風光る 脳腫瘍闘病記

100ページ



「1000以上ありますように・・」PTから「1000以下だったらリハビリ無しね」と言われていたので祈る様な気持ちで結果を聞きにいった。

ナースステーションにPTのO先生の姿が見えた。

向こうもこっちに気が付いたらしい。先生は右手の親指を立ててそのまま私の方に思いっきり突き出してきた。

「えっ?それってまさか・・・」先生は野球の審判さながら

「アウト~ッ」と言ってきた。

「マジで?いくつだったの?」
「800」「でも後で足は動かしにいくから」

私はガックリうなだれた。「800って・・」←白血球の平均は大体7000ぐらい。

私は病棟出歩き禁止令が出された。ベット周りのカーテンも閉められマスク
着用が義務づけされ、使い捨てのマスクを箱いっぱいにもらった。

「マスクは2~3時間ごとに取り替えてね。あと、うがいと手の消毒はこまめにやってね」とうがい薬と消毒液も支給された。

放射線科の受診があって白血球の数値を見た先生は

「800かぁ・・まだ大丈夫かな?一応白血球増やす注射があるけど放射線当てると白血球の子供はみんな死んじゃうから意味ないんだよね。とりあえず治療は毎日しないと意味が無いから今日は照射やっとこう」

「明日また採血するでしょ?その結果を見て、また考えよっか」

PTが足を動かしに来てくれた。ちょうどその時、今日、担当の看護婦さんが来て先生を見てちょっと怒りモードで

「駄目ですよ~愛さん、今800しかないんですから先生もちゃんとマスクして下さい!」私は思わず笑ってしまった。先生がマスクを取りに行こうとしたので「ソコにあるよ」と箱いっぱいのマスクを指さした。

「ある意味、あの看護婦さんはプロだよね」先生は苦笑いした。

「先生、何もする事なくて退屈なんだけど」

「可哀相に」と言いながら先生の顔はニヤニヤしている。「じゃあ暇つぶしに本持ってきてあげようか?」

「ホント?読みた~い!」私は先生がどんな本を読んでいるのか興味があった。翌日、先生はホントに本を持ってきてくれた。著者は京極夏彦と書いてある。タイトルは「姑獲鳥の夏」

げっ、難しいそうな本。読みたいって言ってしまった事をちょっと後悔した。「へぇ~面白そう」心にも無い事を言ってしまった。

「とりあえず100ページ」先生は謎の言葉を残して部屋を後にした。

「100ページ?」
私は恐る恐るページをめくっていった。


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