不思議な微生物、藻食べて植物に「ハテナ」


2005年10月14日


細胞分裂する「ハテナ」。共生している藻類は、片方の細胞にだけ受け継がれる=井上勲・筑波大教授提供


ハテナの一生

 光合成のもとを食べて植物に大変身――。緑藻の仲間を細胞内に取り込み、光合成能力を獲得する不思議な単細胞生物を、筑波大の岡本典子さんと井上勲教授が和歌山県と福岡県の砂浜で見つけた。「ハテナ」と名付けた。ハテナは、植物の祖先が太古に歩んだ進化の道筋を、再現しているとも考えられている。速報が14日発行の米科学誌サイエンスに掲載された。

 ハテナは鞭毛(べんもう)虫の一種で、大きさは100分の3ミリ程度。無色のものは口のような捕食器官を持ち、特定の緑藻の仲間を細胞内に吸い込む。この藻は細胞内で共生、緑色になったハテナからは「口」が消え、光合成をするようになっているらしい。

 緑色のハテナは、緑色と無色の二つの細胞に分裂して増え、共生する藻は緑色細胞にだけ受け継がれていた。もう一方の無色細胞にはやがて捕食器官ができて、藻を取り込むようになる、と考えられている。

 一般の植物で光合成を担っている葉緑体は、太古には独立した藻類だったとの学説が有力。ハテナの発見は、植物の祖先が藻類を取り込んでいった様子をうかがわせるものだ。

 《堀口健雄・北海道大学大学院理学研究科助教授(系統分類学)の話》葉緑体を持たない生物が藻類を細胞内に共生させ、コンブやワカメなどに進化していく初期段階の現象と考えられ、かつてもこうした生物が存在した可能性がある。共生藻を取り込んだか否かで細胞構造を柔軟に変化させるこうした生物がいるとは、だれも予想しなかった。画期的な発見だ。




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