の実家までは2時間以上はかかる。

信州は縦に長いので、北部から南部までは結構時間がかかります。

夕方の明るいときに出発したが、信州の冬の落日は早い。途中で土産物屋に寄った。

後で彼女が気配りのできる人であることが分かって、びっくりすると同時に感謝することになった。
つまり気の利かない僕のためにみやげを用意してくれたのです。実家に着いたときに、両親に僕からのみやげですと渡してくれたんです。

車の中では二人の会話はぎこちなく互いに緊張していた。そりゃそうでしょう。

僕も緊張するし、彼女だって実家に男を連れて来るという、人生の中の大きな出来事が今から始まるのですから。

(2007.11.10 00:54:25)


松本を過ぎ、塩尻峠を越え、天竜川に沿って南下します。

もう空も暗くなり、どこをどう走っているのか分からないようになった。

このあたりからは彼女が道案内をしてくれます。

車の運転には自信を持っていた自分ですが、この時ばかりは、事故を起こすことも大いにあった。
川からの水蒸気が霧となって辺り一面が見えないのです。川を渡る橋もどこにあるか分からない。

現在みたいにナビもないし、よほど地形に詳しい地元の人しか通行不可能でしょう。

橋を渡ってからも霧は晴れないし、道は狭くなっていく。

霧には黄色い光のフォグランプが必要だと聞いたことがあるが、このときは痛切にそれを実感した。

普通のライトでは目の前に白いスクリーンがあるみたいで、道がまったく見えないのです。
一応小型のフォグランプを装着していたので、ライトを消してフォグランプだけにして数メートル先を確認したり、スピードを落とし、道を確認しながら進んだ。

車から降りて道の幅と方向を確認してから進んだところもあった。

彼女が車で家に帰ることができないというのが理解できました。

特に最後の実家直前の細い坂道は脱輪して車が転落するのではと怖かった。

3年前にバイクで足を使って上った坂道です。なんとかしてやっと着きました。

ほっとしたけど、さらなる緊張感が体を包みます。

「ただいまあ。すごい霧で怖かったわあ。おかあさん、たぬきさんを連れてきたからね。さあ、遠慮しないで上がって」

「こんばんは。おじゃまします。」

お母さんの挨拶を受けた後、ひかるさんが、

「これ、たぬきさんからのおみやげだよ」

なんと、気の付く人なんでしょう。感心します。

お父さんもまもなく顔を出しました。ひとしきり挨拶をして応接間に通されました。

(2007.11.10 01:34:49)

「すぐに食事の用意をしますからね」

ひかるさんは母親と共に準備に追われています。その間はお父さんと差し障りのない話題になりました。
座敷机に僕とひかるさんが並んで座ります。向かいには両親が。

ひかるさんはまだ僕のことを十分に紹介していなかったので、いろいろ聞かれました。

僕が長男であること、仕事は堅実で収入も確実だし、当時ではそろそろ適齢期だということですが、

両親にしたらはじめての訪問だから、とまどいも感じられた。

突然の訪問だし、どちらも心の準備ができていない。

ぎこちない会話で、話題と言えばこれまた、本題以外のことばかり。

僕もその場は成り行きまかせです。

「結婚したいのでお嬢さんをください。」と言えないもどかしさ。

そこに至るには難問をクリアしなければいけない。

その段取りなどが具体的に方法も可能性もまだ未定の状態では結論を言い出すのは困難でした。

はっきりとしない話し合いだったが、二人の結婚についての壁ははっきりした。

後はそれをどう解決出来るかです。その日の話し合いはそこまでだった。

夜は長かった。客間でふかふかの蒲団を頂きました。

一人で寝る寂しさと出口の見えないトンネルに入った不安が襲ってきます。

あれこれと考えると寝付けない。

昨日までの二人で隣り合って寝たことを思い出すと、今夜の独り寝は辛かった。

(2007.11.11 14:24:15)




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