晒し場

晒し場

ことり編 4話 夢から覚める日



「嘘・・・。」
 旭はTVから流れてくる映像と音声に驚きの声を上げていた。その内容は、『初音島の桜が枯れる?』と言う内容であった。
「へぇー、この島のねぇ・・・。」
「・・・。」
 二人は、ニュースの内容に大して感情を抱いていないようだ・・・しかし、旭にとっては重大な事であった・・・初音島の桜の木が枯れる。今まで経験したことが無い事なのである。
「どういうことなんだろう・・・。どうして・・・今・・・。」
 旭は考えた。
―「もうすぐ、この島に変化が訪れるんだ。君にはあまり詳しくは話せないんだけど、困る人がたくさん出てくるんだ。」―
 昨日、夢の中で会った少女の事・・・あまりにも突然で、理解しがたい出来事であったが・・・。
「あの子は・・・どうやって?あの子は何者?」
 あらゆる疑問が頭の中を駆け巡り続けている。
(あの夢の中以外で、きっと何処かであった気がする・・・それに、あの子は僕にいったい何を言いたかったんだろう?困る人・・・誰?どうして?)
「おーい、旭!」
「へ?」
「ボーっとしてると、学校。遅刻しちまうぞ!」
「あっ、ごめん。ありがとう。」
 寿樹に咎められ、時計を見るともう出ないと学園までマラソンをする羽目になる。
「じゃあ、行ってきます。」
 そう言うと、旭は居間を出いった。

桜並木道

(明らかに少ない・・・。)
 旭はパッと見ると普段と変わらない光景なのだが、ニュースを見たせいか気持ち桜についている花が少なく感じている。
「ね~ね~、見た?今朝のニュース。」
 生徒の間の話題は、桜の木が枯れた事で持ちきりであった。
 そんな中、旭は一人の見慣れた人物を発見した。
「ことり、おはよう!」
 ポンっと軽く肩を叩き、挨拶をした。
「ひゃ!」
 驚きの声を上げる。
「ごっゴメン・・・どうしたの、急に驚いて?」
 不自然に思った・・・普段から明るく、誰とでも接することりであったが、この日はどこか、近寄りがたい雰囲気を出していた。少し下に俯き、肩を縮めて歩いていた。
「あ!旭・・・君・・・か、どう・・・したのですか?」
 いつもの口調とは、完全に違った。何かにおびえている・・・しかし、旭の頭の中には彼女がおびえる理由が見当たらなかった。
「どうしたの?」
 思わず、質問がこぼれる・・・だが、ことりは何でもないように答えた。
「別に・・・なんでもないよ・・・。」
 そう言うのだが、ことりは旭と目を合わせようとはしない。
「やっぱり変だよ・・・本当に大丈夫?」
「大丈夫だから・・・大丈夫・・・だから。」
 そう言って、ことりは逃げるように去っていった。
(困る人って・・・もしかして?)
 しかし、旭には理由が分からない、ことりがこんな態度をとる理由が・・・。

放課後

 結局、クラスでもことりの様子が変わることは無かった。
 人と関わる事を極力避けている。現に、HR終了後に教室からとびでいるように去って行ったのである。
「やっぱり、どうしたんだろう?」
 だが、いくら考えても・・・考えても考えても答えは出てこない。
「旭!」
「はい?」
 後から、名前を呼ばれて返事をする。
「ことりの様子・・・お前もおかしいと思うか?」
 声を掛けてきたのは純一であった。
「僕も、そう思うよ・・・でも、理由が見当たらないんだ・・・。」
「そのことなんだが、ちょっといいか?」
「何か、心当たりでも?」
「あぁ。」
 いつにも無くまじめな表情をしている純一に、旭は信用するしかなかった。

大きな桜の木

「ここは?」
 純一に連れられてきた場所・・・そこは、あの夢に出てきた場所だった。
「ここはな、俺に秘密基地だ。」
「秘密・・・基地?」
「あぁ、小さい時何かあれば、いつもここに来ていたんだ。」
「で、それと何か関係あるの?」
「・・・お前、気づいてたか?」
「気づくって何がですか?」
 突然の質問に、意図を読み取れない旭は、聞き返すしかなかった。
「まぁ、お前の能力は発動しにくいし、まだ気づいてないみたいだな。」
「能力って・・・。」
「この島の桜の木が枯れようとしているのは知ってるよな?」
「そうだけど・・・それがどうしたの?」
「実はな、この桜の木が初音島みんなの願いを叶えていたんだ。」
「願いを?」
「そうだ・・・そして、その桜の木は枯れようとしている。つまり、桜の木の力が消えて・・・。」
「消えて・・・能力がなくなるって事?」
「そうだ・・・。」
 話を聞く限り本当の事のようだと旭は納得するしかなかった。
「でも、どうして朝倉さんがその事を知ってるんですか?」
 自然と疑問になる。どうして、純一がこんなに詳しく知っているのかと気になってしまう。
「俺も、魔法使いなんだ・・・出来損ないのだけどな。」
「魔法使い・・・。」
 昨日の夢にも出てきた単語である。あの不思議な、名前も知らない少女の正体が魔法使い、それと純一が同じ・・・旭には嘘のような事だけど信じるしかなかった。
「で、昨日な・・・。」
純一がその後の言葉を続けようとした瞬間。
「知ってる・・・。」
「え?」
 旭も既に知っていたんだ。夢の中で・・・。
「昨日、夢に出てきたんだ。一人の女の子がこの桜の木の下にいたんだ・・・。そこで、教えてくれたんだ。自分は魔法使いなんだってことと、そして・・・この島に変化が訪れることも・・・。」
「それって・・・。」
「で、推測に過ぎないんだけど・・・ことりも何らかの能力を持っていた・・・だけど、今はそれを失って不安でいると思うんだ。」
「そこまで・・・分かってるんだな。」
「え?」
「じゃあ、俺から言う事は何もない・・・がんばれよ!」
「あ・・・。」
 そういい残し、純一はすぐにその場を去っていった。
(どういう・・・こと?)
 旭はその場に取り残されたまま、ただ上にある桜の木を眺めた。枯れた桜の木を・・・。


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