知事会見(脱・記者クラブ)その1


県庁議会棟 第1特別会議室
長野県知事 田中康夫

 長野県とりわけ、長野県庁におきます、従来からあります記者クラブ、長野県の
記者会見及び報道のあり方に関して、新しい方向を「『脱・記者クラブ』宣言」と
いう形でお伝え申し上げます。

  お手元にお配りいたしておりますが、念のため、全文を読ましていただくことか
ら始めたいと思います。

  <全文朗読>

 これが、「『脱・記者クラブ』宣言」の全文であります。

 この中で、既にお伝えすべきことはございますが、とりわけ付け加えますならば、
近時永田町の国会でいわば審議をあえて申し上げれば、形式的ともいえる審議を重
ねております「個人情報保護法」というこの呼称、名称とはおよそ対極に位置する
奇妙な法案が審議を重ねられているわけであります。これはある意味では、発言力
あるいは資本力という点においては、少なからず大きな存在であります新聞社、通
信社、放送局を結果的には庇護する形となり、対して雑誌、ミニコミ、インターネ
ットを始めとするそれら以外の新たな、また様々な媒体、あるいは先程申し上げた
フリーランスで表現活動に携わる市民から、知る権利あるいは報ずる権利というも
のを奪い取りかねぬ大変に憂慮すべき方向が「個人情報保護法」という名称と実態
がいささかならずかけ離れた形で現在動いております。

 これは、あるいは、私が手前味噌といささかなるかもわかりませんが、現在、長
野県知事という職務を勤めているわけでして、これは、明らかに広い意味での権力
という名の装置の一翼を担っているわけでありますが、同時に私は、従来もまた現
在も、表現という営為を個人で続けているわけでございます。そうした立場を持つ
人間として考えますと、やはり、きな臭い世の中の動きには抗い続けるということ
こそが、これもまた真の県民益を長野県に、あるいは真の市民益を日本へもたらす
という私の抱くべき気概でもありますし、またそうした責務も少なからず私にはあ
ると考えております。

 何れにいたしましても、ある意味で言いますとこれはすべての表現がより良い意
味での自由競争になるということであります。表現者という者は、まさにすべての
市民が表現者であります。そして、それはすべての市民が表現者であるということ
は、グーテンベルグがある意味では閉ざされた言語空間というものを非常に多くの
市民が共有するものとなったわけでありますが、近時におけるインターネットを始
めとする様々なそれはツールというものを超えた新しい表現活動というものもすべ
ての生きている人間が表現者であるということであります。生きている人間すべて
が表現者であるということこそが、民主主義を今までのようなある意味で言えば、
組織あるいは権威というものに立脚しがちだった検証、あるいは検討とそうした過
程からすべての表現者が民主主義を話し、試し、そして築き上げていくという形に
なっていく、それが現実にこれはインターネットを始めとするものが日本以上に先
進的かつ充実的である地域にとどまらず、この私たちの日本、そしてまたこの日本
の背骨にある長野県においても、おきていることであります。

 それに対して県民からの税金を頂戴する形で県民益をもたらすということに従事
している私を含む長野県の職員また長野県と、ある意味では記号としての形態は、
開かれた自由競争、しかもまた自分の意志に基づく表現活動を行う方々に広く門戸
を開放する、それが長野県の民主主義をより優れたものとしていくということであ
ると思っております。

 それは、皆様も表現者であられますし、私もあるいは県の職員もそうであります
し、それは222万人の今この瞬間も様々な場所で様々に学び、働き、考えていらっし
ゃるすべての方々が例え数多の軋轢が生じたり、あるいは時には身体に危険を感じ
ようとも、まさに是々非々の精神を抱き続けて表現に携わっていくということこそ
が民主主義を形づくっていくものだと思っております。

 それは、まさに、今回の「『脱・記者クラブ』宣言」を発表いたしました私及び
長野県もまた強きを守り、弱きを挫くような事態を避けるためにも、また真の規制
緩和と構造改革といった惹句を惹句で終わらせないためにも、この宣言をひとつの
また新たな「長野モデル」のメンタリティとして県民のために尽くす必要があると
考えております。

 その他いくつかの点に関して、この宣言に基づいてお話を申し上げたいと思いま
すが、この宣言は何れにしても、私どもが既存の記者クラブを構成していた、も
ちろんそれ以外の様々な報道をする機関の方々も、長野県庁を訪れ、あるいは県内
の各地を訪れ、報じてくださっているわけですが、そうした方々へのある意味で言
いますと私たちの甘えた依存型ではなくて、まさに同じ目線での県民ともまた表現
者とも共生していく形を目指すものであります。その意味で今までの記者クラブと
いう形に依存する記者会見の在り方をまずは見直し、そして記者クラブの枠を超え
て、すべての表現者が自由に取材や報道できる仮称としてのプレスセンターの開設
を行い、またその中において長野県が主催する記者会見を実施していくということ
であります。

 こうしたすべての表現者というのは、先程から、繰り返し申し上げておりますよ
うに、すべての生きてらっしゃる方々であります。ですから、新聞、通信社あるい
はテレビ、ラジオといった媒体にとどまらず、雑誌、もちろん雑誌にも様々な形態
がございます、あるいは、どのくらいの部数をもってミニコミ誌というのかという
議論もありますが、いわゆる世間一般で概念として確立しておりますミニコミ誌あ
るいはフリーペーパー、あるいはインターネットといった形の表現これらの表現に
携わる方々はすべて仮称としてのプレスセンターをご利用いただけますし、また県
主催の記者会見にご出席いただき、お名前をフルネームでおっしゃっていただくこ
とによって、その場で発言、質疑を行うことが可能だということであります。

 そして、最後の方でも申し上げましたが、その天変地異というのは、私たちの予
期を超えて突如として起こる可能性がございますので、これらに関しては、もし、
皆様が同じ人間として、長野県内あるいは近県を含む天変地異が起きた際にそれを
一人一人のまさに生きて考えている方々にお伝えしていただく意思がおありなので
あれば、そうした方々には、深夜、早朝あるいは休日であるやもしれぬ緊急記者会
見のお知らせを、そしてまた緊急記者会見開催のお知らせを、またそれに伴う資料
の提供等をお届けするために提出していただく所定の様式(ご連絡先等を含む)を
今後いかなる様式にするかということも表現者の方々と検討した上で設け、その様
式にお書きいただく形で事前にお届けする形を目指したいと考えております。

 そして毎日、これはある意味で言いますれば、午前中に、つまり昼から午後にか
けてから夕方にかけて表現をなさろうとする方々のために、午前中に一度、午前中
までのその時刻までの段階で、前日から県が広くお伝えすべきということを、印
刷の形でプレスセンターに掲示させていただきます。同時にこの内容に関してのプ
リントは希望される方には無料で頒布いたします。そして夕刻も同様のプレスリリ
ースを発行させていただきます。

 主としてこれは夕刻を想定いたしておりますが、その日の県政、県政は決して県
庁あるいは県の機関だけではなく、すべての県民の営みが県政でありますから、県
政に関しての御質問を受ける場をそこで設けるということであります。これを担当
する人間は政策秘書室の人間が担当いたします。

 そして同時に広く表現をなさる方々にお伝えすべき内容がある場合は、宣言の中
にも記しましたように、部課長をはじめとする、そこには当然私も含まれるわけで
ございますが、そうした人間がプレスセンターで御説明をし、質疑を受けるという
形をとります。ですので、記号としての長野県としては、毎日、会見はあり得ると
いうことでありまして、表現に携わる方々は午前と午後のその時間帯にお越しいた
だければ長野県が県民のみならず広くお伝えすべき内容はそこで入手することが可
能だということであります。

 そして、もちろん1分1秒のタイムラグがないという形は物理的な問題も含めて
いささか困難だとは思いますが、そこでプレスセンターで掲示いたしました内容は
速やかにホームページ上にもアップいたしますので、足をお運びになれない方々も
ホームページ上でその内容は、隈なく、ご覧いただくことができます。

 記者会見は、県主催という形で週に1回、おおむね1時間を想定する形で、知
事記者会見が行われます。これもまた、6月末を目途に現在の3階の記者クラブ室
から御退去、御撤去いただいた後に、ここに、本日お座りいただいているのはテー
ブルがないイスでありますが、折りたたみ型のミニテーブルがついたイスをその部
屋に設ける、ですから会見等が行われない時間帯においては、ここで皆さまは表現
者の方々は御自由にこの空間を御利用いただくことができます。ファックスとコピ
ーに関しては機械を設置し、常駐するスタッフが実費でこの作業に当たらせていた
だきます。

 そして宣言の中にもありましたように、多くの県民の方が記者会見を行いたいと
いう場合も、政策秘書室にあらかじめ時間をお知らせいただく形で、これは重複し
て同じ時間帯を希望なさる方が想定されますから、この点に関しての調整は政策秘
書室が担当いたしますが、すべての県民の方は3階のプレスセンターの場で、仮
称としてのプレスセンターの場でそうした形の会見を行うことが可能であります。
そうした時間は、プレスセンターの開かれている時間というものも、これからこれ
は6月末以降、また室内の改装等を伴いますので、また準備等の設備も伴いますの
で、いささか6月末から7月のいずれになるかは具体的に決まった段階で改めてお
伝えする形にはなりますが、この開かれている時間帯で、こうした作業が行われる
時間は、全体の中では、それは半分の時間には満たないと現時点では想定いたして
おりますが、この他に先程申し述べたように2階の現在の記者クラブの部屋は同様
のテーブルのついたイスを置き、そこで表現者の方々はその空間を御自由に御利用
いただくこともできるようになります。

 そして、先程も述べましたように、記者会見、それは往々にして1時間以上に及
ぶわけですが、また「ぶらさがり」というものも立ち止まってお話しするという形
も従来から必要に応じてとってきておりますし、この部分は更にその精神を私自身
の中で引き続いて行うということであります。

 その上で、これは表現者であられる方々から週1回の記者会見、「ぶらさがり」、
あるいは通常夕方に想定されている政策秘書室の報道担当者のプレスリリース配布
の際の会見への知事の出席以外にも、時間をとって県民の方、あるいは市民の方に
お話しすべきであるという御要望が表現者の方からあった場合に関しては、これは
個別に判断を行い、そうした今想定して申し上げているようなあらゆる形の私、ま
た県がお伝えする機会以外にも設ける必要があると判断した場合においては、そ
の可能性を排除しないということであります。

 そして、従来も頂戴いたしておりません、プレスセンターは表現者の方はどなた
でも入れますから、そこにおける光熱水費等の様々な運営は県が負担をするものです。

 駐車場に関してはすべての表現者、それはすべての県民であり、すべての生きて
いらっしゃる方でありますから、この県庁の建物に訪れられる方は、従来、記者ク
ラブ、3つの記者クラブの側に提供していた駐車スペースはすべての方が御利用い
ただけるということに実質的にはなると考えております。

 また、この最後に書きましたように、人間はいかなる完璧な想定を考えてもなお、
人間の想像を超えた事が起こり得るわけでして、であればこそその表現というもの
に携わる方が職業として数多くいらっしゃり、またその表現されたものを数多くの
方が関心をもってお読みになるわけですから、今日ここの「『脱・記者クラブ』宣
言」の中で述べております方向の部分、またそれ以外の今後想定しうる部分も、こ
れは文章の最後に記しましたようにすべての表現者との開かれた話し合いを踏まえ
て、更なる詳細を決定してまいりたいというふうに考えております。

 また、現在、臨時的任用職員という者が3名、3つの記者クラブに関して私ども
県の費用負担で3名を任用しておりますが、これらの3名に関しましてはそれぞれ
の雇用期間が終了するまでは引き続きその雇用を保証すると。ただし、現在の形の
記者クラブ室というものが撤去された段階においても、雇用の保証はするというこ
とを併せて申し上げておきたいというふうに思います。ですので、従来は特別会議
室において週1回の記者会見等は行われておりましたが、これは現在の3階の記者
クラブ室が新たな形になった段階においてそちらで行うようになるということです。
そして記者会見に関しては、本日のこの記者会見から、長野県が行うすべての記者
会見は、長野県の主催の元に行うという形になります。

 お伝えすべきことは、概略以上であります。
 御自由に質疑を行います。
 お名前はフルネームでおっしゃっていただき、もし、差し支えのないのであるな
らば、ご自身が表現者として主たる場所として活動していらっしゃるところの広い
意味でのあらゆる媒体の形の名前というものも併せておっしゃっていただきたく思
います。

 自由に質疑を受け付けます。

  その前に、ホームページ上でアップいたします記者会見というのは、御発言をい
ただいた方のフルネームもまた御質問の文面もアップを文章においてもいたします
し、動画においてもその音声は隈なく流れる形になります。また、こうした形の会
見に御参加なさった表現者の方がその記者会見における内容を活字若しくは動画あ
るいはスチール写真等ですべてをお伝えになるということは、これをいささかも妨
げる用意は長野県にはありません。



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