龍影堂

龍影堂

談話室(プチ小説)



 「談話室。管理人が作った部屋なんですって」

 「ついでに俺たちも創られたってか」

 「いいじゃないですか、そうじゃないと会話が成り立たないし、意味ないでしょう?」

 「だからって、何で俺らが・・・女もいねぇし」

 「仕方ないじゃないですか。管理人は女を書くのが苦手なんですから」

 「だからって何だ!この男だけって言うむさっ苦しい状況は!!全く楽しくねぇ!」

 「まぁまぁ。しょうがないしょうがない」

 「ったく。で、いつまでここに居ればいいんだ?」

 「さぁ?」

 「はぁ?」

 「管理人のみぞ知るってことですよ」

 「じゃあ帰っていいか」

 「帰れるんなら、ね。さっき試してみたけれどドアは開きませんよ」

 「はぁあ!?」

 「管理人の気の済むまでここに居なきゃぁ無理でしょう」

 「なんだそりゃ。はぁぁぁ」

 「なんか喋れってことでしょう。仮にも談話室なんですから」

 「喋るって言ったって、男二人だぜ。会話が弾むか」

 「だからって、こんなところにずっと居るわけにはいかないでしょう」

 「・・・。しょうがねぇな」

 「でもそこまで意地悪じゃあなさそうですよ、管理人は」

 「この状態からして最悪だろ・・・」

 「まず、名前は自分たちで決めろってことですかね」

 「は?」

 「じゃあ訊きますが、あなたの名前は?」

 「無え」

 「でしょ?だから僕たちで決めちゃいましょうよ」

 「いいのか?そんなことして」

 「いいでしょ。こんな所に閉じ込めるような馬鹿野郎にすべてを決められたくないですし」

 「お前、顔の割には腹黒いな・・・」

 「そうですか?」

 「ああ。で、どうすんだ?」

 「じゃあ僕はショウタでいいですよ、一番平凡そうですし」

 「そんな理由か。じゃあ俺はなんにしよう?」

 「何でもいいですよ。話すにはあんま関係ないですし」

 「ほんと酷いな。・・・んじゃあヨウスケで」

 「じゃ、そういうことで今日は帰りましょう」

 「ん?鍵が閉まってんじゃねぇのか?」

 「いま『カチャリ』って音したでしょう?もう開いてると思いますよ」

 「おお、そうか。ただ―――」

 「多分またここに来る事になるでしょう。それまでは各自の帰るべき場所へ行きましょう」

 「さっき創られたばっかなのにどうして帰る場所がわかるんだ?」

 「そういう風にプログラムしてあるんでしょう。僕はもう帰りますよ」

 「ああ。俺も帰るとするか」

 「では」

 「また今度、だな」



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