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第01話-7
少々暑い日和となった本日は、海岸にもそれなりの人々が訪れていた
暑いなら水辺へ行こう~!
・・というワケで、朝もはよからロディ達も海辺に来ていた
「夏だねェ~・・・」
「春や。」
共用に立てられているビーチパラソルの下に座り、ロディとシードは涼しい顔をしていた
シードは例の鎧を外していたが、ロディはなぜか上着を脱いだだけ
黒いシャツなど着ていたら、わざわざ海岸にいる意味ないと思うが・・
海の方には、水際ではしゃぐメイとセラの姿
シュウは相変わらず事務所の地下室にこもったままで、ネスは誰もいないのでのんびり「コレクション」の整理をしていた
(コレクションの内容に関しては彼のキャラ紹介を参照のこと。)
「ふぇっ!?」
ばしゃっ・・
いい水音がして、メイがコケるのが見えた
「大丈夫・・お姉ちゃん・・?」
セラに助けてもらって起きるメイ
失敗失敗・・と照れ笑いを浮かべている
「・・・・・・」
ロディはなんとなく、笑みを浮かべていた
そういえば暇はあっても、こういう風に使う時間はそうなかったような気がする
・・平和だな・・
少なくとも似合わない言葉をつぶやいて、ロディは横になる
春、とシードの突っ込みは飛んだものの、もう夏はすぐそこにあるようだ
異常環境の中では何がどう転んでもおかしくはない
・・もしかしたら、セルムラントに四季があるのは今年一杯・・という事も十分にあり得るのだから
だが・・今はどうでもいい事だと、ロディは考えている。
ロディはメイ、セラ、周りの人々の声が段々と遠のいていくのを聞いていた
横になった彼が完全に眠りにつくのは、あっという間だった
##########################################
ばしゃっ!!
「うわっぷっ!?」
突然顔に押し寄せた波に、ロディは飛び起きた
「な、なんだなんだっ!?もう満ち潮になっちまったってのかよ!?」
・・満ち潮と言っても月の満ち欠けによるものではなく、セルムラント周辺諸国の急激な気圧変化が異常の原因である
突然潮が引いたかと思えばまた満ちてくる・・時折発生する妙な現象だった
「うへー・・・びしょ濡れじゃんかぁ・・・・」
慌てながら辺りを見回すと、セラ、メイの姿がない。
・・どこかに行くなら起こしていってくれよ・・
ロディがそんな事を思った時だった
ぶくぶくと、泡が海中から出ている
それはロディの寝ていた隣くらいだろうか・・
「シードっ!?」
海中に水没していたのはシードだった。
同じく眠っていた彼だが、ロディより身長がない分、水没するのはかなり早くからだったろう
「お、おいっ!!」
急いで引き上げるロディだが、シードはぐったりしている
「起きろっ!!」
どすっっ!!
「ぐぇっ・・・」
鳩尾への一発・・カエルの潰れたような声を立てて、シードがぴゅー・・と水を吹いた
・・・そんな「おバカな光景」が繰り広げられる一時間ほど前・・
ネスが遊んでいるメイ達の元にやってきた。
「メイ様ー、ちょっとお使い行ってきてもらえませんかー?」
「うん・・いいけどー?」
「私も行くよぉ。」
メイとセラはそう言われて・・近くのとある店に出かけていたのだった
とある店というのは、ロディの行きつけのガン・ショップ。
彼の相棒・・そして彼のオリジナル拳銃である「レイノス」のアフターサービスを唯一受けられる店
無茶苦茶な改造拳銃・レイノスの弾丸を作れるのは、宇宙広しと言えどあそこのおやっさんとシュウくらいなものだった
備品管理もネスの大事な仕事なのだから、しっかりやることはやる。
まして暴れ過ぎるとはいえ仕事の要であるロディの装備品、不備があってはたまらないだろう
##########################################
「・・で、メイとセラはドコまで弾買いに行ったんだ?」
「さ、さぁ・・」
時間はすでに午後六時を回っている
あれから四時間は経っているのだが・・
自己管理は曖昧なロディだが、妹達の門限には厳しく「5時には帰らないと「めー」ですよ」・・と、口調まで変わってくどくど言っていた
それが指定から一時間も遅れている時点で、ロディはそわそわと落ち着かない素振りを続けている
「あや?」
「どうした、ネス」
ネスは手首の部分にケーブルをつなぎ、シュウの机に置かれた小型のディスプレイに接続する
メールや依頼を受け取ることは彼自身のメインシステムが行っている
彼に届いたデータをディスプレイ・・事務所のコンピュータに移動することでロディ達が確認する
「メールか・・セラ達かな?」
ロディは落ち着かないまま、ネスの表示したメールを読む
「・・小娘共は預かった・・」
・・がたっ!!
そこを読むと、ロディはディスプレイに食いついていた
・・返して欲しくば貴様一人で来るがいい・・場所は・・
・・港・・第四埠頭の第・・三倉庫・・
彼はもう周りを見ていなかった
自分の机に置いてあったメガネをかけ、レイノスに弾丸を込める
「マスター・・?」
ロディは返事をしなかった。
ただ黙々と、準備を続けている
「ちょっと行ってくる。」
「えっ・・???」
「ネスはん大変やっ!!嬢はんら誘拐されたみたいやで!?」
「なんとっ!?ま、マスター・・!!」
振り返っても彼の姿はない
代わりに、勢いよく開かれたらしい扉が、ぎぃぎぃ音を立てていた
ロディは海岸線沿いに埠頭を目指した
ラディオンに乗る事は考えない、そんな暇も考えもない
彼はひたすらに、通りもまばらな夜の二車線道路を突っ走っていた
##########################################
その頃・・
メールの通り捕まっていたメイとセラは、埠頭の事務所に監禁されていた
外には見張りとおぼしき男が数人、彼女らの近くには誰もいないものの、脱出は難しいだろう
セラは難しい顔をして、先ほどの様子を思い出す
レイノスの弾丸は購入できたが・・その帰り道で怪しい数人の男にメイが拉致されてしまった
追いかけていったセラもメイを人質にとられ・・
現在に至る。
・・恐らく、ユニオン本社にも男達から連絡がいった事だろう
「すか~・・・・」
「・・・・・・」
捕まってしまった事を重く考えていたセラも、しばし顔がゆるむ
彼女の隣ではメイがすでに・・・「寝ていた」
・・こんな状況で眠れるなんて、とんでもない・・
常識人はまずこう考えるハズだ
極度の緊張状態にありながらあっさり眠れる彼女は、ある意味幸せな人間なのかもしれない・・
「大丈夫だよね、お兄ちゃん・・・」
セラが心配したのは兄の命の安否ではない、ただ単に怒りに任せて犯人達を殺しやしないかと案じただけだ
「・・人殺しは犯罪だよ・・」
9才の妹の口から出る言葉とは、とてもじゃないが思えなかった。
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