中古住宅をリフォームして快適子育て

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「若い人は来るな!」


なぜ若い人を拒むのかは謎。

私が思うに、
「戦争も体験したことのない若い人には私の苦労なんて分からない!」
という事なんだろう。

私がホームヘルパーとして働き出したのは24歳の時。

Tさんは私の顔を見るなりこう言った。
「あんたに来てもらっても嬉しかないよ!若い人は来るな!」。

人に拒まれるというのはなんて悲しくて悔しい事だろう。
こんなにきっぱりと嫌われる。

私は「若い」という自分に、自信を失いかける瞬間を黙って見つめていた。

「そう?私若いかなぁ?」
「みるいみるい。(若いという方言)ところで選挙権はあるのかい?」
「?!もちろん!24歳ですから。」
「24!私が24の頃はもう子供がいたっていうのに。選挙権があるんなら○○さんに一票入れてよね。」
「はい。分かりました。考えておきますね。」

Tさんとの出逢いはこうやって始まった。
100年の歴史を持つ木造の家に住む彼女。
病気や事故の後遺症もあってか、天気が崩れそうな日はとても機嫌が悪い。
それでも私は彼女がちょっぴり怖がりなのを知っている。
トイレの扉をきちんと閉めてしまうのが恐いらしく、ほんの少しの隙間を開けて用を足すのだ。
あんなに強い事を言いながら、ちょっぴりかわいいTさん。

あまりにも何度も「若い人は来るな!」と拒まれるので、私は思い切って聞いてみた。
「Tさん。若いって何歳くらいの事をいうの?」
「60歳だよ。60歳を過ぎんと年寄りの気持ちなんて分からんだよ!」

私はとてもほっとした。
なんだなんだ。
Tさんにとっては自分より歳下の人をみんな「若い」というのだ。
私が24歳だから若いといっていたわけではないのだ。

「そうだね。60歳を過ぎないとなかなか分からないかもしれないね。」
私はTさんを見て微笑んだ。

「掃除はそのへんにして、お茶でも飲んできな。
 。。。ごめんね。私が嫌みな事ばっかり言うからみんな私の所に来るのは嫌だというだろう。」
「もう少し掃除させて下さいね。お茶の事はおかまいなく。いつも気を使ってくれてありがとうね。
それから、みんな「嫌だ」なんて言っていないよ。」
Tさんも少しほっとしたように、また「ごめんね」とつぶやいた。

Tさんも同じ人間。
ヘルパーに嫌われるのが恐いのだ。
嫌われて、自分の家に来てくれなくなるのを恐れているのだ。
1週間に2回の訪問をちょっぴり楽しみにしてくれているのだろうか?
そんな事を考えるとTさんを愛おしく思えてくる。
罵声や、嫌味はTさんの愛情表現なのだ。
愛情表現というのは大袈裟かな?
それでも、生きているというのは、楽しい事ばかりではなく、辛く苦しい事も沢山ある。
Tさんの苦労を全て理解するのは難しい。
だけど、ほんの少しでも歩み寄りたい気持ちがここにはある。
それがヘルパーの仕事なのかもしれないなぁとTさんの家に反射する夕焼けを見ながらそう思った。



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