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発達障害の子どもたち/2 読み書きの階段 一歩一歩
「川、は、いつも、は、水が、少ないのに、
さんにちの、三日もの雨が水の、水がどっと、
どっとましてまし、ましていました」
9月15日午後、東京都世田谷区の国立成育医療研究センター。
東京都内の小学4年生の男児(10)がリハビリの一環で、
国語の教科書では定番の童話「ごんぎつね」を読んでいた。
手元のコピーには、読みやすくするため、
意味のある言葉ごとに細かく斜線が引いてある。
「川は、いつもは水が少ないのですが、
三日もの雨で、水が、どっとましていました」
と、
目の前の言語聴覚士が音読した後に続くだけ。
それでも、たどたどしい。
男児が抱えているのは、
学習障害のひとつであるディスレクシア(読み書き障害)だ。
日本ディスレクシア協会は
「通常の会話、
話し言葉の理解や表現は普通にでき、
知能も標準域にありながら、
文字情報の処理がうまくいかない状態」
と説明する。
●だ行とら行で混乱
母親(41)が男児の担任に呼び出されたのは2年前だった。「だ行と、ら行が区別できていません」。トイレを「トイデ」と表す。両方が混在するらくだについては「『ら』って、どっちの『ら』なの」と不思議顔。「ただ言葉を覚えるのがゆっくりなだけではないかもしれない」と、通常学級に在籍しながら個別に特別支援教育を受ける通級指導教室に通うよう促された。
そこで出会ったのが、ディスレクシアの子どもがいる母親だった。文字を読むのが苦手、かけ算がなかなか習得できない……。男児と共通していることばかりだった。
男児は2歳を過ぎたころ、ようやく発語した。小学校に入る前には、例えば「み、か、ん」と読んでも、何が書いてあったか聞かれると覚えていなかった。2年生になり、ひらがなの固まりを何となく読めるようになったところだった。母親は「文字を追うのに精いっぱい。教科書も、みんな音読しているのを聞いて覚え、やっと内容が理解できている。普通の人は平地を歩いているのに、階段を1段ずつ上っている感じなのだろう」とおもんぱかる。
●味覚と嗅覚は鋭く
ディスレクシアに悩み、男児は自信をなくしていった。学校に行くストレスが重く、普段は午前6時に起きるのに布団でうずくまったまま。腹痛を訴え、食べた朝ごはんを吐いてしまう。授業では定期的に作文のスピーチが回ってきた。文章を作り、それを暗唱して読むのは男児にとって過酷だ。担任は「書いたものを持って読んでいい」と言ってくれたが、みんなと違うことに耐えられなかった。
しかし4年生でリハビリに取り組むようになり、少しずつ様子が変わってきた。味覚と嗅覚の鋭さを生かして「料理人になりたい」という将来の夢もできた。7人家族で、一人だけ「ご飯がくさい」と食べなかったら、ほどなくして販売業者が「防虫剤のにおいがついていた」と米を回収した。酒が加えられていなかったり、冷凍イカが使われていたりすることに気づいたこともある。今夏の自由研究は、メレンゲの作り方と、オムレツのふわふわ具合の関係を調べた。「自信が芽生えてきて本当に良かった。読み書きも徐々に進歩していけばいい」。母親は胸をなで下ろした。
ディスレクシア研究の第一人者である、成育医療研究センターの小枝達也・こころの診療部長は「日本では子ども全体の2%程度、アルファベット圏の国では5〜10%の子どもがディスレクシアと推定される」と話す。知能は問題がないため学校で気づかれにくい。「子どもにとって読めないことがどれだけ深刻か、現場の教師が認識しておらず『そのうち読めるようになる』と考えている。クラスの和を大切にした学級運営に力を入れるあまり、読み書きを含む教科学習の指導が、反復音読など旧来のやり方を漫然と繰り返すだけになっている」
●電子機器の活用も
鳥取県伯耆(ほうき)町の大工、井上智さん(54)は43歳の時、妻がたまたま持っていたディスレクシア関連の本を見たのをきっかけに、自分がそうであると気づいた。勉強が好きで、テストで答えが分かっても書けずに0点を繰り返す。「怠け者」と罵倒する教師、「大人をなめている」と突き放す母親。社会人になっても、職場でいじめられた。失われた過去を取り戻したくて、今年度から大阪芸術大短期大学部でデザイン美術を学んでいる。
井上さんはディスレクシアの子どもたちに対する、タブレットを使った支援に期待する。「視力が弱ければ眼鏡をかけさせるのと同じこと。私のように気づいてもらえない子どもは今もいるはず。つらい経験を、もう押し付けてはいけない」
<読字障害>
・幼児期に文字に興味がなく、覚えようとしない
・文字を一つ一つ拾って読む
・語あるいは文節の途中で区切ってしまう
・読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む
・文字間や行間を狭くすると、さらに読みにくくなる
・音読よりも黙読が苦手
・1回音読して内容理解ができると2回目の読みは比較的スムーズになる
・文末などを適当に自分で変えて読んでしまう
・本を読んでいるとすぐに疲れる
<書字障害>
・促音(「がっこう」の「っ」)、撥音(はつおん)(「とんでもない」の「ん」)、二重母音(「おかあさん」の「かあ」)など、特殊音節の誤りが多い
・「わ」と「は」、「お」と「を」のように耳で聞くと同じ音の表記に誤りが多い
・「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」、「雷」と「雪」のように形態的に似ている文字の誤りが多い
・画数の多い漢字に誤りが多い
※国立成育医療研究センターのホームページより。
さらにディスレクシアかどうかのチェック表や、
読字支援システム「T式ひらがな音読支援」、
指導の具体的な方法、
学校における早期からの指導体制などを紹介している。
指導に使うアプリの入手の仕方や,活用の仕方などの情報もある。
アドレスは
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/heart/dyslexia/
【毎日新聞 http://mainichi.jp/articles/20161015/ddm/013/100/012000c 】

おのおのの個性を的確に捉え、
最適な支援が必要となってきていますね。 🌠
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