可及的ゆるやかに。

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働くこと。 その3




男女雇用機会均等法が導入された直後に就職し,
配属された職場には女子更衣室や休憩室など無かった。

その後勤務したところでも,トイレが男女共用だったり,
仕切り板が不完全で,使用音が丸聞こえだったりして,
女性には居辛い場所だった。


夫とは職場結婚だ。
結婚直前,会社の幹部から呼ばれた。
「社員の士気が下がるから,結婚したら辞めるのが常識というものだ。」

職場結婚で退職した人は,みんなそう言われたのだと知った。


数年後,はじめての妊娠が分かった。

「妊婦は電磁波の影響を受けるパソコン作業をしてはいけない」という規則が職場にはあった。
それまで,ワープロやパソコンを駆使していた私は,妊娠を告げると仕事を取り上げられた。
私の代わりに,作業をしてくれるアルバイトが入った。
その人に,手書きで原稿を渡し,ワープロ文書にまとめてもらう。
無駄な時間を使い,ストレスの多い毎日だった。

産前・産後休暇に加えて「育児休業」の制度がちょうどできた時だった。
8週間の産後休暇のあと,引き続き7ヶ月間の育児休業を申請しようとしたら,
上層部から「前例がない」と,難色を示された。



結婚も,出産も,育児休業も,なんでも「前例なし」からのスタート。

身の丈よりも高い枝を,素手で払いながら,無理やり進んできた。

その後ろにできた細い道を,後輩たちが一人ずつ通ってきて,
やがて道は舗装されていった。

結婚し,妊娠しても,業務は今までどおり。
1年間完全に育児休業して,子どもの3歳の誕生日までは,勤務時間の短縮もできるようになった。
それが,「当たり前」な職場に変わった。



私の両腕だけでなく,こころまで傷だらけになったけれど。

ひとつひとつ「前例」をつくってきた。



男には,こんな気持ちは分からない。


(2011.3.20)


⇒働くこと。その4へ


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