ねこねここねこ

油壺

     油壺

 柿右衛門手
 白磁向こう付け五客
 そば猪口一ヶ
 さらに現金六万円也をそえて入手した油壺

 口のしまり
 胴のゆたかさ
 時代の景色を
 簡潔に示した初期伊万里の逸品だが

 もとより
 在っても、なくてもいいもの
 それでも、数ヶ月は
 ひっそりと楽しんだろうか

 愛することは楽しいだろう
 しかし、愛されることは心苦しい
 以上二行は
 古陶磁をこよなく愛した青柳瑞穂氏の言葉だが

 もはや
 愛していないものならば
 手放すことも出来ないということか
 出来ないままの、身辺の葉繁みのざわめき




 この人の詩の中で私が真っ先に選んで 日記に写したのがこれであった。
 成人を迎えることなく逝くであろうと言われ、後は 余分に貰った命だと言っていたという。
  私も また、何度も医師に「覚悟して下さい」と言われながら 生き延びてきた身。
 今更ながらに、何を新たに手に入れようとするのかと、ふと考える。



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