あゝ平凡なる我が人生に幸あれ

京都不倫旅行殺人事件

京都不倫旅行殺人事件 ~京都不倫旅行殺人事件~


三原麻知子、野川ユキ、石田みどりは、京都を訪れていた
三人は大学時代の同級生で、大学卒業後も付き合いがあり、今は別々の会社に勤めているが、京都旅行のために揃って休暇を取ったのである

今回の旅の一番の目的は、舞妓姿に扮装すること
予約しておいた鴨川の宿で、3人は舞妓姿になると、その姿で街へと繰り出した
しかし慣れない着物姿で息苦しいのと、舞妓の履物のこっぽりでは歩きづらいせいか、すぐに疲れてしまい、三人は早くに宿に戻ってしまった
ユキとみどりは辺りを散策するというので、再び外出したが、麻知子だけは宿に残っていた
すると、程なくして、男性が血相を変えて宿に駆け込んできた
「妻が鴨川に転落した」というのだ

程なくして、鴨川で舞妓姿に扮した若い女性の溺死体が発見され、その女性が杉野ジュン子であることが夫によって確認された
ジュン子に高額の保険金が掛けられていたことから、夫の杉野に疑惑の目が向けられるが、たまたま現場近くにユキがいて、杉野とジュン子は離れていて、「撮影している最中にジュン子が誤って鴨川に転落した」と警察に証言したこと、そしてその証言を裏付けるかのように、転落していくジュン子の様子を杉野が撮影していたことから、どうやら疑いは晴れたようだった
杉野夫婦とは面識はないものの、三人が舞妓に扮装しているとき、ジュン子も一緒で顔を合わせていただけに、彼女の突然の死に驚くのであった

翌日、麻知子たち三人は大原へと向かった
宿で大原女の姿に扮した三人は、そのままの姿で京都市内へと繰り出した
そのうち、みどりが大原女の姿を愛する人に見せたいといいだした
みどりは結婚を間近に控えている身なのに、妻子ある男性と不倫を重ねていたのだ
結局は、17時半にホテルに集合する約束で、それぞれ別行動をとることに
一人ぼっちになった麻知子は、大原女姿で街中を歩いていると、周囲の視線が気になり、恥ずかしさのあまりタクシーに飛び乗って、東山ドライブウェーを走ってもらった
その頂上で、景色を眺めていると、麻知子に向かってカメラを向ける男性がいた
警戒する麻知子に対して、男は矢木次郎と書かれた名刺を差し出した
プロのカメラマンだという
撮った写真を出来上がったら渡したいというので、麻知子と矢木はそれぞれの宿泊先を交換して別れた

約束の時間に少し遅れて麻知子がホテルに行くと、ユキだけが待っていた
しかし、待てどもみどりは現れない
待ちぼうけをくっていると、ユキ宛に電話がかかってきているという館内アナウンスが入り、電話に出ると、みどりからで、急に用事が出来たので先に大原のホテルに戻ってほしいとの事だった
その日、とうとうみどりは帰ってこなかった
京都に住んでいるという不倫相手の男性の家にでも宿泊しているのだろうか?

翌朝、麻知子たちは、部屋のドアを激しく叩く音で目が覚めた
なんと、ホテルの近くの寂光院で、みどりが服毒死体で発見されたというのだ
慌てて寂光院に向かう麻知子とユキ
そこには、大原女に扮したみどりの変わり果てた姿が横たわっていたのだった

みどりは、婚約者である中山和夫と結婚を間近に控えていながら、妻子ある園田陽一のことが忘れられずに不倫関係が続いていた
どちらかの男性が、恋のもつれからみどりを殺したのだろうか?
それとも、みどりは自殺したのだろうか?
不倫の恋に悩んでいたみどりのことを知り、麻知子は複雑な想いでいた
というのも、麻知子も不倫をしているからだ
相手は、今勤めている会社の上司の大垣部長
かれこれ二年半関係は続いているだろうか
不倫の恋に身を焦がしたばかりに悲劇の末路を辿ってしまったみどりに、麻知子はなんともいいようがない気持ちを抱えるのであった

みどりの死によって、疑いを向けられた婚約者の中山と不倫相手の園田だったが、その園田が、下鴨にある自宅で服毒死体となって発見される
園田は不倫関係にあったみどりを殺し、自殺したのだろうか?
現場は密室状態ではあったが、不自然な点も多く、警察では自殺と他殺の両方で捜査を進めているようだった

警察によるその後の調査で、みどりが大学生時代に愛人バンクに登録していて、その相手が大垣部長であったことが判明し、つい最近、大垣からみどり宛に百万円振込みがあったことを聞かされた麻知子は、大垣へと疑惑の目を向ける
というのも、最近大垣から関係を清算したいと別れを切り出されたからだ
別れの予感を感じながらも、その事実を受け入れられない麻知子は、苦悩していた

事件がなかなか進展を見せないなか、新たな事件が発生した
みどりの婚約者だった中山が、犯行を自白する遺書を残して密室の自室で服毒死体となって発見されたのだ…

不倫の恋に悩み苦しむ麻知子のまえに立ちはだかる、連続殺人と数々の疑惑…
事実を突き止めたとき見えてきた、意外な真相とは?



~感想~
愛のためなら罪も犯せるという感情がいまいち自分には理解できない
そこまで本気に人を愛したことがないからだろうか?
いや、それでもやっぱり人の幸福を踏み躙ってまでも、自分の幸福を掴もうとは思わない

不倫の恋に悩む女性の姿に歯痒さを覚えながらも、次々と事件が起こり、密室殺人も用意されて、内容的には盛り沢山で、スピーディーに展開していく
自分はドラマを見てから小説を読んでしまったので、犯人探しという点では楽しむことはできなかったが、作者が「犯人が誰であるか最後までわからないように工夫したつもり」と書いているだけあって、登場するのは疑わしい人物ばかり
長編小説だったが、勢いに任せて読破した
それにしても、ラストはハッピーエンドにはなっているものの、それまでに十分すぎるほど血生臭い世界を見せ付けられていたせいか、ちょっと白々しい感は否めかった

という事で、私的評価は星【★★★☆☆】3つです



◆この原作のドラマ化作品・1◆
昭和61年11月1日放送
土曜ワイド劇場『京都不倫旅行殺人事件』土曜ワイド劇場
『京都不倫旅行殺人事件・OL3人古都めぐり・舞妓、大原女、連続殺人…』
出演/三原麻知子…片平なぎさ/大垣部長…平幹二朗/野川ユキ…斎藤とも子/矢木次郎…新藤栄作/狩矢警部…横内正/石田みどり…松本ちえこ/園田陽一…清水章吾/橋口警部補…伊吹剛/杉野…石田信之/中山和夫…桑原大輔 ほか


…ドラマの内容
勤め先の直属の上司である大垣部長との不倫の関係を精算した三原麻知子は、大学時代からの友人、野川ユキ、石田みどりの3人で京都旅行へと出かけた
南禅寺などの観光スポットを回ったり、舞妓に扮装したりと、京都を満喫していた

ところが思いもかけない形で、事件に巻き込まれてしまう
舞妓姿に扮した女性が鴨川から転落してしまい、水死体となって発見されたのである
その死亡した女性、杉野ジュン子は、麻知子たち3人と入れ違いで舞妓姿に扮していた女性だった
警察は事故と他殺の両面で捜査しているようだったが、たまたまユキが現場近くを通りかかって、ジュン子が転落する瞬間を目撃していたことから、事情を聞きに来た京都府警の狩矢警部の事情聴取を受ける
ユキは、ジュン子が誤って川に転落したとき、カメラを構えていた杉野は3メートル程離れていたこと
ジュン子が転落したのを見て、慌てて杉野が川に入っていく姿を目撃したことを狩矢に話した

旅行で知り合った顔見知りの女性が亡くなったことに複雑な気持ちを抱きながらも、翌日3人は大原へと向かった
大原を訪れたのは、大原女姿に扮するのが目的である
午後からは、それぞれが自由行動しようということになり、17時半に京都ホテルのロビーで待ち合わせの約束をして別れる
約束の時間に遅れて麻知子がホテルに到着すると、待っていたのはユミだけだった
いくら待っても現れないみどりに待ちくたびれた2人だったが、館内放送でユミの呼び出しがかかり、みどりから「遅くなりそうなので先に大原に戻って」という電話があったことを麻知子に告げる
結局、その日みどりは戻ってこなかった

翌日、大原の実光院で大原女姿のみどりの服毒死体が発見される
驚く麻知子たちだったが、さらには、みどりは結婚を間近に控えている身でありながら、京都に住んでいる園田陽一という男と不倫関係にあったことを知る
みどりは今回の旅の途中で、たびたび園田と会っていたのだ
不倫の関係を断ち切ることができず、邪魔になったみどりを園田が殺したのだろうか?
疑惑の目は園田に向けられるが、その園田が自宅で服毒死体となって発見される
しかも自宅は密室状態だった…

みどりの手帳を何気なくめくっていた麻知子は、一つの電話番号を見つける
なんとその電話番号は、大垣部長の電話番号だったのだ
大垣部長とみどりは、一体どういう関係なのだろうか?
大垣は今回の事件に何か関与しているのだろうか?
麻知子は友人の死の真相を突き止めるために、大垣部長に尋ねてみるが…


…ドラマの感想
密室トリックを忠実に再現したりと、ほぼ原作通りに作られている
ただ、ラストの麻知子と矢木が迎える恋の結末だけは原作と異なっている



◆この原作のドラマ化作品・2◆
不倫調査員片山由美3・京都芸妓殺人事件平成14年5月1日放送
水曜女と愛とミステリー
山村美紗サスペンス
『不倫調査員片山由美3~京都・芸妓殺人事件、祇園と西陣を結ぶ男女に死のスキャンダル…不倫地獄が招いた恐怖の密室殺人トリック』
出演/片山由美…池上季実子/片山俊介…神田正輝/三原麻知子…藤谷美紀/園田泰子…大場久美子/園田弘…大和田獏/草刈初…加茂さくら/草刈達夫…太川陽介/岡島乃梨子…山村紅葉/坂巻平太郎…丹古母鬼馬二/野川公江…鷲尾真知子/中山和夫…竹本孝之/野川ユキ…今井恵理/小笠原菊子…大竹一重 ほか

…ドラマの感想
原作の雰囲気を匂わせつつ、原作にはない登場人物を登場させたり、犯人もオリジナルにするなど、かなりアレンジが加えられている




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