JUCOU　ＧＡＬＬＥＲＹ

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2008/10/10

高野卯港という画家が死んだ。

(4)

カテゴリ：Ｂｌｏｇ　　

何年か前、ある神戸の画廊の企画展で、１人の絵描きと一緒になった。
元郵便局員だったというその男は、確かに絵描きであった。
展覧会の間、折に触れては近くの飲み屋に行った。
その絵描きは絵を描くことと、酒を飲むことだけしかないように思えた。
その頃彼は目があまり見えなくなってきたので、知り合いに相談したのだといった。
知り合いは太陽をじっと見ていれば治るといったそうで、彼は毎日太陽を見ていたそうだ。
すると、当然のことだが、日に日に間が悪くなっていったという。
或る日、思い余って病院に行ったら「緑内障だ」と告げらた。医者から太陽を直接見るなんてことは自殺するようなものだと。
何処までも純粋な人だった。

彼の通夜に言った。

奥様と親族が３～４人、参列者が７～８人。
絵描きは僕と、Ｔ君ともう１人。

Ｔ君は余りにも寂しいから、「僕たちだけで彼の好きだった酒を飲んで弔ってやろう」と言い出す。ならばと元町に出て僕の行きつけの立ち飲みで飲んだ。
小さなグラスに卯港さんの酒をついで、それをはさんでぼくらは飲んだ。

高野卯港。５９歳だった。

Ｔ君はしみじみと言う。「彼のように山ほどの絵を描かなきゃ、死んだときにはずかしい」と。「そうだそうだ」と口では言ってみた物の、死んだ後なんかどうなろうとかまやしない。
絵を描いて絵描きなどとうそぶいている恥ずかしさに比べれば。

卯港さんは本物の絵描きだった。
ほんの短い間でも知り合えて、酒を飲んで。

もうすぐ大阪の画廊で卯港さんの個展が始まる。
彼は死ぬ間際まで個展の絵を描いていたのだろう。
くしくもその個展が遺作展になってしまった。

卯港さん、また「金時」で一杯やりましょうよ。

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最終更新日 2008/10/10　11:37:58 PM
コメント(4) | コメントを書く

■コメント

かなしい、お話ですね(－－〆)

聖母　マリアさん

スペインの女の子、何回見ても、私には、暗い顔には見えないのですが？まぶしそうに、前をまっすぐ見ているように、見えるのですが？？？絵って見る人によって違うものですね(*^_^*)　　確実に暗さがなくなってるように感じられますよ(*^_^*)　色だけではなくてね、心に光が少し差し込んだそんな、感じに私には見えます。今までと少し違ったような。 (2008/10/11　01:32:23 PM)

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Re:高野卯港という画家が死んだ。(10/10)

サフランさん

長生きして、美しい絵を描いて下さい☆
明るい絵も、暗い絵も
悲しくても、孤独でも美しい絵を。
いくら描いても、心の隙間は埋まらないのですね。 (2008/10/11　07:24:24 PM)

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Re:高野卯港という画家が死んだ。(10/10)

http://gfnet.cool.ne.jp/ohkura/ さん

お葬式の知らせは当日の朝でした。総持寺からはとても間に合わなかった。思えば長い付き合いでした。若いころ何人か貧乏画家が集まって、中央公会堂でデッサン会をしていた。83年にはグループ展もした。つかず離れず、ひとのいい友人でした。グループの一人をよく助けていた。郵便のしごとを世話したりして。その方も数年前に肝炎でなくなってしまった。震災のとき、高野氏の友人とつぶれた西宮のアトリエの片付けに行ったら、気前よく油彩画を近所の人や私達にも２点づつくれた。押入れにそのままあった。この前川端の帰り飲みに行ったのが最後だった。友人も同じＡＴＬで亡くなっている。早くてこのウイルスに手を打って欲しい。もう会えないのかと思うと、遺作展にに行くのも気が重い。本当にやさしい人でした。さようなら。 (2008/10/21　02:08:27 AM)

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Re:高野卯港という画家が死んだ。(10/10)

大倉いづみさん

19歳の頃何なんかで、中之島公会堂でデッサンしてた、本当に良く飲む方だった。結婚式も飲んだ。震災に何人かで片付けたのでお礼に数枚絵をもらった、まさかあんな亡くなり方するなんて、奥さんとはたまに話するけど (2020/05/28　01:56:52 AM)

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