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今日のいちばん
お母さんが読んで聞かせるお話A
暮しの手帖社 昭和47年11月15日 発行
富本一枝・藤城清治
魔法の指輪・・・イタリーの古い童話から
親孝行なジイジイが、母親を楽させてやろうと旅に出ます。途中でであったおばあさんのお手伝いをして、なんでも願いをかなえてくれる指輪をもらいます。
おひとよしのジイジイは、旅の途中で指輪を盗まれ、さんざんな目にあいます。
猫と犬に助けられて、無事に指輪を持って母親の元に戻りますが、母親は指輪をしまいこんで、使おうとしません。ジイジイもまじめに働いて、暮しに困らなくなった頃、指輪はタンスから転げ落ち、どこかへいってしまいました・・・
一枚の銀貨・・・ケストナアの詩から
小さな男の子が、お母さんに頼まれておつかいに行きます。もうお店が閉まってしまうので大急ぎで走っています。家は貧乏で、2枚しかない銀貨の1枚を「落とさないでおくれ」とお母さんに念を押されて、持って出てきたのです。
ところがしっかり握っていたはずの銀貨を、途中で落としてしまったことに気付きます。家の事情をよく分かっている男の子は、家に戻るに戻れません。
帰りが遅いのを心配して出てきたお母さんが暗がりで隠れている男の子を見つけます。泣きじゃくる男の子に、お母さんは何も言わずに1枚の銀貨を手渡します。
男の子は、自分が落とした銀貨をお母さんが見つけてくれたのだと大喜びして、お店に駆けていきます。
でもお母さんは、男の子が落とした銀貨を見つけたのでしょうか、それとももう1枚しかない銀貨を渡したのでしょうか。それを、知っているのはお星さまだけです。
おくびょうな兎・・・大昔の印度のお話から
臆病な兎が、木の実が落ちる音を「地面が壊れ出した!世界の終わりだ!」と早とちりして逃げ出します。その様子を見た森の動物たちも大慌てで逃げ出し、森中大パニック。
ライオンの王様が「何事だ!」と問いただすと、誰も事実を確認していないことが判明。
結局ライオンが兎といっしょに「地面が割れだした場所」を確認しにいき、大きな木の実を見つけましたとさ。
遠い国のみえる銀の皿・・・ロシアの古いお話から
あまりに素直すぎて人を恨むことを知らず、おしつけられた仕事でも「はい、はい」と嫌な顔せずに働いたので、みんなに「バカむすめ」と呼ばれているソーニャという娘のお話。
ある時、父親に、町へ行くがおみやげはなにがいいかと聞かれ、二人の怠け者の姉達はお洒落な洋服を、ソーニャは銀のお皿とあかいリンゴを頼みます。
最初は「バカむすめらしいものを頼む」とあざ笑っていた姉達ですが、ソーニャがお皿の上でリンゴを転がすと、見たいと願った外国の風景がお皿に映し出されるのを見て、すっかりうらやましくなってしまいます。
そこで姉達は、ソーニャを森の洞窟へ閉じ込めてしまうのです。
不思議な笛や王様の御殿の池の水の力で、ソーニャは無事洞窟から助け出されます。
王様は、助かったソーニャの気立てのよさに感心して、王子さまのお嫁さんに迎えます。ソーニャの両親と二人の姉も御殿内に住むことになり、姉達は、それからまるで生まれ変わったようにいい娘になった、という事です。
笠をかぶったお地蔵さん・・・日本の昔話から
年末はやっぱりこれです。
年越しの食べ物を買うために作った笠ですが、さっぱり売れずに帰り道、雪の降る中寒そうに立つお地蔵様にかぶせてあげたおじいさん。それを聞いて「よいことをした」と喜んだおばあさん。
二人のもとに、お地蔵様からのお礼のプレゼントが届きます。
粉屋のハンスとねこのお城・・・ドイツの民話から
粉屋の三番弟子だったハンス。親方が、自分にいい馬を持ってきてくれた弟子に粉屋をつがせると言います。
兄弟子達においてきぼりにされたハンスは、不思議な猫に出会い、馬をくれるというので猫たちのために働きます。
猫たちのお城を作って素晴らしい馬を手に入れますが、実は猫たちはお城ごと魔法にかけられた人たちで、猫だったお姫様がハンスと結婚をご所望。
ハンスは、素晴らしい馬を親方にプレゼントして、猫から復活したお姫様と手と手を取って、自分の作ったお城へ・・・
竜王国へいったおじいさん・・・朝鮮の民話から
ある日、釣った魚が大粒の涙を流すのを見て、これは竜王さまの使いにちがいないと、逃がしてやったお爺さん。お礼に竜王の国に招かれます。お土産に、なんでも欲しいものを出してくれる玉をもらい、おばあさんと雨漏りのしない御殿に住んで大満足。
ところがうわさを聞いた欲ふかばあさんに、玉を騙し取られてしまいます。子供代わりに育てていた犬と猫が、恩返しにと、欲ふかばあさんのところから玉を取り返して一件落着。
それにしても「親切(動物の命を助けた・人の手伝いをした)のお礼になんでも願いをかなえてくれる宝をもらう」というパターンは、古今東西共通のようですね。さらに、この玉を加えて猫が犬の背中にのって川を渡るシーンがありまして、犬が心配のあまり「玉はちゃんとあるのか?」と、しつこくたずねるので、つい猫が加えているのを忘れて「あるよっ」と返事をしたために玉を川に落としてしまいます。イソップでしたか、そういうパターンもありましたね。
スズメの家・・・古代インドの寓話から
留守中に、ウサギに家をとられたスズメと友人のカラス、3匹の話し合いがどうしてもつかないため、裁判官に相談に行きます。
ところが事情を知った野良猫が、裁判官のふりをして3匹を食べてしまおうと画策。
スズメとカラスは猫のたくらみに気付き、つかまりそうになった兎に警告をします。
まぬけな猫は自らたくらみをばらすようなミスをしでかし、すんでのところで兎は猫から逃げることができました。
スズメとカラスに感謝して、家をスズメに返し、めでたしめでたし。
雨を降らせた傘屋さん・・・日本の民話から
傘屋の彦べえさんは、自分の作った傘を風に飛ばされそうになり、そうはさせじと傘にしがみついて天高く吹き飛ばされてしまいます。雲の上で雷様に会った彦べえさんは、雨を降らせるお手伝い。
ちょっと下界をのぞいた隙に、雲から落っこちてしまいます。
お寺の塔のてっぺんにひっかかった彦べえさん。村のみんなが持ち寄った風呂敷をつないで、そこへ飛び降り一件落着。
青いカラス・・・ロシアのお話から
イワンという少年が、森で見かけた青いカラスを追ってある場所へ迷い込みます。そこは、国中の生き物が、悪魔の呪いで石にされてしまった所。悪魔は、その国のお姫様を息子の嫁にしようとしています。イワンは3晩の肝試しに勝って悪魔を退治します。そしてお姫様と結婚してめでたしめでたし。
笛吹きトム・・・アイルランドの古い童謡から
トムの笛は、いじわるトロットばあさんでも、なんとも楽しい気分で踊りだしてしまうような、素敵な元気をくれる笛なんです。
おさるの顔はなぜ赤い・・・九州周辺の甑島に伝わる民話から
猿がおもちを食べたいと思いつき、蟹をだまして作ったもちを独り占めしようとします。結局蟹から仕返しされて、おもちは全部取られた上に顔とお尻をはさまれてまっかっかに・・・
大きい男とちっちゃな妖精・・・グッド・ハウスキーピング誌から
大男のトゥリリラと、仲良しの小さな妖精ティンガリング。
ある日王様の命令で、怪物を倒しに行くトゥリリラに、こっそりついていき、小さな妖精が機転をきかせたおかげで、トゥリリラは怪物を倒すことができた、というお話。
グッド・ハウスキーピング誌
1922創刊の家庭画報的雑誌らしい。
魔法のまんじゅう・・・中国の古いお話から
ある商人がとまった宿屋のおかみさん、実は魔法の焼きまんじゅうを旅人に食べさせてロバに変身させていました。商人はそれを見破り、逆におかみさんにまんじゅうを食べさせてロバに変え、自分が乗って旅を続けました。
魔法のロバのせいか、疲れずに働くため、商人は金持ちになっていきます。
ある時このロバに乗っていると、ある老人が彼を呼び止めます。ロバになった女性に術を教えた仙人でした。
仙人は彼女を許してやるように商人に頼みます。商人が承知すると、仙人が術を使い、二人とも雲につつまれて姿を消したのでした。
兎と象とお月様・・・古い印度のお話から
水不足のために水場を求めて移動してきた象たちの群れ。もともと水場に住んでいた兎たちは、その騒ぎに怪我をしたり大迷惑。なんとかならないものかと相談の末、とんがり鼻の兎が一計を案じ、月の使者として象たちに立ち去るように命令します。
象の王様は、水面に映る月に非礼をおわびして立ち去ります。
ひげのはえた花嫁・・・北欧の神話から
山の巨人トリームに、大切な石の槌を奪われた雷神トール。炎の神で、巨人たちともつきあいのあるローキーが様子を探りに行くと、女神フレイヤを妻にできれば槌を返す、とのこと。
ところがフレイヤは身につけていた宝石がくだけて飛び散るほど激怒します。しかたがないのでトールが女装してフレイヤに化けることになります。
ところがトールは自慢の長いあごひげをどうしてもそりたくないので、ひげは隠して行きます。
祝宴の席でうまく槌を手にとりもどしたトールは、巨人達をたたきのめして追い散らします。
かしこいはた織り・・・ロシアの民話から
ある国の王様のところに、よその国から使者が来ます。ところがなにもしゃべらず、謎かけのような動作ばかり。王様も大臣も、国で一番の物知り博士にも、わけがわかりません。
必死にこの謎かけがわかる人物を探しますと、とある村のはた織りが賢いといううわさ。
大臣達がはた織りの家へ出向いて行くと、はた織りは自分のはた織り機に細工をして、「はた織り」「ゆりかごを揺らす」「屋根に干した小麦を狙うスズメを追う」という3つの仕事を同時にこなしていました。
これは賢い、ということでお城に連れて行くと、すらすらと他国の使者の沈黙の問答に対応し、見事に問題を解決。実は使者は宣戦布告にきており、はた織りの回答に感心して勝ち目はないと判断し、兵をひきあげていったのです。
王様は大変喜んで、今すぐ大臣にする、と言いますが、はた織りは「自分ははた織りで、はたを織るのが大好きなので、大臣なんかにしていただくより、このまま好きなことをさせておいてください」とお願いして、さっさと家に帰って行きましたとさ。
きつねの建築師・・・クルイロフの寓話から
にわとりを飼うのが好きなライオン(!)が、しっかりしたにわとり小屋を作ろうと思い立ちます。キツネが自分は建築師だ、とうそをついて、他の動物をこき使ってにわとり小屋を作ります。実は小屋の中に抜け穴を作り、卵やにわとりを盗んでは食べていました。
にわとりの世話係だったサルとネコはこのトリックを見破り、ライオンからごほうびをいただいたそうです。
「キツネは、どうなったでしょうね?」
イヴァン・アンドレーヴィチ・クルイロフ
ロシアの作家。一七六九年生。
神さまが腹をたてた話・・・世界でいちばん古い物語の一つ
人間達の傲慢さに怒った「実りの神」が姿を隠し、地上では植物動物すべての「実り」がなくなってしまいます。困窮した人間たちは、神々に捧げものをしてお祈りします。
人間達からの捧げ物がなくなると困る、と神々は手分けして「実りの神」を探し出し、酒宴をはって女神の踊りで気持ちをやわらげて許してもらいます(笑)
森の妖精にもらったバラの花・・・イギリスの民話から
たきぎ集めの途中で不思議な妖精に出会った兄と妹。願いのかなうバラをもらいますが、よく考えずに願いを口にしたため、年寄りになってしまいます。
一生懸命妖精を探し出して元に戻してもらいますが、「あれほどよく考えて願い事をしなさいと言ったのに」とお小言をもらいます。
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