ヤ ン パ の ク ニ ャ ン に ょ

ソウルは寒かった。



可楽洞市場に韓国に初めて来た旅行客がふらりと訪れる偶然はいったい何パーセントだろう?
おそらく誰もいまい。しかも厳寒の1月である。

その身の毛もよだつような寒さの中、市場の導入部、なんというかエントランスとは違う参道のようなスペースに、数人の老人がどこで用意したのか「小さな魚」を並べて行き交う人々に声をかけている。

もちろんその意味も知らない私にも韓国語で呼びかけてくる。

写真は撮れない。
カメラを向けることはできない。

この国はいったいなんだろう。この寒さの中、なぜちびた魚を売るのだろう。
「ばあちゃん!魚コチコチに凍ってるじゃん」
心の中でつぶやきながら次第にこの国に魅かれていく自分に、ハテナマークが点滅していた。
焼肉喰いにきただけなのになあ。

夜、合流したMさんと私はとりあえず“チャジャンミョン”と“タンメン”を食べ、いずれもそのアンバランスさにノックアウトされ、さらに合成焼酎(ソジュ)をあおり明洞の人込みを「バカ面したニッポンのおっさん」と化してふらふら歩いていた。

「チグム ミョッシエヨ?」←たぶん^^

今だったら普通に答えられる韓国語に一瞬たじろぐ私。
大学生と称する日本語勉強中のニセ学生ふたりとの出会いだった。

韓流の起爆剤になった「シュリ」が韓国で公開される一月前のことである。


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