ハンサムネコ ☆アビ☆

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残金ゼロ



作 こころ耕作

 低成長時代の昨今、フリーターは生活に困窮している。貯金はもともとあるはずもなく、サラ金もブラックリストに載って、これ以上は借りられない。職にあぶれて食うに困っていた俺は、偶然に魔王を拾った。貧乏神みたいな魔王だった。
「さあ、願いを言え」
「お前に叶えられるのか」
「試して損はないぞ」
「まあいいか。そうだな。一生、金に困らないようにしてくれ。食うに困る生活は嫌だからな」
「心得た。願いは叶えてやったぞ」
 魔王は消えて、俺の前には硬貨が転がっていた。だが金貨などという高級な代物ではない。日本国の流通貨500円玉一個と100円玉3個、合計800円だけである。まあ、道端で拾った壺から出た魔王ではこの程度だろうよ。
「ふざけやがって、三流魔王が。これでは、俺が毎日食べている定食代にしかならないじゃないか」
 まあないよりましかといつもの定食屋で、サービス定食を食べた。
 残金はたちまちゼロだ。
 道路に出たとたん、俺は車にはねられてあっけなく死んだ。そうか、一生食うには困らなかったか・・・・・・。



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