風光る 脳腫瘍闘病記

抗がん剤


「サインした?」

「ううん、まだ・・。」

私は前日に同意書を渡されていたが、まだサイン出来ずにいた。

「どうする?止めとく?」と言う言葉に一瞬心を奪われそうになったが一度はやるって決めたんだもの、ここまできたらヤルしかない!そう思って私は先生の前で同意書にサインをした。

「OK じゃあ、今から準備してくるね」と先生は病室を後にした。

はぁ~緊張する。初めての経験だもんなぁ・・・副作用もあんまり無ければいいけど・・。しばらくして先生が戻ってきた。

「お待たせ~」手には透明の液体が入ったペットボトルみたいなモノが握られていた。

「それが抗がん剤?」

「ううん、これは世界最強の吐き気止め。これを先に点滴で落して、しばらくしてから抗がん剤入れるから」そんな最強の吐き気止めがあるんなら放射線の時やってもらいたかったよ。と、心の中で呟いた。

点滴は左手にしてもらいたかったがうまくいかず、利き手の右手にする事になった。
吐き気止めの点滴を落とし始めて1時間、今度は小さな注射器を持ってきた。見た目はやはり透明の液体である。

「じゃ~ん、これが例のアレです」
「へぇ~コレが?」見た目はたいした事ない。けどスゴイ毒なんだよなぁ・・。

「じゃあいくね」と先生は点滴のチューブに抗がん剤をゆっくり注入した。

放射線治療の時間になったので私は点滴スタンドを両手で支えて看護助手さんに車イスを押してもらった。手の甲に点滴の針が刺さってる為、右手を動かすたびにソコがうずいて痛くなる。

「世界最強の吐き気止め」のおかげで思ったより気持ち悪くなる事はなかった。な~んだ、全然大した事ないじゃん。あんだけ悩んで損した。

などど思っていたが翌日の血液検査で白血球の数が3000から1200まで一気に減ってしまっていた。

「オッス」PTのO先生だ。「点滴取れたんだね」
「うん。さっき取ってもらった。リハビリ何時から?」

「採血したでしょ?白血球いくつだった?」
「1200」
「1200かぁ・・・微妙だな」

「リハビリしちゃ駄目なの?」
「免疫力落ちてるからね」

「え~、リハビリしたい。唯一の楽しみなのに・・・」私は先生に頼みこんだ。

「お願い!」でも先生は首を縦には振ってはくれなかった。
「え~~~~~~~~~~~~~~~~マジで?」すがる様な目で見た。

「じゃあ、担当の先生に聞いて、それでOKがでたらいいよ。俺の一存では決められないから」

「ちょっと待ってよぉ~担当の先生いない。手術室なんだけど」

「じゃあ、駄目」そんなぁ~・・。私は他の研修医を捕まえて聞いた。
「だったら、K先生に聞いてみますよ」と、電話で聞いてくれた。

答えは「マスク着用してならいい」との事。ラッキー、これで堂々とリハビリが出来る。

私は、うれしかった。


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