あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

孤独な証言

殺意のまつり ~孤独な証言~     【殺意のまつり】所収


3月26日、沖縄を飛び立ったジャンボ機が、大島上空で墜落した
乗員乗客の生存は絶望的と思われていたが、奇跡的にも1人の生存者が確認された…

今回のジャンボ機墜落事故の調査団の団長を務めるのは、航空工学の専門家である永井教授
永井は、今回事故を起こしたジャンボ機の日本への輸入に関して、積極的な推進者の一人だったので、マスコミたちは、永井が今回の墜落事故に関して、どのような調査結果を出すのか注目を注いでいた

一方、墜落したジャンボ機に婚約者が搭乗していた、新聞記者の宮城は、最愛の人を失った悲しみが癒えないなか、複雑な心境でありながらも、なぜジャンボ機が墜落したのか真実を探るために、事件を取材していた

大概の墜落事故の場合、事故の原因は都合よく理由付けられてしまうのだが、今回に関していえば、生存者がいる
事故当時、一体機内では何が起きたのかを聞き出す為に、永井は、生存者が入院している病院を訪れた
唯一の生存者である笠井美奈子は、痛々しい姿でありながらも、意識はハッキリとしているようだった
永井は、墜落当時の出来事を美奈子に聞きだすが、美奈子はショックのあまりか、記憶喪失になっていた
美奈子は、青い海と、赤い花のようなものだけしか、今は思い出せないという
唯一の生存者でありながらも、何も証言を引き出せない永井は、内心歯痒さを覚えながらも、何とか話を自分寄りへと持っていこうとした

事故調査団から、生存者の証言などを基にして、今回の墜落事故に関して発表がされた
それによると、今回の事故は、雷雲の中にジャンボ機が突入し、なんらかの影響で墜落したというものだった
機体に原因があるわけでもなく、機長の判断ミスでもない、不可抗力が原因だというのだ
都合のいい調査発表に、マスコミは納得がいかない様子だったが、それに対して反論する術は誰にも無かった

調査報告に納得がいかない新聞記者の宮城は、事故の生存者である美奈子に会うべく、彼女の病室へ潜入する
突然の来訪に驚く美奈子だったが、宮城の婚約者が今回の事故で亡くなった話をすると、美奈子は取材に応じた
事故当時の話を宮城は美奈子に聞くが、美奈子は記憶喪失になっているので、情報を得ることはできない
ただ、青い海と赤い花のようなものをおぼろげながら覚えているという話を聞いた宮城は色めきだつ
というのも、宮城の婚約者が沖縄を発つ前に、「赤いハイビスカスの花束を持って帰る」と言っていたからである
そのことを美奈子に話すと、美奈子はそう言われてみると、ハイビスカスだったような気がする…と答えるのだった

翌日の新聞の一面に、“ジャンボ機の機体の損傷が墜落の原因”という文字が躍る
宮城が、美奈子の話に勝手な解釈を加えて記事にしたのだ
その記事に反発するように、事故調査団の永井は、“今回の事故は機長の操縦ミスが原因”と発表
そのことが原因で、高橋機長の妻が自殺してしまう

自分は覚えていることだけしか話していないのに、どうして好き勝手に解釈されてしまうのだろうか?
思い悩む美奈子は、自殺を図ってしまう
幸いにも発見が早かったために一命を取り留めた美奈子
墜落事故を報道する新聞を目にしたとき、ふとしたことから、美奈子は、すべての記憶を取り戻す
果たして、ジャンボ機墜落のとき、機内では何が起きていたのか…
そして、記憶を取り戻した美奈子が取った、意外な行動とは!?



~感想~
人々の身勝手な思惑によって追い詰められていく主人公の様子が丹念に描かれており、先の読めない物語の展開とともに、とても興味深く読んだ
事件の真相も意外なものであったのだが、結末の展開がどうも腑に落ちなかった
自分たちのことしか考えない身勝手な連中に怒りを覚えていたはずの主人公が、ラストで自分自身が身勝手な行動に出るからである
一体彼女はどうしたかったのか?
そこら辺の心情の変化が描かれていないので、どうも理解できない
事件の真実も結局は曖昧に片付けられてしまい、なんだか唐突に終わってしまった感じ
彼女の最後のセリフだけでは、この物語は片付けられないだろう

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品◆
ありません




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