2014年01月02日
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カテゴリ: 日々の事
大家さんから、「退出のお願い」の文書が、
ポストに投函されたのは、火事から2週間後のことだった。

結局、私達は、「2日連休」が今後取れそうもないと、
新幹線で彦根の孫に会いに行った。
臨月に入っていた娘は、大きなおなかをして、
もうすぐ2歳になる孫とのひと時は、本当に火事の事を忘れさせてくれ、
癒しの時間だった。

帰宅してからの私は、
「俺は身動き取れないから、お前頼むな」とパパに言われ、
毎晩、パソコンで明け方まで空き室探しに追われた。
私達に部屋を貸してくれるところがあるのだろうか。
そして、意を決し、駅前の不動産会社に出かけた。

偶然だったが、そこは、まだ大きな家に住んでいた頃、
2DKに住み変わらなくてなならないと言う意味も解らず、
自己破産する前に抑えた、今住んでいる部屋を斡旋してくれた会社の支店で、
その時の担当者が、何と今は店長になっているお店だった。
・・・と言うことで、私達の立場を隠す必要も無く、
事情をわかって斡旋をしていただこうと、
不在だった店長に代わり、Mさんが本当に一生懸命に部屋を探してくださった。

部屋を借りたことがある方はご存じだろうけれど、
借りるに当たり、「連帯保証人」がいる。
われわれの事は、金融関係にはすでにブラックリストに載っているから、
クレジットやローンは使えない。
だが、最近は大手の住宅会社が入っているマンションやアパートが多く、
そこは、クレジットを持っていないと、
私達がいくら気に入っても、借りる事が出来なかった。
「保証人」
誰も、そんなものには成りたくない。
我が家自身、「保証人」になり他人の借金をかぶり、
その父親は責任を感じパパに遺書を残し、亡くなった。
警察から遺書を渡された時、お葬式の時、どれほど切なかったことか。
その後、大変な思いをして返した。
勿論、私達とて人様に迷惑をかけるつもりはないが、
誰もが皆、そう思い「保証人」を頼むのだ。

それを、誰に頼めというのだろう。
本当に不本意であったが、義弟に恥を忍んで頼んだ。
だが、思いやりある言葉で、自分たちで頑張るよう長いメールが届いた。
従姉妹も「良いよ保証人になるよ」と言ってくれたが、
「印鑑証明」が要ると聞き、これ以上迷惑はかけられないと思った。
この時の私達は、今更ながら、会社が倒産した事実、
自己破産者になる・・・と言う意味を思い知らされた。
放漫経営からの倒産ではない。
40年下請けをしてきて、どんな親会社の要求にも応じてきた。
24時間で、造りこんでくれと頼まれれば、徹夜し、日本の60パーセントに当たる自販機に、
部品を供給し続けてきた会社だった。
それがある日突然、親会社からの子会社切りにあったのだ。
でも、今はもう、そんなことは過去のことであり、
事実私達は、8部屋もあった広い家も広い庭も土地もマンションも何もかもなくし、
このアパート住まいの生活をしているのだ。
そして今、そこも追い出されようとしている。
八方ふさがりとはこのことだと思った。

そんな時だった。
担当のM君が「保証会社でも構わない物件を探しましょう」
と提案してくれた。
このアパートもそうして捜したが、まだ自己破産する前だったから、
保証会社が利用出来たのだと思っていた。
「大丈夫、利用できますよ」
その言葉がどれほど嬉しかったことか。
捜したマンション、アパートが、ことごとく「要保証人」で、
もう、心が折れてしまいそうになっていたひと月後、
「ここなら、僕、よく知っていますし、大家さんも良いかたなので」
と提案してくれたのは、古い5階建てマンションの1階、
家賃は少し高くなるが、今より1部屋多く、
何より、従姉妹の家から歩いて10分もかからず、駅からもバスで5分ほどの場所だった。

今のように、お風呂の追いだきはできない。
洗面所とは名ばかりで、大昔のマンションだから、
水道と小さなボールが付いているだけ、
トイレにはコンセントがないから、洗浄付き便座をどうやってつけたら良いものやら。
だが、収納は十分だし、南向きでお日様が入る。
広さも今よりは広い。
今の私達には、十分な住まいだった。
駐車場もM君が大家さんに交渉してくれ、少し安く借りられるようになった。

その晩から、やっとゆっくり眠ることができるようになった。
一つのことに夢中になる私は、
この間、ろくに家事も出来ずにいた。
気がつけば、例年以上の寒さの中、
食事の買い物と病院に行くのが精いっぱいの毎日だった。
やれやれ、本当にそんな気持ちだった。
年が明け、遊びにおいで・・・・と言ってくれていた従姉妹のお宅にも
やっと遊びに行けた。
何だか、トンネルを抜けた気持だった。
あとは、契約とお引っ越し。
引っ越し・・・・大変だ。
どこから手をつけたら良いのか…
頑張ろう。

その時は、大変だが、頑張ろうと思っていた。
その後もまた、ひと波乱待っているとも知らず。





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最終更新日  2019年04月10日 11時16分49秒
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