感染ルンです。。。

感染ルンです。。。

感度10倍分の5.6

えー、地球上のどこでも太陽から降り注ぐ光の強さは同じになるという理論と、フィルム感度と露出の関係を合わせて考えると、快晴時の露出はフィルム感度分の1のシャッタースピードで、絞り値はF16である。

このことはフィルムパッケージにも露出の目安として記載されている。また、僕自身も学校で習った(はずだ)。

「感度分の16」

写真を撮影する者にとって露出の呪文のような言葉である。ネットをはじめ写真界へ大きく広めたのは、写真家・渡部さとる氏であろう。


人間の眼は環境適応能力が高く、また光彩が自動調節するために、ある程度光量がある場所では変化に気が付きにくい。しかしフィルムは敏感である。しかしながらフィルムと露出の特性と光の特性を覚えていれば、感覚と経験で露出を算出することができる。

つまり「フィルム感度分の1というシャッタースピードと快晴の正午前後はF16になる」を基準に算出すればよいのである。例えばISO100のフィルムならヤッタースピードが1/100秒で快晴ならF16になって、日陰や明るい曇りは2段落ちのF8になって、曇りや日のある夕方は3段落ちでF5.6になって、明るい室内なら5段落ちでF2.8になる。という光の変化についていくつかを知っていればよいのである。

この方法あれば、万が一露出計が壊れても、あるいは古いカメラで露出計を搭載していなかったとしても、経験によって適正露出が得られるという寸法だ。よく言われる「人間露出計」ということである。

逆にいうと「露出を計る」という呪縛から外れてスナップをすると、なんとも表現しにくいが爽快感を得られてしまう。「AE搭載していれば同じじゃん」という意見はひとまず抹殺する方向で。


この「感度分の16」という理論は確かにすごい。すごいが、大口径開放撮影が好きであり、被写界深度を深くしたいとしても決してF16には設定しない自分にとっては非常にめんどくさい換算が必要になる。「ええっと、ISO50で快晴だと、シャッタースピードが1/60秒でF16だ。F1.4で撮影したいから、ひぃふぅみぃ・・・。ああぁ、被写体が逃げる!」となりかねない。

そこで快晴時の露出であるフィルム感度分のF16を基準に、人間露出計の基準は見つからないだろうかとを表にしてみた。



ISO50
ISO100
ISO400
F値
感度分の1
実シャッター
感度分の1
実シャッター
感度分の1
実シャッター
16
50
60
100
125
400
500
13
70
85
140
175
560
700
11
100
125
200
250
800
1000
9.5
140
175
280
350
1120
1400
8.0
200
250
400
500
1600
2000
6.5
280
350
560
700
2240
2800
5.6
400
500
800
1000
3200
4000
4.5
560
700
1120
1400
4500
5600
4.0
800
1000
1600
2000
6400
8000
3.5
1120
1400
2240
2800
9000
11200
2.8
1600
2000
3200
4000
12800
16000
2.4
2240
2800
4500
5600
18000
22600
2.0
3200
4000
6400
8000
25600
32000
1.7
4500
5600
9000
11200
36000
45000
1.4
6400
8000
12800
16000
51200
64000
1.2
9000
11200
18000
22600
72000
90000
1.0
12800
16000
25600
32000
102400
128000





うーむ。実際問題として、F1.4とかF1.2とかF1.0だとカメラとしてはあり得ないシャッタースピードになってしまう。ライカであればマックススピードは1/1000秒だ。しかも精度に少々不安がある。レンジファインダーの中で最速を誇るヘキサーRFにしても1/4000秒だ。キヤノンF-1などの80年代前半あたりまでの一眼レフでも1/2000秒程度。銀塩カメラで最高の技術が投入されていると思っているキヤノンEOS-1vにしても1/8000秒。ちなみに、銀塩一眼レフ最速のα-9にして1/12000秒だ。


このままでは、日中の大口径開放撮影は不可能だ。



念のため書いておこう。1部コダックからISO64、ISO125という算出が楽々なフィルムがあるが、やや一般的ではない。主なフィルム感度はISO50、ISO100、ISO400である。正直感度をそのままシャッタースピードの分母にしてしまうと、現在のシャッタースピードの段階基準で選択すると、1/3アンダー露出を選ばざるを得ない。まぁ、-1/3ならボジでもネガでもラチチュードに助けられる範囲であると考えられる。従って表の右側のシャッタースピードを主に考えてもあながち外したりはしないはずだ。と思うことにする。第一に前提として、絞り値を固定した撮影をしようというのだから、通常のカメラでは中間シャッターなどという選択はできない。ちなみにライカはできるらしいがやったことはない。ニコンF2もできるらしいが持っていない。



さて、表をしばらく眺めてハッと気がついた。


フィルム感度10倍分シャッタースピードではF5.6になっているではないか!


ISO50であれば、1/500秒でF5.6
ISO100であれば、1/1000秒でF5.6
ISO400であれば、1/4000秒でF5.6

ライカであれば、ISO100のF5.6で使う1/1000秒ならギリギリの最速シャッターだ。しかもF5.6基準換算ならば室内で5段落ちしても、1/30秒でF5.6となり手持ち撮影可能だ。低速シャッターがいやならば、1/1000秒でF1.0だ。ただし僕はノクチルックスは持っていないので、1/500秒でF1.4だ。F16から指折り数えてシャッタースピードを算出するよりも、絞りの中心的数値であるF5.6から考えた方が使いやすいのではないだろうか。


さて、相変わらず写真は開放撮影が好きであるが、スナイプ感覚のスナップも好きだ。むしろ以前は少し絞った写真が好きだった。しかしながらその時もやっぱり自分らしく、 偏愛していた絞り があった。

それは F5.6 だった。

一眼レフはコンタックスRTSを主に使っていたので、絞り優先AEしか無かったということもある。ちなみにシャッタースピード優先主義のキヤノンNEW F-1も持っていたが絞り優先ができるAEファインダーを付けていた。

F5.6撮影が好きだった理由は簡単で、レンズの1番美味しい能力がアップするのはたいていF5.6であること。ボートレート撮影の場合は、中距離で眼にピントを合わせた場合に鼻から耳程度までピントがくること。街中スナップをしていると主題中心にピントが合い遠景も形を残しながらボケること。まぁ、最後の理由はアンリ・カルティェ=ブレッソンの受け売りであるが。


そうだ。 F5.6というのは好きな絞り なのだ。


ならば僕は写真の神様から授かった魔法の呪文のように唱えよう。



感度10倍分の5.6と。



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