リカの健康おたく日記♪(多発性硬化症です)

リカの健康おたく日記♪(多発性硬化症です)

8.看護婦Aさん






8.~看護婦Aさん~



病院の談話室のテレビでNHKの朝ドラ「ふたりっ子」が流れている。それが終わってのニュースで「病院での院内感染」の事件が流れた途端、その場で朝食をとっていた患者達が皆一瞬、静まりかえった。
やはり入院患者にとって「院内感染」や「医療ミス」といったニュースが今一番の関心事なのだろうか・・。(苦笑)

私は同じ4人部屋の仲間達と談話室まで出てきて朝食を食べていた。
いつもは部屋のベッドで食べるのだが、元気な人は談話室まで出てきて食べる風習があるらしく看護婦さんに促されたのだ。それに広い場所での食事は気分転換や体力をつけるためのリハビリにもなるらしい。

4人で談話室の同じテーブルを囲んで食事をした後、後片付けは自分でトレーを近くに置いてある台車までそれぞれ運んでいかなくてはならない。

大竹:「朝倉さん、ふらついてるけど大丈夫?」

朝倉:「うん、大丈夫・・。こういう病気だから仕方ないのよ。(笑)」

大竹:「ならいいけど・・。この前みたいに後ろにこけて頭から大量の血を出さないでよー?頭ってちょっと切ってもたくさんの血が出るんだって知ってびっくりしたよ~!(苦笑い)」

同室の一人、朝倉さんは「脊髄小脳変性症」という難病で小脳に疾患が出てしまい、バランス感覚がとれずふらついてしまうらしく、言語障害も少し出てきている。
おまけに「起立性低血圧」もあり、歩く時は少し頼りない感じだった。
「脊髄小脳変性症」は子宮筋腫の手術後、40代で突然発症したそうだ。
こういう原因不明の難病名もあるんだ・・と入院して初めて知った。



朝倉:「ほら、リカさん見て見て!これまるで黒昆布みたいでしょ?(笑)」

ある日そう言って朝倉さんは黒い大きい昆布みたいなゴムを取り出して伸ばしだした。

朝倉:「リハビリ室で購入したのよ・・。これで伸び縮みさせて腕や足の筋力を鍛えるんだって・・♪」

私:「へえ~いいなあ~♪私も欲しい~!いくらですか?」

朝倉:「1000円だったわよ?」

早速リハビリ室の先生に頼んで選んでもらった。私には別にゴムは必要無いと言われたが、以前部屋を回ってきた医者に「握力がすごく低い」と言われてから少しでも握力をアップさせたい・・!と思っていたので昆布ゴム(リハビリゴム)は欲しかった。先生が選んでくれたのは「赤い昆布ゴム」だった。強度が少し弱いゴムらしい。

朝倉:「あ、リカさんのは赤なのね~!一緒に鍛えようね?♪」
そして2人で部屋で時々昆布ゴムを使って腕や足の筋力を鍛えていた。

朝倉さんはリハビリ室で学んだ壁の近くに立ってバランスをとるという練習も自主的に部屋で頑張っていた。
私達と同室のもう一人、田中というおばあさんも朝倉さんと同じ「脊髄小脳変性症」だったがまだ軽い方らしく、リハビリ室には通わなくてもいいようだった。

その田中のおばあさんが主治医に「先生!私、リハビリしなくてもいいんですか?良かった~!リハビリってどうしても嫌だったんですよ~♪」とすごく喜んでいたのを聞いてお年寄りの田中さんでも嫌がってるリハビリをまだ若い私達はしないといけないんだなあ・・と少し複雑な気持ちになったものだった。

ベッドの上で昆布ゴムで手足を鍛えてると大竹姉さんが自分も鍛えたいと言って一緒に時々鍛えるようになった。私も柔らかいボールを買って握ったりして更なる握力アップに努めていた。
ベッドの手すりに昆布ゴムを縛っていつものように腕の伸び縮みをさせているところへ私の主治医の奥田Drがやって来た。

奥田Dr:「やあ、児島さん、だいぶ元気になってきましたねー?おや?大竹さんも一緒に鍛えてるんですか・・?笑」

私、大竹:「そうですよ~♪退院するまでに筋力つけるぞ~!笑」
そう言って2人で手すりをガタガタ揺らしておどけてみせた。

大竹:「それにしても・・奥田先生って毎日病院に来てますねえ~?お休みの時も・・。プライベートは無いんですかあ~?(笑)」

奥田Dr:「失礼な!ぼ、僕にだってプライベートくらいありますっ!(汗)」

そうは言ってたが奥田先生はその後も毎日のように医局に来ていた。

こうやって大竹姉さんと一緒に先生をからかったり?もして楽しく過ごしていた。
その頃は私も、心も体もだんだん回復してきて部屋の皆で楽しく毎日を過ごす事が多くなっていた。



ある晩、部屋の4人でおしゃべりをしていてふと思い出した事を提案してみた。

私:「ねえ、ねえ、このベッドって最新式だから「上がる」機能をしてみて?」

以前、最初の個室部屋の時、体温調節が難しくて部屋の上の方なら少しは空気が違うかもしれない・・?と思いベッドをどんどん上げてみた。すると結構上まで上がり、天井が近くなって驚いた事があった。それで部屋の人達にも教えたのだが・・・。

大竹:「きゃ~!すごいっ!こんなに上がるもんなのお~?♪」

朝倉:「結構天井が近くなるね・・おもしろい・・♪」

田中:「本当だね~?おもしろいわ~!」

私:「でしょ、でしょ?」

4人とも高いベッドにしてはしゃいでいた時、夜の見回りで看護婦Aさんがドアを開けた。

ANrs:「あ、あの・・皆さん・・何してるんですか・・?(@@;)」

部屋を開けた途端、見慣れない光景。4つのベッドが天井まで高く上がっている異様な状態だったのだから看護婦Aさんが絶句するのも無理は無かっただろう。

ANrs:「皆さん、いい加減、お休みくださいね~?そ、それでは・・・(^^:)」

とちょっと引き笑いをしながらその看護婦Aさんは出ていった。


またある晩、朝倉さんが家に帰って外泊した夜に暇な私はふと思いついた事があった。
部屋の電気を真っ暗にした後、それぞれのベッドの灯りの強弱が出来るのを使って薄暗い灯りに設定してカセットの音楽を流せばちょっとしたレストランかバーのような雰囲気になるよ・・?と言ってみた。

大竹:「いいね~?やろうやろう!・・・あ、本当だわ~♪いい感じ♪」

田中:「ずっと病院にいてるからたまには環境を変えてみるのも気分転換だわね?」

私:「そうでしょ~?・・・あ、そうだ!朝倉さんのベッドの電気もしてみようっと♪」

そして私は留守の朝倉さんのベッドに付いてる灯りのボタンを押してみた。
しかし・・いくら押しても灯りは点かない。おかしいな・・・??と思っていると、  『ハ、ハイ・・・・』とベッドから蚊の鳴くような声が聞こえた。

私:「あ・・!も、もしかして・・・?ヤバイ・・(汗)」

そしてすぐに部屋のドアがそ~っと開いた。するとまたあの看護婦Aさんだった!

ANrs:「あ、あの・・?今、朝倉さんのベッドの呼びブザーが鳴ったんですが・・?」>(ちょっと怯えている)

私:「す、すいませ~ん!私ですう~!電気と間違えてしまって・・(><;)」

ANrs:「あ、なんだあ・・良かった♪朝倉さんは今日は外泊でいないはずなのに鳴るから驚いちゃった・・!人の居ないベッドでブザーが鳴るとか、昔怖い話を聞いた事があったからてっきりそれと同じかと思っちゃったわ~~(笑)」

ちょっと元気になるとこんな馬鹿な事もしていたお調子者の私でした・・。(恥)
ほがらかで優しい看護婦さんだったから笑って許してくれたけど・・その節はどうもすいませんでした・・看護婦Aさん!




リカの難病入院日記9へ続く





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