むかしむかし、お父さんが冗談で、とても素直な男の子に言いました。
「お金をやるから、それで宝物を乗せた宝船を買ってきてくれないか?」
いくらなんでも、そんな物を買えるはずがありません。
でも、男の子は、
「はい。では買ってきます」
と、わずかなお金をもらって、家を飛び出して行ったのです。
男の子は町へ行くと宝船を売っているお店を探しましたが、どこにも宝船は売っていません。
そこで男の子は人形を売っているお店に入ると、お店にいたおばあさんに尋ねました。
「おばあさん、ぼくは宝船を買いに来たのですが、どこにも売っていないのです。どこに売っているか、知りませんか?」
「おや、宝船をかい? それは大した買い物だね。それで、お金は持っているのかい?」
「はい、これだけあります」
男の子はそう言って、お父さんにもらったお金を見せました。
するとおばあさんは、困った顔をして言いました。
「それじゃ、宝船なんて無理だよ。この店じゃあ、この起き上がりこぼししか買えないね」
「では、それを下さい」
こうして男の子は、もらったお金で、おきあがりこぼしを二つ買いました。
そして男の子が町を出てしばらく行くと青い原っぱがあって、ヒューヒューと涼しい風が吹いていました。
するとふところから、二つのおきあがりこぼしが飛び出して、
「ここは、気持ちの良いところじゃ。ひとつ相撲でもとるか」
と、二つのおきあがりこぼしが、相撲をはじめたのです。
「不思議な人形だな。よし、これでお金もうけをしよう」
そこで男の子はおきあがりこぼしをふところにしまうと、この村の長者のところへ行きました。
「長者さん、明日おもしろいものを見せますから、村の人たちを集めてください」
「なに? おもしろいものだって?」
「はい、この土で出来た人形に、相撲をとらせます」
男の子は、ふところから二つのおきあがりこぼしを取り出しました。
「なるほど、それはおもしろそうだ。でも、どうやって相撲をとらせるのだ?」
「それは、明日のお楽しみです」
そう言われると、長者は人形の相撲が見たくてたまりません。
「よし、わかった」
そこで長者は、広い庭のまん中に小さな土俵をつくり、
《人形の相撲を行うので、見たい者は見物料に、お金か品物を持ってくるように》
と、書いた立て札を立てたのです。
するとそれがうわさになり、次の日の朝には、大勢の村人たちがお金や品物を持って集まりました。
長者の作った小さな土俵の上には、おきあがりこぼしが二つ、ちょこんとのっています。
「あの相撲が、相撲をとるというのか?」
「まさか、人形が相撲をとるなんて」
「でも、もしかすると」
みんなが話し合っていると、男の子が大きな声で言いました。
「東、おきの山。西、こぼし川。見合って、見合って、はっけよい!」
そのとたん、二つのおきあがりこぼしが動き出して、押し合いをはじめたのです。
どちらも強くて、なかなか勝負がつきません。
「いいぞ、いいぞ」
「どっちも、負けるな!」
村人たちは大喜びで、持って来たお金や品物をどんどん投げてくれました。
おかげでたちまち、宝の山が出来てしまいました。
長者も大喜びで、男の子に宝の山を積む舟をつくってくれました。
こうして男の子は、ついに宝船を手に入れたのです。
そして家で待っていたお父さんも、男の子が本当に宝船を買ってきて大喜びです。
おかげで男の子の家族は、村一番のお金持ちになりました。
なんだ、あれが僕たちのさがしている青い鳥なんだ。僕たちは、
ずいぶん遠くまでさがしにいったけど、ほんとうはいつもここにいたんだ。
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