空 くう

空 くう

お兄ちゃんのつばめ



お兄ちゃんのつばめ



ごめんね
お兄ちゃん

ちょっとくやしくて
羨ましかった
だけなの

勉強も運動も
何てもできて
友達だって
たくさんいてさ

私がたった一つ
得意な
絵を描くことまで

お兄ちゃんいつも
金賞だった

ずうっと前の
夏の初め

巣から落ちた
つばめの雛を
お兄ちゃん
一生懸命育ててさ

次の年 桜の枝が
若葉の色に染まる頃

うちの軒下に
初めてつばめが
巣をかけた

お兄ちゃん
ほっぺ真っ赤にして
喜んでたね

なのに

つばめの巣に
大きな石を投げたの

小さな
白い卵が
落ちて割れた

つばめは二度と
戻らなかった

声を殺して
背中を向けて
小さく震える
お兄ちゃんの肩見て
初めて

ひどい事したって
わかったなんて

それから
もう何年も過ぎて
家は壊され
白いきれいな
マンションになってた

お兄ちゃんは
何も言わないけど
あの道通ると
必ず
家の跡を目で追うの

あれは
私のせいなの

その一言が言えなくて
まだ言えなくて

心の底に
こびりついてる

つばめはあれから
どうしたかしら

新しい家を
見つけたかしら

優しい家の軒下で
可愛い雛を
育てていてね

どうか
どうか
お願いね


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