第5章:エメラルドへの導き
「号外、号外、99年ぶりに例の泉が現れた。おっと」
カタピヨンがまた何かを落としながら歩いていたが、クックの吠える声に
よろけそうになった。
少年のもとにクックが紙切れのようなものを咥えて持ってきた。
「えーと、一つだけ願いが叶う泉・・・」
少年がもたついているので100年の木が話し始めた。
「ほほう、なんて事だ。また泉が現れたのか」
「え?見たことがあるの?」「泉って何?」少年が尋ねた。
「わしは見た事がない、だがその泉で願いを叶えたものが誰だかは
知っておる」
「どんな願い事でも叶うの?」「どうしたらそこに行ける?」
「理解したものだけが行く事が出来るときいておるよ」
100年の木が続けて言った。
「しかし、お前さんは何も理解しておらん、翼の無い鳥も、階段の
一番上に何があるのかも」
突然、黒ハットが現れた。
「ケケケッ お前に泉が見えるはずが無いさ」
「チチッ きっと見えるようになるよ」
白ハットが言った。
「ケケッ だってコイツはもう怖くて乗り物にも乗れないんだぜ」
クックは相変わらず吠えない。
少年は言い返すことができなかった。
少年は久しぶりに鳥達の群れをみた。
なんだか空には、翼のないもの達のほうが多く飛んでいるように見えた
辺りには、力尽きたもの達の姿があった。
「僕も、こうなるのだろうか」
少年は壊れそうになっていた。
そして、また例の階段の場所までたどり着いたが少年は下を向いたままだった。
時が流れる。永遠と思われるほどのたくさんの時が。
やがて、少年の頭の中に一つの思いが固まった。
「僕、あきらめない!」
「僕があきらめたら、そこで終わりなんだ」
「チチッ そうだよ、君なら出来るよ、自分を信じて」
白ハットが言った。
少年は何度も何度も階段を上った。
そして戻された。
「ケケッ やめちまえよ、お前は社会に適応できなかったヤツなんだろ?」
黒ハットの言葉に少年はやはり答えられなかった。
それでも上った、1段、2段、3段。あと2つだ。
けれど、2段目まで押し戻された。
上がっては戻され、上がっては戻され、繰り返される度に少年の体の
痛み方がころころと変わった。
クックは心配そうに少年を見守っていた。
やっと4段目まで上ったあと少年は2段目まで押し戻された。