第12話

・CHAPTER-12「吼えて発進!熱血小隊」

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夏休みもあと一週間・・

・・ろくな想い出がないような気がしていたその日も、僕は朝早く起きて7時からのニュース番組を見ていた


「・・こちらは自衛隊のデモンストレーションが行われている横浜基地の様子です」


・・なんだ、珍しいなぁ・・自衛隊の情報なんか一番最初にやるなんて・・


「ご覧になれますでしょうか?・・これが自衛隊が対未確認生物用に開発した最新鋭戦闘モジュール・・」

「・・戦闘モジュール・・」


新聞のテレビ覧を確認していた目を、ちらっ・・とそっちに向けてみる

自衛隊基地の様子が映り・・その中にそびえ立つ、二機の姿を確かに僕は確認した


「あ・・・・あ・・・ ああああああああああああああ!?


・・そびえ立つ姿・・モジュールと呼ばれていたそれは、紛れもないアリスの姿だった

ダークグレーとハイフラットな細いライン、そして頭頂部に取り付けられているソーラーパネル・・

見た目は多少違うものの、結局体型はアリスそのものだった

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「・・父様がね。」

「・・・・そうなの?」


電話の向こうで、景はため息混じりに語った

景の父さんである舞人さんが、自衛隊に技術提供したという事らしい

・・そもそもアリスのメインフレームとなった「オリジン」を作ったのは舞人さん。

なら・・ああいう感じになってもおかしくはないよね・・


「自衛隊専用特殊二足歩行車両「AEGS「エイジス」・・「横浜・は-7779・AEGS一号機「テムジン」・・それに「横浜・は-7783・AEGS二号機「フューネラル」・・だそうよ」

「・・どうするの、景?」

「何が?」

「自衛隊が何とかしてくれるならさ、僕達戦わなくて・・・」

「・・・・潰すわよ」

「・・え?」

「・・叩きつぶしてやるわよ・・・アリスの性能も知らないくせにエイジスだぁ?・・・生意気生意気生意気ィ!!!」

「ひ、景・・・!?」

「・・・ゴメン、しばらくそっとしといて。」


・・がちゃっ・・・


言われた通り、しばらくそっとしとく事にした。

・・なんか・・・大変な事が起きちゃったなぁ・・・

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・・「自衛隊」・・

国外派遣とか何とかも色々あったけれど、ようやく本来の目的に戻っている組織

現在では自衛隊の存在目的には災害救助等も盛り込まれ、平和的な生活を守るための防衛組織として活躍していた

・・あくまでも、そーいう事に使われるのは装甲車などの比較的軽い装備であったが・・

今回「異形」の出現を受けて極秘裏に、悪党退治をしていた天導寺舞人と接触

素体「オリジン」の提供と景からの情報を受けて(正しくは景が舞人に送ったメールの情報)エイジスを開発した

だが・・・あくまでエイジスを開発したのは自衛隊上層部の、ろくな技術もない隊である


・・後は、その使えるか使えないかもわからない機体を運用する隊のメンバーにかかっていた

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陸上自衛隊横浜基地・・


エイジスのお披露目終え、その運用を任された機動第1小隊は、移動の準備に取りかかっていた

そのメンバーはたかが10名・・

パイロット2名、指揮官1名、通信兵1名、整備班6名

彼らが、東京の異形騒ぎに対抗するための試験部隊でもあった


「神楽少尉!・・・おい、神楽!・・ かぐらぁぁぁ!!!

「だぁぁぁぁっ!はいはいはい!!大尉!大声出さなくても聞こえてますよぉ!!」

「・・「はい」は一回!すぐに返事をせんか大バカ者!!」


・・早速不安になりそうな様子が見られた

大尉と呼ばれたのは・・30代の、やや人のよさそうな男・・しかし今はあからさまに不機嫌そうな表情をしている

神楽少尉・・慌ててやって来た20代の男は、そのぼさっとした髪をくしゃくしゃとかきながら苦笑いを浮かべている


「・・いいから遊んでないで「テムジン」の搬入準備に移れ」

「・・了解ッス」


敬礼をしつつも若者らしい軽い受け答えをして、「神楽太一」は一号機のコクピットへ向かった

すたすたと歩いていくと・・5メートル台の戦闘モジュール「エイジス」が見えてくる

・・神の盾(イージス)をもじった首都防衛兵器ねぇ・・なんか、俺好きになれそうもないなぁ・・

普通の感覚で見ればこの機体を「かわいい」とか「格好いい」とはお世辞にも思えないだろう

・・それは同型機「アリス」を溺愛している景の感覚が疑われているという意味でもある(汗)


搬送用トラックにワイヤーで固定されている一号機、二号機はそれぞれ整備班が最終チェックを行っている最中

・・その作業を傍らで見ていた、もう一人のパイロットに太一は声をかけた


「瑞季、改めてどう思う?」

「・・たった3日のシミュレーションと出来たてホヤホヤの即席兵器でどうなるものかしら・・」

「・・お前ならそう言うと思ったよ」


太一は苦笑いしながら賛同して、頷いた

早月野瑞季(みずき)は二号機、フューネラルのパイロットである


「私の機体は趣味にあってるからいいけどさ、あんたはどうなの?太一・・」

「・・ロボットで格闘戦ははっきり言って夢だったけどよ、まさかこんなカービィみたいな機体が来るとは・・さ」

「・・ふぅん・・・ま、あんたらしいよね」


瑞季はにこ・・と笑って、ようやくフューネラルの搬出作業を手伝い始めた

太一もしばらくつられて笑っていたが、自分もテムジンの搬出作業を開始した

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ようやく移動を開始した第二小隊一行

エイジス二機は専用のトレーラーに搭載され、一路新宿を目指していた

その車内で、太一と瑞季はそれぞれの機体のシステムを立ち上げていた

一号機テムジンには整備班長・松井亮二が

二号機フューネラルには通信士の東海林澪がオペレートを担当していた

一号機コクピット内部、太一はとりあえずプログラムをインストールしていく

画面に現れたのは「GUNDAM」の文字列・・

(そういえばこれは天導寺製OSか・・・(汗)


しばらく初期画面を操作するうち、決定的にシミュレーションと違う事を発見する


「・・なぁ松ジイよぉー!!こいつの武装はどこについてるんだい!?」

「タイっちゃん~!すまねぇが武装が到着するのは9月だ!!」

「9月ぅ!?」


愛称で呼ぶほどこの隊は軽いノリである(隊長の平戸研介氏を除く)

50過ぎの渋い中年整備班長、松井亮二は松ジイの愛称で呼ばれている


「9月って・・いつ頃?」

「・・さぁな・メーカーからは9月中旬と書いてあるメモしか来てないからな」

「・・中旬って・・プラモの新製品じゃねーんだしさぁー?」

「しょうがないだろ、お役所仕事なんだよ・・その辺はさ」

「・・ンなモンかねぇ・・・」


太一は口をとがらせ、不機嫌な様子で一号機の作業を再開した

まだ生まれたての機体である、関節がどう動くか、基本プログラムを把握しておかないと実戦で苦労することになるだろう


「・・まぁ、俺元々戦車に乗りたくて志願したんだし・・・それがロボットになったんだから喜ぶトコだよな」


太一もまた、ロボット好きの世代であった

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そのころ・・


「はぁ・・・」


俺は明、改都と一緒に東京タワーの特別展望台にいた

気晴らしに来たのだが土産物屋で偶然、アイドルのピンナップを見つけて・・・

その中にはもちろん、人気急沸中のあの娘もいるわけで・・


「・・忍殿、どうなされたのであろうか?」

「心配ないよ、多分悩み事でもあるんでしょ」


・・悩み事のなさそうな二人が後ろでどうこう言っているが・・

俺は、それなりに真面目に悩んでいた


・・すばるちゃん・・・・・


「逃げたぞ!追え!!」


・・あ?


「・・はっ・・はっ・・あ、きゃぁっっ!?」

「おっと・・」


前を見ないで走ってきたのは・・小さな女の子


「すばるちゃん」

「はい・・?」


思わず普通に話しかけてしまったが・・相手はなんと、またまたすばるちゃんだった

・・そして、前回同様また追いかけてくる男が、今度は数人・・


「忍、僕らに任せて」

「左様、私と明殿が足止めいたそう!」

「・・すまん!」


・・とは言ったもののここは展望台・・


ぐるり回ってエレベーターに駆け込むくらいしか、手がなかった

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「大丈夫・・すばるちゃん?」

「は、はい・・まさかまた忍さん達に助けられるなんて・・」


緊急時にもかかわらず、顔が赤く声がうわずっている


「・・あの・・今度はあんなにいっぱい人がいましたけど・・たった二人で大丈夫なんですか?」

「まぁ言ってみれば次元と五右衛門だからさ・・大丈夫、あの二人は無敵だよ」


・・なんだかんだ言って、俺もかなり照れ笑いを浮かべていた

まーいざとなれば、俺だって十分戦えるしな

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俺たちが下に向かっていたそのとき、改都達は展望台の「外」に出ていた

・・よもすれば足を踏み外し百数十メートル下に真っ逆さまだ

そんな危ないところで・・


ぱんっ!

・・かきぃぃん!!



銃撃と剣舞・・・それこそバカノリ刑事ドラマみたいな展開になっていた


「明殿!」

「・・しょうがないね!」


明は背中に背負っていた秘密兵器(いつ背負ったか不明)を両手に構えた

アサルトマシンガン×2・・


がががががっっ!!!


※先に言っておくがあくまでもエアガン(改造)である


「あはははははははははははっ!!!みんなバラバラになっちまえー!!あははは!!!」

「あ、明殿・・・??」


マシンガンを乱射している明は我を忘れ、敵が倒れ全滅した後もしばらく撃つのをやめることはなかった・・。

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・・俺達はそれから、新宿の街を歩いていた

すばるちゃんはカラフルな眼鏡にベレー帽、服装も青系色で統一し、それなりに変装している

・・派手さが欠ければ結構バレにくいもんだ、アイドルなんて(笑)


ところで・・こうして歩いていると、俺たちも「そういうふうに」見えるんだろうか?

・・いや、いいトコで兄妹くらいが妥当だな・・・


「さっきの連中・・この前の拳銃男といい、一体何ですばるちゃんを?」

「・・わ、わかりませんけど・・KGBがどうとか、北の社会主義国のためにどうとか・・」

「・・・・拉致目的か・・なぁ?」


チェスの敵らしき組織名と、某独裁国家の名前で俺はなんかよくわからん事に巻き込まれているのかもな・・と感じた

・・にしたって、アイドル狙って良い事あるのか?

・・だったら技術者とかそーいう線狙わないか?


ま、そんな謎は今は・・どうでもよかった。


「仕事は何時くらいから?」

「次は7時くらいです」

「それじゃ・・もう少し遊んでいく?」

「はい・・」


BGM:ローマの休日メインテーマ

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・・一方、自衛隊の太一達は、新宿都庁に到着していた


「陸上自衛隊第一機動小隊、到着いたしました」

「ご苦労さん・・大変だねぇ、平戸くんも」

「いえ・・上官である以上は、あの問題メンバーを引っ張らなくてはいけませんから」

「・・またどこかで飲もう、「そのとき」は」


平戸隊長と都庁の担当者はそんな会話をしてそれぞれ戻っていった


「ウォーミングアップだ、作業に移れ」

「作業って・・これがロボットにやらせる仕事ッスか平戸さん~!!」

「隊長と呼ばんかバカ者!!さっさと機体を起動させろ!!」

「りょ、了解・・隊長殿。」

「エイジス2号機フューネラル、ウェイク」

「っとキーを回して・・・エイジス1号機テムジン、ウェイク」


音声認識とキーエンジン操作で、いかにも「バッテリーで動いています」を誇張するかのようにモーター音がうなる


・・がしゃん・・・がっしゃん・・・


割とカタめのサスペンションが音をたて、オリジンのバランスの良さを活かした軽やかな歩行を披露する


「・・シミュレーションほど揺れないなぁ」

「太一、いいから荷物運び」

「・・へいへい」


そうしている間にも道の向こうでは、どこからか嗅ぎつけてきたマスコミがカメラを忙しく回している

騒がしいのも気にせず、テムジンとフューネラルはひたすら段ボールと木箱を運ぶのに奔走していた


「・・それにしても俺たちさぁ、正体もわからない敵と戦わされるんだよな?」

「しょうがないわよ、情報不足なんだから・・例の「怪物を倒した謎の一団」も正体不明なんだし」


・・5mのロボットと2mの装甲を着込んだ騎士のような出で立ちの二人、幕張と行き違えたのか魔法少女のコスプレが一人

・・しかし、確かにその妙な取り合わせの一団が自衛隊すら苦戦した相手を消し去ってしまったのだ


・・新聞もこれを取り上げ、やはり、事態は大事になりつつある

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「・・・待てぇ少年!!!」

「待てと言われて待つ阿呆ではござらぬぞ!!」

「結構楽しいね、追いかけっこも」


改都達は東京タワー展望台から降りた時点で、外で待ち構えていたいつもの警察官達からの逃走劇を繰り広げる事になった


「・・何でしょうか、あのサイレンの音・・」

「さぁ・・」


その追跡劇の音を遠くに聞きながら、ある建物から出てきた武と数騎は伸びを一つする


「・・映画って、やっぱ2時間前後が丁度いいくらいだよな」

「長くても座ってて疲れるだけですからねェ」


「・・しっかし微妙な内容の映画だったなぁ・・「ゴジラvsデストロイヤー」って・・」

説明しよう

ゴジラvsデストロイヤー・・つまりまぁ、ゴジラが某プロ選手と戦うという趣旨不明の映画である


「・・元はと言えばルインさんが福引で当てたのくれたワケですし・・」

「あいつ、運だけいいからなぁ」

「普段のドジの分、ツケで戻ってきてるんですかねぇ・・・もしかして?」


普段のルインは何もない所で転ぶ、何もない所で滑る、何もない所でぶつかる(?)

・・しかし、クジとヤマ感だけははずれた試しがないのだ


「今度競馬予想でもしてもらおうか」

「僕ら中学生でしょ」


武達は関係ない所で、とても平和だった。

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すばるちゃんと新宿を歩く事一時間・・

・・ヤバい事態に、俺は遭遇していた


「・・・せめて裕司か景でもいれば・・・」


突然の不意打ちで、俺は左腕の自由を奪われていた

・・折れてはいないが、しばらくまともに動かせそうもない・・


「・・やむを得ねぇよな!!」

「きゃっ・・!?」


すばるちゃんを連れて、霧の外・・繁華街に近い道路へ出る


・・ぉぉぉ・・・・


うなりのような音を立て、その異形も霧の中から姿を現した


・・でかい・・・


今までになくでかい、それはもう10メートルくらいはありそうな・・


「走って!」

「は、はい!!」


・・そのとき・・


数メートル先の地面が、突然開いた

・・いや、よく見れば道の真ん中に、「32」という番号のゲートが設置されていた


勢いよく空に飛び出した5メートルの影が、軽いサスペンションの音とともに俺達の前に降りたった


「景!!お前どうしてこんなに早く・・!?」

『・・ふっ・・』


なんだ?・・男の声・・・?・・それにこいつ、アリスじゃない!?


・・と驚いていたら、突然辺りが暗くなり、スポットライトがついた(そんなバカな)


『赤い天印正義の印!この世に正義を示すため・・!』


突然始まった外部スピーカーの名乗り台詞・・俺とすばるちゃんは呆気にとられながら聞く


『悪を滅ぼす正義の光!ダイテンドウここに見参っ!!』

「だ・・だいてんどー!?」

「行くぞ、そこのあからさまな怪物!!」


アリスそっくりのダイテンドウは、走りながら拳を繰り出し、次々と連続技を決めていく

パンチ、ショルダータックル、キック・・はこいつの体型じゃできない。


しばらくすると、最近はヤツらの定番になってきたレーザーが放たれた

しかし、ダイテンドウの装甲に当たるや否や蒸発したように拡散してしまう


「・・ってレーザー弾いた!?」

「・・・・そうかぁ・・あれは拡散放熱装甲に鏡面効果を上手く利用した複合装甲・・」

「す、すばるちゃん・・?」

「え?あ、な、なんでもないです!!」


・・確かに今、あれを見て難しい事言っていた気がしたけど?

・・それは今はいいか、とにかくダイテンドウがあいつにとどめを刺そうとしている

ヤツの右手にドリルが装着された


『スパァァァイラルゥ・エェェェェェンドォッ!!』


高速回転するドリルは異形の腹を突き抜け・・途中でさらに加速したドリルの遠心粉砕力とで異形を文字通り粉々にしてしまった


ダイテンドウは異形を撃破したことを確認するように、ドリルを剣のように振るい、モノアイを輝かせた


「・・コクピットが」


開いて、中からパイロットが降りてくる


「大丈夫だったかい、そこの君たち?」

「あ、ああ・・・大丈夫だけど」


・・そいつは見たところ20代、カウボーイかと見間違うような時代錯誤の服装で、背中にはギターまで背負っていた(汗)


「俺は天導寺舞人・・・まぁ、「嵐を呼ぶ正義社長」か「嵐を呼ぶ熱血正義兄ィ」とでも呼んでくれ」


ふっ・・とキザっちぃ笑いを浮かべる舞人・・・

・・舞人?


「・・あ・・あんた景の親父さん!?」

「おー、なんだ君は娘の彼氏かい?・・俺としてはもう少し身なりに気をつかう男の方が好みなんだが・・」

「違うって(素)・・・・そうじゃなくて、旅に出たって聞いたけどどうしてこんなトコにいるんスか?」

「ふむ、それは確かに説明せねばなるまい・・しかしここでは何だ、ウチに寄るといいよ」

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「・・というワケで俺は久しぶりに我が最愛の人に会うために帰ってきたんだ」

「サリーさんに会いに・・ですか」

「まぁ・・舞人さんたらそんな・・」

「サリー・・俺はいつでも君だけの「正義の味方」だよ・・」


・・なんだ、この甘々な雰囲気は・・・・


いつもぼーっとしてるサリーさんが、よけいぼーっとしている

それこそ舞人さん、サリーさんの間だけ別な空気が漂っているようにすら見えた


「・・お邪魔しちゃ悪いし・・俺たち、帰ります」

「え、ええ・・」


結局連れてこられたすばるちゃんも、俺と一緒にそそくさと天導寺邸を後にした


「・・いいなぁ」

「・・何が?」

「私もいつか、あんな風に・・」

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「み・・見てしまいましたよぉ・・!」


その忍達の少し後方・・ゴミ置き場の影で、雫が心臓を押さえていた


・・まさか・・まさか忍くんにおつきあいしている人がいたなんて・・

しかも・・その相手が・・相手が・・・・


「・・忍くん・・あなたは「ロリコン」だったんですねェ・・☆」


にやぁ・・と不気味に笑う雫

・・ところでどうして、その少女が白銀すばるであるという事実には気がつかなかったようである

普段なら雫の存在にも気がつきそうなものなのだが、今の彼にはそんな余裕はない(笑)

・・事態は忍自身の知らない所で、急展開を迎えようとしていた

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「よーし、終わりィ!!」

「お疲れ・・太一」


瑞季は2号機を所定のハンガーに固定すると、ドックからすでに暗くなり始めた空の下に出た


・・携帯電話を操作し、自宅に電話をかける


「・・もしもし・・今終わったから、もうすぐ帰るわ」

『うん・・それはそうとお姉ちゃん、あのロボット大丈夫だった?』

「ええ、まぁなんとか大丈夫よ」

『じゃあ夕飯の支度して待ってるからね』

「うん・・わかったわ「明」・・。」


瑞季は携帯をしまうと、いつの間にか微笑んでいた顔をぴし、と叩いた

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多方面で様々な新展開があったワケだが・・・


「・・ふわぁぁぁ・・。」


裕司は、別に変わりなく、いつもと同じように夜を迎えていた

・・いいねぇ、平和なのって・・


呑気な考えも、そういつまでも続くものではない・・


なぜなら、もう夏休みは終わろうとしているのだ


裕司は毎年恒例の、31日宿題完徹計画を実行することになったという・・。


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