青き天体研究所

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第十六話  救出:前編



その後、男は刀を地面に置き汗を拭き始める。

「こんな時間までご苦労なことだな、ゼンガー。」

「セインか・・・。お前こそこんな時間に何のようだ。」

ゼンガーは近づいてくるセインの方を向かずに再び刀を持つ。

「色々とな・・・。それに気になってな、リュウセイがきちんとやっているか。」

「一応彼も潜入させてあるんだ。大丈夫だと思うが・・・。」

ゼンガーは見抜きもせず答え、素振りを始める。

セインはその様子に苦笑しながら空を見上げる。

(たく・・・本当に大丈夫だろうか。)

セインの考えをよそに空に浮かぶ月は輝いていた。





(何でこんな事になっているんだろうか・・・?)

リュウセイは牢屋の中で考え始める。

(そもそも俺には無理だったんだよ。単独で救出作戦なんて!!)

リュウセイは牢屋の壁を一発殴ると再び考え始める。

(今頃みんな、楽しんでいるんだろうなぁ・・・。)

リュウセイはぼやきながらもこの牢屋から脱出する方法を考えていた。

そもそも何故リュウセイが牢屋にいるのか、それは数時間前までさかのぼる。





「リュウセイ。済まないがちょっと頼みたいことがあるんだが・・・。」

クロガネがブラジルに着いた矢先にレーツェルは何処かへ行こうとするリュウセイを引き止めた。

「何でしょうか、レーツェルさん。」

「まずはこの写真を見てくれ。」

そう言ってレーツェルは2枚の写真をリュウセイに渡した。

「何ですか?この移っている女性は・・・。」

「彼女達はディパインクルセイダーズのメンバー、アヤ=コバヤシとマイ=コバヤシだ。」

「コバヤシって確か念動力だか何だかの権威を持つ人だろ。と言うことは・・・。」

「そうだ。コバヤシ博士の子供達だ。」

そう言われて、リュウセイは再び写真に移っている人物を確認する。

「君には彼女達を救出しに行って貰いたいんだ。」

「救出にですか・・・て、無理ですよ俺には!!」

リュウセイは写真を持ちながら首を横に振るう。

「しかし君しかいないのだ。顔がばれておらず、戦闘経験がある人物は。」

「しかし彼女達が何処にいるかは・・・。」

「それなら分かっている。この近くにあるラングレー基地だ。」

「しかし・・・!」

リュウセイがそう言うのも無理はない。

なぜならリュウセイは3~4ヶ月前にこの世界に入ったばかしなのだ。

もちろん潜入して人を救出すると言うけ経験は無い訳である。

「安心しろ。既に潜入している仲間がいる。それに君しか出来ないことなんだ!」

レーツェルにそう言われて満更でもなくなったリュウセイ。

「そうですか・・・。なら俺なりにですがやってみましょう!」

「そうか!頼んだぞ!!」

と、言うわけでリュウセイはアヤ、マイの両名を救出に向かったのである。



レーツェルとの会話から一時間後。

何とか潜入には成功し、辺りをウロウロしていると・・・。

「こ、これは・・・!何でこんなものが・・・。」

リュウセイは格納庫らしきところにとある機体を目撃する。

その姿はゼンガーが乗っている参式に近い物があり、背中にはドリルがついているのであった。

「肩に付いている装飾品は斬艦刀か!?でもこんな小型のものなんて見たこと無いぞ!!」

クロガネ内でも斬艦刀を使う人はセインとゼンガー位なものなので驚きが隠せないようだった。

しかしその声が今後の展開を悪い方向へと持っていくのであった。

「誰だ、そこにいるのは!?」

「しまった!ばれた!!」

「誰かぁ侵入者だ!!捕まえろ!」

「ええぃ。こうなったら自棄だ!」

リュウセイは捕まらない様にと逃げていくのだが相手の方に利が有り、数分後には捕まってしまったのだ。

そして現在に至る・・・。








「出せ、いい加減にこっから出せよ!!早くしないとガ○ガ○ガーが始まっちまうだろう。」

「黙れ、侵入者が!!」

「・・・なぁ。ワンパターンで飽きないのか?」

「変な事を聞くんじゃない!!」

「ヘイヘイ。」

先ほどからそのような会話が続き、看守も飽き飽きしている様であった。

もちろん脱出する作戦なんぞ考えている訳でもなく、ただ暇つぶし程度であった。

リュウセイはしばらく考えて脱出する方法を考え始めた。

(看守が鍵を落としてくれれば楽なんだけどなぁ。しかしそんなことする訳無いし・・・。

俺がこんな事している間にみんなは休みをエンジョイしてるだろうなぁ。全く不公平だよ!)

段々と路線がずれて行く中、看守室の方から何やら物音が聞こえてきた。

「何だお前は!?」とか「何故こんな事を!?」などの声が聞こえてくる。

しばらくしてその物音が止み、誰かが一人リュウセイの方へと歩いていく。

「誰だ、テメェは・・・。」

リュウセイは警戒し、近づいてきた男に尋ねる。

男は無言のまま持っていた鍵を使って牢屋を開け、リュウセイを中から出した。

「あんた、何のつもりだ。何で俺を・・・。」

男は少しばかし頭を抱え始める。

「全く・・・。こんな男を潜入させて何考えているんだ兄さんは!はっきり言って足手まといだぞ・・・。」

「んだと!もう一度言ってみろ!!」

「聞こえなかったのか?俺は彼女達を助けるのにお前は足手まといだと言ったんだ。」

「いい根性してんじゃねえか・・・。て、彼女達を助ける?もしかしてお前がレーツェルさんの言っていた・・・。」

男は溜息をつき、リュウセイの方を向く。

「今頃気付いたのか。俺の名はライディース=F=ブランシュタイン。行くぞお前・・・。」

「お前ってな。俺にも名前くらいは・・・。」

「貴様なんぞ『お前』で十分だ!大体からして潜入してきて機体を見ている馬鹿が何処にいる。」

「クッ!それは・・・。」

「全く、行くぞ!」

そう言ってライディースは看守室にいた看守全員をリュウセイのいた牢屋に入れた。

そしてリュウセイをここの制服を着せた後、アヤ、マイのいる部屋へと向かっていった。

どうやら彼はここの建物の構造を理解しており、スムーズに進んでいった。

「なあライ?何処に彼女達がいるのか分かるのか?」

「気安く呼ぶんじゃない。俺はまだお前を認めた訳でないのだからな。」

「良いじゃねえか、その位は・・・。」

「少しは黙って歩けんのか。彼女達の場所についてだが一応調べてある。この時間帯なら見つかることも無いだろう。」

言い終わると黙々と走り続けた。

リュウセイはいささか不満はあるものの黙ってついて行くしかなかった。

数分歩き続けた所に一つの扉があった。

厳重にされたその扉はいかにも大切なものがあるというような感じであった。

「オイお前。そっちのスイッチを頼む。」

「分かった。」

「1,2の3で回せよ・・・。1・2の3!」

ライの合図と共にそのスイッチを回し、鍵が開くような音がする。

その音を確認した後、リュウセイ達はその中へと突入した。

「誰だ!?お前達は・・・。」

そこにいた赤い髪の少女がそう叫んだ。

叫んだ少女は後ろにいる緑色の髪の女性の前に立ち、庇うようにしていた。

「実験だか何だか知りませんが、いい加減開放してくれないか!?」

「ちょっと待て!何か勘違いしているようだから言うけど俺達は助けに来たんだぜ。」

「「えっ・・・!」」

「自分達はディパインクルセイダーズの者です。アヤ=コバヤシにマイ=コバヤシですね。お迎えにきました。」

ライのセリフを聞いて安心したのかマイは肩の力が抜けたように腰を下ろした。

「今はまだあなた達の異変に気付いていません。今のうちに・・・。」

「でもこの部屋には一種の防犯システムがあって私達がいなくなった瞬間、警報が鳴るようになっているんですよ!?」

そう言ってアヤはその装置の方を見る。

その装置は今もなお起動しており、既に警戒態勢に入っていた。

「確かにこれは・・・。解除するのに手間取りそうですね。」

ライはその装置を確認すると、何処からか小型のコンピュータを取り出しデバイスを接続した。

デバイスを接続した後にキーボードを動かし、次々とプロテクトを解除していく。

そして最終プロテクトを解除しようとした瞬間――

バゴン!!

リュウセイがいきなりその装置を殴り壊したのだ。

リュウセイの行動により警報が鳴り響き、アヤ、マイは呆気に取られえていた。

「貴様、何考えている!?もう少しで解除できたものの!!」

「何考えてるのはお前の方だ!もし連合が逆探知していたらどうする気だったんだ。」

「そ、それは・・・。」

リュウセイの言っていることはもっともだった。

解除が早ければ逆探知されることなく脱出出来たのかもしれない。

だが、ライのスピードはセインやエクセレンに比べると遅かったのである。

「なら派手に壊して逃げた方が良い。それに・・・。」

「「「??????」」」

「少し暴れなくては気がおさまらねぇしな!!」

リュウセイの言葉に再び呆気に取られるライ達。

しかしリュウセイの顔には何か自信に満ちた笑顔があふれていた。






リュウセイの手によって警報が鳴り出し、ラングレー基地内は大変な騒ぎとなっていた。

もちろん過去にこのような出来事が起きたこと無い為、基地内の兵の情報網は混乱しているのである。

そんなことを知る由もなく、リュウセイとライはアヤとマイを連れて脱出しようとしていた。

「で、どうするんだ?これから。」

「兎に角走るしか有るまい。その後考える。」

リュウセイのペースにハマリいつもの調子が出ないライはすこぶる不機嫌であった。

アヤとマイはリュウセイの行動にはすっきりした物があった様で笑顔が戻りつつある。

彼らが十字路に指しかかろうとすると突然、リュウセイは何かに呼ばれるような雰囲気に襲われた。

どうやらそのような感じはリュウセイだけではなくアヤ、マイにも感じたようである。

「どうしたんだ?」

「お前は感じないのか?」

「何をだ?」

どうやらライには感じなかったらしく少し不思議がっていた。

リュウセイは取り合えず呼ばれた方に向かおうと右に曲がっていった。

「ちょっと待て!何処へ行く!?」

「俺について来い!何かあるような気がする・・・。」

そう言ってリュウセイは奥へと進んで行き、その後をアヤ、マイ、ライの順に追っていった。


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