たぬきぶたの日記2

たぬきぶたの日記2

小海線連写の傑作



<2008年1月15日の日記から>

小海線は信越線の小諸駅から中央線の小淵沢までを行く山岳路線です。

その途中の野辺山高原には国鉄の線路で標高最高地点の場所があります。

一応、記念に写してみました。となりは引き立て役のモデルです。

この日は暑かった。珍しく帽子をかぶっています。

別にかっこ付けているわけではありません。

SL撮影では炎天下での我慢比べですから、それなりに用意している方がいいのです。




大学1年(昭和48年)の5月で中央西線の中津川から塩尻までの区間が無煙化されました。

そこで、近くの撮影場所と言えば有名な小海線です。

松本からは近いので、朝一番の列車でいけば十分に間に合います。

小淵沢から分岐するが、圧巻は出発して直ぐの山登りの大ループです。

ここでは36枚撮りのフィルムを1本使ってしまいました。

なんせ非力なC56ですからゆっくりしたスピードです。

連続アニメにしてもいいのですが、代わり映えのしない画像ですから1枚だけにします。

客車2両が精一杯です。この写真をよく見て下さいね。

客車の後ろに車掌用の小さな車両が付いています。

この日はこの最後尾の車掌車に乗ることになってしまったんです。





大築堤で撮影が終わると皆さん車で追いかけます。

なんせ、ゆっくりしていますから、車で飛ばせば、いくつも写せます。

そこで、車を持っていそうな人と一緒に歩いて仲良くなります。

で、次の有名な場所に行きます。頭と口は生きている内に使わなきゃ。

 バックに八ヶ岳が写り、標高最高地点のすぐ近くです。

たくさんの人がカメラを構えています。僕もここで一枚。

じゃない、何枚だ~。なんまいだ~。14枚も写してしまいました。

この時間帯は逆光できれいには撮れません。





ここから小諸までは下り坂です。大して煙も出さないので、ここは観光と洒落込みます。

清里高原のペンション群でお茶と食事です。

しかし、貧乏な僕には観光地特有の高額で腹にならない食事は金の損失とばかりに食えません。

でも、むっちゃ暑かったので、ソフトクリームは食べました。好物ですからね。



 さて、いよいよ帰ってくる列車のクライマックスシーンを撮影します。

場所は忘れた。どこなんだろう。記録してなかった。

当時は全部頭の中に、日時や撮影データがインプットされていた。

でもさすがに、35年も前のことはだめです。

線路沿いにたくさんの人がカメラを構えています。

基本的なルールとして、先に来た人が優先権があり、後から画面の構図に邪魔が入ると、

「おーい、じゃまだぞ~。」となるわけです。

僕もお互い様ですから、邪魔にならないように、線路沿いに三脚を構えました。

たった客車2両とはいえ、非力ですし、ほぼ満員が乗っています。

そして、機関車にとって一番辛いのが勾配です。ここはけっこうきつい坂になっています。

遠くからブラストが聞こえますが、なかなかやってきません。

音から次第に近づいてきているのが分かります。もう興奮状態です。

でも冷静になって、シャッター、ピント、構図の確認です。

「来た~。」 (カシャ、カシャ、カシャ・・・・・・・)

















連続10枚をきりました。「やったー、思うように撮れたぞ。」

と、思ったのもつかの間に、予期せぬことが起こった。

勾配のきつさと乗客の多さにC5694号機は空転を起こしてしまった。

機関車の動輪が線路と摩擦がなくなるというか、荷物重量に摩擦抵抗が

負けてしまった。動かなくなってしまった。止まった。そうなんです、止まったのです。

僕の場所を少し過ぎたあたりで列車はとまったのです。

走って前に行けば、また撮影できるかなとも思いましたが、先ほどの撮影で

思うように撮影できたので、それならと他のことを考えた、瞬時に行動をした。

「チャンスだ。行け。」

カメラバック、三脚を片づけると、肩に担いで走る。

最後尾に車掌用の車両がついている。

車掌は列車の再出発に向けて機関士と連絡のためにいない。

「よし、乗るぞ。」と思ったら、動き出した。「やばい。間に合うか?」

やっとのことで乗降ステップのところに足がかかって、乗ることができた。

ちょっと怖かった。結構揺れる、揺れる。ガタン、ガタンとクッションは最悪。

これでスピードが出たら振り落とされるかも。ちょっと心配です。

でもまあ、こんなところに乗り込んでの汽車の旅はめったにあるもんじゃないから、

必死にしがみついていました。撮影している人たちに手を振ったりして。

スピードをあげていく列車。しがみついている僕。

ステップのところはりっぱな腰掛けみたいですから、落ちる心配はなくなりました。

ブレーキや発車の時の衝撃で体が振り回されるのが、危ないので気をつけた。

しばらくすると、車掌が後ろを見にきた。あの驚きの顔。

「ちょっと、あなた、どうしてそこに乗っているの。」

「さっき、飛び乗ったんだけど。」

「下りて下さい。すぐに。」

「ちょっと待てよ。今?無理だよ、死ぬぞ。怪我するぞ。」

「仕方ない。次の停車駅で降りて下さいね。」

「ハーイ。」

「そこは危ないから、中に入って。」

もっと乗っていたかったが、下り坂になると、これはもう無理ですね。危ない。

初めて車掌用の車両に乗った。助かってほっとした。

ちょうどいいところで下りることが出来た。ここでは、少し長めの停車時間だった。







その駅の発車シーンが撮れて、一カ所もうけた気分。

なんて野郎でしょうか。ぼくが車掌なら蹴飛ばしてやるのに。悪い奴です僕は。

ごめんなさい。



SLを写して命がなくなれば本望だろうと高校時代にさんざん言われていた。

他にも危険な目にあったのはいくつかあるのだが、それはまた後日に。

では最後にその駅での発車シーンを載せて本日はおしまい。







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