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2013.06.09
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カテゴリ: 昭和期・中間小説

『てんやわんや』獅子文六(新潮文庫)

 本文庫の解説を大井公介(この方の名はどこかで聞いたような気もするんですが、よく思い出せません)が書いています。本作は昭和二十三年に毎日新聞に連載されたが、私(大井氏)が昭和十九年にある随筆を書いたら、その文中の「てんやわんや」の表現が校正の時に「判読できない誤植?」と注されていたとありました。

 そう言われてみれば、「てんやわんや」とは、多分なんだか上を下への大騒ぎといった意味ではありましょうが、一体どこから来た表現なのかよく分かりませんね。
 で、広辞苑を開いてみたら、さすが広辞苑ですね、しっかりと言葉の歴史を踏まえた説明がしてありました。ちょっと写してみますね。

てんやわんや=(「てんでん」(手に手に、各自勝手にの意)と「わや」「わやく」(無茶苦茶の意)との二語が結合してできた語)われがちに騒ぎ立てるさま。互いに先を争って乱雑なさま。てんでんかって。稗史億説年代記「はてさて何処からも--な事はいわせますまい」

 なるほど、やたらと( )の多い説明でありますが、てんでにわやくちゃ、から来た言葉だということがとってもよく分かります。
 それがわかったところで、本小説のタイトルとしての『てんやわんや』ですが、……えー、何と言いましょうかー、わたくし、この小説のどこが「てんやわんや」なのか、さっぱり分からないのであります。……。

 そもそも獅子文六の小説を読んだのは初めてでありまして、実は獅子文六の小説に私は長く興味など持ったことはないのでありました。それがなぜ、今回の読書に至ったかと申しますと、今まで本ブログの何度か名前を出している『筑摩現代日本文学大系全九十七巻別巻一』でありますが、私の部屋にあるもので、まーちょいちょいその背表紙を見ます。

 最近はこのようなブログをしているもので、背表紙にある明治以降の小説家の作品も、多い少ないはありながら、一度は読んだことのある方がかなり増えてきましたが、その中に『大仏次郎・岸田国士・岩田豊雄』という巻がありまして、これが三人とも読んだことがありません。

 読んだことはなくても大仏次郎は(名前が変わっていて記憶に残りやすいということもあって)『鞍馬天狗』や『天皇の世紀』の作者だなと聞きかじっていたり、岸田国士についても(娘が岸田今日子さんだという知識があったりもして)確か劇作家だなというぼんやりとした理解がありました。
 しかし岩田豊雄だけ全く存じ上げる切っ掛けがなかったんですが、獅子文六がこの方だと知り、興味が繋がり今回の読書に至る、とこういう訳であります。

 ところが、申し訳ないながら、本作がわたくしちっとも面白くないんですね。
 冒頭にどこが「てんやわんや」なのか分からないと書きましたが、主人公はちっともてんやわんやしていないんですね。
 ここで踏ん張ったらてんやわんやしそうだという個所はないわけではないのですが(「四国独立運動」なんてのは、本作中唯一出色の着想でありますが、なんとも尻切れとんぼであり)、そもそもの主人公の設定はそういった面倒から背を向ける小心者という風にされています。

 背を向けながらも巻き込まれるというのなら、それはそれで面白いのですが、作品の展開そのものが主人公の性癖そのままに騒動から背を向けまして、だから小説がちっとも「てんやわんや」してきません。

 ……うーむ、とわたくし、ここで考えたんですね。
 それは、いったい面白くない小説とは何か、ということであります。
 以前、小説の面白さについて少し考えたことがありましたから、それをひっくり返せばいいかとも思ったのですが、どうもそうではないようです。

 本作を読んで(私が勝手に、いわば申し訳なくも読者のささやかな「権利」として本作を「面白くない」と思い)、面白くない小説とはどんなものかと考えついたのは、いわゆる常識的価値観から飛び立たない小説ではないか、ということであります。

 作り物だと分かりつつ、ウソ話だと納得しつつ、なぜ我々が小説などというものを読むのかと言えば、それはやはりそこに新しいものを見たいからでありましょう。
 それは特に、ものの見方についてそうではないかと思います。そしてものの見方とは価値観のことであり、我々は、小説に斬新な価値観をこそ発見したいと思うのではないかと私は考えるに至ったわけであります。

 もっとも、三島由紀夫は小説について、正体を捕まえたと思う端からするりと抜け出すものこそが小説であると、述べていましたが……。


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Last updated  2013.06.09 16:23:36
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シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

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