近代日本文学史メジャーのマイナー

近代日本文学史メジャーのマイナー

Calendar

Archives

2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2026.01
2025.12
2025.11
2025.10
2025.09
2025.08

Profile

analog純文

analog純文

全て | カテゴリ未分類 | 明治期・反自然漱石 | 大正期・白樺派 | 明治期・写実主義 | 昭和期・歴史小説 | 平成期・平成期作家 | 昭和期・後半男性 | 昭和期・一次戦後派 | 昭和期・三十年男性 | 昭和期・プロ文学 | 大正期・私小説 | 明治期・耽美主義 | 明治期・明治末期 | 昭和期・内向の世代 | 昭和期・昭和十年代 | 明治期・浪漫主義 | 昭和期・第三の新人 | 大正期・大正期全般 | 昭和期・新感覚派 | 昭和~・評論家 | 昭和期・新戯作派 | 昭和期・二次戦後派 | 昭和期・三十年女性 | 昭和期・後半女性 | 昭和期・中間小説 | 昭和期・新興芸術派 | 昭和期・新心理主義 | 明治期・自然主義 | 昭和期・転向文学 | 昭和期・他の芸術派 | 明治~・詩歌俳人 | 明治期・反自然鴎外 | 明治~・劇作家 | 大正期・新現実主義 | 明治期・開化過渡期 | 令和期・令和期作家
2016.03.07
XML

『漱石文明論集』夏目漱石(岩波文庫)

 さて本年は漱石没後100周年の何とも区切りのよい「漱石イヤー」で、続く次年は漱石生誕150周年とこれまたいかにもめでたい巡り合わせ、あわせて2年続きのめでためでたの「そうせきいやー」でござりまする。……

 ……という文章はちょっと前に書きました。

 で、漱石大好きのわたくしは、とってもわくわく致しまして(なぜわくわくするのか、って? それは、当然わくわくするでしょう。だって堂々と漱石を読み直してよい、ひたってよいという理由がいただけた、それも2年間にもわたってということですから。)

 で、わたくし密かに考えたんですね。どんな漱石イヤー・テーマを考えようかと。
 例えば、確かむかーしにも一度したことがあるのですが、漱石が執筆した順に「猫」から小説を読み直そうか、とか。でもそれだけではつまらないな、と。(しかし「猫」は長く読み返していないので、大いに魅力的ではあるのですが。)

 そして思い立ったのが、「読んでいない漱石」というテーマであります。
 上記に漱石フェイヴァレットなどと書いておきながら、実は私には「読んでない漱石」があるんですね。
 全集は新書版のものながら全巻持っています。でも、読んでいない巻がある、と。
 鬼門、なんですねー、これが。何回か挑んではみたんですが、どうしても跳ね返される。これのせいで全集読破ができないんですねー。
 と、ここまで書けばちょっとした漱石ファンなら、ああ、あれだろうとお気づきになる。
 そう。あれ、なんですね。

「文学論」「文学評論」

 よし、今年のテーマはこの2冊だっ!(厳密に言いますと、この2冊以外にも、網羅するようには読めていない書簡とか日記断片のたぐいはあるので、それも含む、と。)

 ……っと、まー、拳を振り上げるようにして決めたのですが、……どーもちょっと、なんとも不安で、……うーん、なんか無理っぽくないか……ということで、じゃあ、まあとりあえずこのあたりからぼちぼちと、と手に取ったのが冒頭の岩波文庫でありました。……

 というわけで、冒頭の本書です。本書のテーマはタイトルからもすぐに分かりそうですが、解説文を書いている三好行雄が編集方針について「本書は小説以外の領域から、漱石の文明批評にかかわる発言を選んで集めたものである。」と説明しています。
なるほどその通り、具体的に書くと講演録・評論・書簡・断片・日記・随筆と実に雑多な内容です。

 でも、その中心は冒頭に7作が収録されている講演録でありましょう。
 この講演録がまたとても有名で、特に「現代日本の開化」と「私の個人主義」は、確か高校の教科書に載っているような優れた日本文化論となっています。
 夏目漱石が今に至るまで、我が国であたかも「日本人全体の先生」のごとくに扱われているのは、ひとえにこの2つの講演録のおかげだといっていいほどなんですね。

 でも、今回まとめて漱石の講演録を読んで分かったことは、この講演録はけっこう難しいということでありました。
 特に「現代日本の開化」を含む3つの関西での連続講演は、主催が朝日新聞社の行事でありましたが、その時代の漱石作品の読者層の知的レベルが推し量られるような水準の高いものになっています。

 一方「私の個人主義」という講演は学習院大学で行われたものですが、これは結構分かりやすかったです。(このすぐ次のは第一高等学校での講演録ですが、これがまた難しくなっています。)
 テーマは「個人主義」「自己本位」というものですが、明治維新以降、外発的な「歪んだ」文明開化を余儀なくされた日本人は勢いそんな形の身構えをしつつ、しかし心には「淋しさ」が広く潜んでいるというものです。

 今、「淋しさ」という言葉を挙げましたが、この講演は大正3年11月に行われており、ちょうど『こころ』が書かれた後でした。
 言うまでもなく「淋しさ」は『こころ』のキーワードの一つであり、さらに細かく漱石作品を見れば『三四郎』や『明暗』の中にも、さりげなくしかし印象的なフレーズとして紛れ込んでいます。

 さらに本書には、随筆『硝子戸の中』の一部が取り上げられているのですが、ここも有名な箇所で、漱石の家に、自分の半生を小説に書いてもらいたいと女性読者がやって来るという話です。

 このエピソードもしっとりとしたいい話で、掌編ながら感動的であると同時に、結果的に漱石自身の人間性についても好印象を与えるストーリーとなっていますが、このお話も、人間が生きる上での逃れ難い淋しさがテーマであると指摘できます。

 上記に私は「日本人全体の先生」としての漱石という話をしましたが、「先生」という意味理解だけでは、今に至る日本人の漱石に対する尊敬と親しみを説明するには足りません。

 その魅力の源泉は、私たちと共に、生きて行くことの困難さの前に困惑しながらたたずんでいる漱石の姿が作品の端々から肉声として聞こえてくるというところにこそ、存在していると思います。


 よろしければ、こちら別館でお休み下さい。↓

俳句徒然自句自解+目指せ文化的週末

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.03.07 22:13:58
コメント(0) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Favorite Blog

映画の時間 ウー・… New! シマクマ君さん

『百まで生きる覚悟… ばあチャルさん

Comments

シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21) 純文さんへ  あたたかいお返事ありがとう…
analog純文 @ Re[1]:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  シマクマ君さんへ。  おや、思わぬお方…
シマクマ君 @ Re:思っていたよりも「重く」ない(02/21)  いつも読ませていただいてます。あのせ…
analog純文 @ Re[3]:無理筋仮定を考えてみる(12/28)  七詩さんへ、重ねてのコメントありがと…
七詩 @ Re[2]:無理筋仮定を考えてみる(12/28) analog純文さんへ 私もときどき読書日記を…

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: