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矢野顕子感謝祭。グランドフィナーレ!!


 うれしかったです。
 でも、感謝されっぱなし‥‥っていうのも、ね?
 わたしからも、感謝したい。うん、感謝しよう。
 なにがいいかな?
 ‥‥そうだ、曲、つくろうか?!」

どえっ。
と、妙な声が出てしまったのは、
矢野さんいや矢野様に曲をつくっていたただだだくなんて
そそそそそんなそんなそんな、おそれ多くて。
いいんでしょうか。

「もちろん、いいですとも。
 待っててね。NYに帰って、つくるから。
 できあがったら、送ります」

あああああありがとうございます!

そうしてしばらくしたのち、
矢野さんの東京のオフィスのかたから
連絡をいただきました。

「NYから、小包みと、ファクスが届きました」

と。おお、小包み。ファクス。
明るいビルから、目黒川に近いオフィスへと伺い、
それを受け取りました。



ありがとうございますありがとうございます。
小包みをあけると10本のMD。
ファクスで届いていたのは、手書きの楽譜でした。

10本のMDは、矢野さんがNYの自宅で録音した
「ひとり、1本」ずつのもの。
ダビングではなく、1本ずつ、
録音したそうなのです。
MDには「○○○○さま」という手書きの文字と、
かわいい切手が貼ってありました。
矢野さんは、切手を集めるのがすきで、
こうしてプレゼントをするときに
その人のイメージに合った切手を
貼ってくださるんだそうです。
いま風というならCD-Rなのでしょうが
矢野さんが好きなメディアということで、
MDになりました。

世界に1本ずつしかないMD。
そして、その楽譜(こちらはコピー)。
うわぁ‥‥。
これは真夏だけれどサンタクロースになって
みなさんのところに、届けなくちゃ。

そうして足を運んだ記録を、きょう、御紹介して、
この特集のフィナーレとしたいと思います。


◆◆◆槇原敬之さん◆◆◆

(コンサートリハーサルのスタジオで、
 空き時間にお届けしました。
 MDの聴ける機材がなく、
 ポータブルMDに顔をくっつけるようにして
 聴いたあと──)



「人のことを考えて生きるのって、
 むずかしいことですよね。

 あ、いや、とつぜんごめんなさい。
 僕、落ち込んでいるわけじゃないです。
 きょう、たまたま、いろんなことを考えながら
 このスタジオに来たものだから。

 ありがとうございます。すごく、うれしいです。

 こんなたいしたことない僕に矢野さんはどうして
 ここまでしてくれるのかな?
 僕、ここまでしてもらえるような
 人間じゃないのに。

 音楽家が、誰かのためにうたをつくって、歌う。
 うたを、個人的に、プレゼントする。
 僕も、みんなに聞いてもらえるように
 音楽をつくっていますけれど、
 これ、「できない」ことだったんです。
 ともだちの誕生日なんかに
 うたをプレゼントしたら喜ばれるよ、って
 言われたことがあるんですけど、
 でも、どうしても、できなくて。

 かっこわるいことなんじゃないか。
 傲慢に思われるんじゃないか。
 いらないって言われちゃうんじゃないか。

 でも、きょう、矢野さんにうたをもらって
 やっぱり、すごく、嬉しかった。

 ‥‥泣けてきちゃいました。

 (ぽろぽろと泣きながら)
 「なんでもできちゃう気分」になることって、
 ほんとに、たまに、あるでしょう?
 でも、それ、だめですよね。
 ちゃんとできていないものを、人に見せたり、
 聞かせたりしちゃ、だめなんですよね。
 でも、「ちゃんとできたもの」
 「本気でつくったもの」だったら、
 こうして、誰かのためだけにでも
 つくって、あげても、いいんですよね。

 きょうはね、矢野さんから、
 うたをもらっただけじゃなくて、
 何か大きな「答え」をもらった気がします。

 僕も、これから、ちゃんとできたものだけを
 みんなの前に、出していくことにします。

 矢野さん、ありがとうございました」



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