物欲☆あんず雨

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「ハゲタカ」感想日記.1



「ハゲタカ」の対立構図として、『偽善者と偽悪者』の葛藤がある、という事を感じました。
(などと唐突に、しかも、おカタいモードで書き始めてみました♪)

偽善者=芝野さん、偽悪者=鷲津さんです。

『偽悪者』という言葉は、『偽善者』に対してわりと最近創出されたもの、という気配もありますゆえ、この場では単に、偽善者の反対を意味するものと思っていただければ幸いです。
ぶっちゃけ(おさむ風)、「わざと、悪ぶってる…」という感じ。(あ、ズバリ、治も偽悪者ですな)

最終回を観てその思いを強くしたのですが、そもそも11年前の三島家葬儀で鷲津さんが泣いて土下座をした時に、芝野さんがいっしょに土下座してあげていれば、ああまで鷲津さんが苦しむ事にはならなかったように思われるのです…。(って、それじゃあ、『ドラマ』が始まりませぬが)

芝野さん自身が貸し渋りを伝えた訳ではないので、葬儀でも彼は、あくまでただの傍観者としてその場に居合わせただけ。(芝野さんの立場上、三島家葬儀に来るほどではなかったのを、『わざわざ行ってあげた』くらいのスタンスだったかも)
その芝野さんが、最終回での牛島家葬儀で、今度は自分自身に「帰れ!」という言葉が浴びせられ、そこで初めて、11年前の鷲津さんの、深い悲しみと無念が胸に迫って来たのだと思われます。

多少想像して思いやる事は出来ても、その同じ立場になってみないと、理解し切れない最後の一点があるのでしょうね…。

11年前、鷲津さんが欲しかったのは、芝野さんの『資本の論理』云々の偽善的な慰めではなくて、『一緒に苦しんで、泣いてくれる人』だったような気がします。
女性同士だと、わりと自然にそう出来るのに対し、男性の場合、『人前で泣く』ことが簡単でないぶん、それこそ論理で何とかしようとして、ああなってしまう…とも申せませしょうな。

偽善、偽悪から話がそれてしまいましたが、偽善者(ええかっこしい)だった芝野さんが、鷲津さんに再会してから徐々に『手段を選ばない強さ』のようなものを身に付け、偽悪者だった鷲津さんが、最終回で、その芝野さんから「お前と俺は、同じだ」と言ってもらえて、11年間纏っていた『悪ぶってる鎧』を脱ぎ捨てる事ができる…。そういう構造にもなっている事に気付き、改めて感じ入りました。
善も悪もバランスの問題で、それぞれに、しがらんだりぶつかりあったりして、『その先』を見付けて行くところに、『人間ドラマ』の魅力があるという事も再認識いたしました。

そうそう、『ええかっこしい』と申さば、芝野さんが辞表を出した折、飯島さんが「カッコエエな…。お前はいつもカッコエエ。だから、ダメなんだ!」と宣っておりましたが、今にして思えば、深い意味合いがあるセリフだったのでござりまするな。(単に、柴田恭兵さんの雰囲気がカッコイイのだと思いがち♪)

牛島Jr.になじられ今度は泣くほうに回った芝野さんに、由香が『(偽悪ぶりが極まったせいで)最悪の状況に陥ってしまったけれど、それでも諦めていない鷲津さん』の話をして、芝野さんを促し鷲津さんの元へ行かせる…という展開も良かったです。(由香、男二人の『縁結び』してど~する…と思いつつ)(治にも伝言しに行ったりして、最終回は『メッセンジャー由香』)

芝野さんと鷲津さんの協力関係の元、三島製作所での芝野さんの贖罪を経て、今度は由香が長年のわだかまりを完全に解く事が出来る…。
つらい思いを持っていた誰もが、『出来る限りの一歩』で前に出て、頑張ったり踏み留まったりしたことで、それぞれに連鎖反応を起こし、世界を変えてゆく…。その構図も素晴らしいです。

『善』と『悪』の、一見わかりやすい対立で観る人を惹き込み、その先にある『人間の深さ』を見せる…という高度な表現と、その表現のために努力を惜しまなかった制作陣に、改めて敬意を抱いております。


        ☆     ★     ☆


この駄文、「ハゲタカ」最終回の観賞後ほどなくして書き始めておったのですが、途中で脱線し過ぎてまとまらないまま放置しておりました。

先ほど、レクター博士とウィル・グレアムについて書いているうちに、あの二人の対立関係にも『偽善者Vs.偽悪者』の匂いがちょっぴりあるな…という気がして来て、書きかけだった上記の文を思い出しました。

『偽』という文字を冠してはイカンほど、レクターとグレアムの立ち位置は際立っておりまするが、続編が出る度に人間味が増して来ているレクターと、「レッド・ドラゴン」のエピローグで、自分の中の暗い深淵に目を向けるグレアムにも、どこかでその『立ち位置』が逆転するかもしれない要素を感じたりもしております。

善とか悪とかいうのは単に立ち位置だけの問題で、ほぼ純粋に、相手との戦いを楽しんでいたのが『Lとライト』だったよな…という辺りに連想が及んだところで、「DEATH NOTE」のDVDをまだ観ていなかった事に気付いた私めでござりました…。(L~~、ゴメンなさ~~~い!!)(ライトには謝罪無し)



~芝野さんが亡くした人数~(2007.4.12)

「ハゲタカ」第1回で、5年ぶりに再会した鷲津さんの事を、まっっったく憶えていなかった芝野さん。
行き場を無くして、宙をさまよう鷲津さんの「お久しぶりです」のご挨拶…。

「丸ノ内支店で半年ほどご一緒させていただいた、鷲津です」という念入りな回想補助にもかかわらず、「丸ノ内…」とつぶやいたきり脳内検索・即、フリーズの芝野ハードディスク。
数秒待ったのち、「…では、さっそく本題(バルクセール打ち合わせ)に入りましょう」と、話しを切り替えた時の鷲津さんの内心の落胆ぶり、今さらのように胸に迫りましたり…。(露と消えた『思い出してもらえるかも』という淡い期待…)(で、『先輩イジメ』の気持ちがムクムクと~♪)

その後、コーヒーショップ(値段安かったから、三葉の社員食堂?)で鷲津さんから「思い出していただいただけで光栄です」な~んて言われていた芝野さんだけれども、人事部保管の履歴書を(こっそり)見て、鷲津さんが辞めた経緯をようやっと思い出せたという…。

履歴書の、昔の写真を見てシナプスが繋がったらしい芝野さんでござりまするが、いくら『勝負メガネで大変身♪』な鷲津さんと申せど、やはり、かなりな忘却仕打ち。
それに、顔はともかく『鷲津』という珍しい苗字でピンと来い!という気がしないでも。(その記憶力、ホントに『エリートバンカー』っスか??)

まぁ、それはさておきまして、第4回で大木会長に向かって「私は…銀行員時代に、取り引き先の人を…取り引き先の人を何人も亡くしました…」と振り絞るように告白する芝野さんの言葉で、(それまで想像の範囲内だった)いちいち記憶し切れないくらいの『貸し渋りを言い渡して落ち込む後輩』やら『自殺してしまった人』が居たんだな…という事がはっきりと判りました。

鷲津さんの事を記憶し切れなくなるほどの、いったい何人の『三島健一』を、芝野さんは亡くしたんだろう…と思うと、とても怖いものがありまする。(実際の、バブル後の銀行員たちも??…などと思いますると…)

そして、何人の後輩をなぐさめつつ、あのイ~カゲンな『資本の論理』を開陳したのか…という辺りも、おおいに気になっているところでござりまする。
(ひょっとして、第2、第3の『鷲津政彦』が??)



~何も見えていない~(2007.4.17)

最終回、ホライズン側にカメラ・レンズ事業部のEBOを認めさせる段で、鷲津ファンドの暗躍にようやく気付いたアランに向かって、鷲津さんが放つ一言。

「アラン、お前にはまだ何も見えていない」

ホライズン・ジャパン代表としての帰国以来、長らく鷲津さんの大事な(可愛い)右腕だったアラン。
終盤、本社クラリスの側に付いて鷲津さんを裏切ったあげく、まんまと新代表の座に納まったアランを、それでも鷲津さんは『可愛い(でもちょっと、しょ~もない)弟』のように思い続けていたような気がします。

だからこそ、そんな『弟分』に向けて「まだまだだな…」という感じの、ある種、これからの頑張りを促すような一言としての、「何も見えていない」教示だったのではないでしょうか。

遡って第2回。大河内ファミリーが暮す豪邸を尋ね、ホライズンの申し出に聞く耳を持たない瑞恵社長から追い出された後、「収穫は何も無かったですね…」とこぼすアランに、鷲津さんのほうは「いや、大収穫だよ」と返します。「少なくとも、大河内ファミリーは一枚岩じゃない」
『社長』の座にこだわる瑞恵と違い、実際に経営に携わらなくても充分な配当を受けられる…という点に心を動かされたらしい、息子・伸彰らの、一瞬の表情やつぶやきを、鷲津さんは見逃していなかったのです。

そして今度は、差し押さえ申請書を持ってサンデートイズ本社を訪問しての帰り。
相変わらず頑で尊大な瑞恵社長の態度に呆れているアランに、鷲津さんは、彼女に話を聞かせている訳ではなく、ターゲットは息子の伸彰だと明かします。
その時、アランは「伸彰?」と返すのですが、それが如何にも『鷲津さんから言われるまで、まったく気付いていなかった』という雰囲気の、無邪気な言い方なのです。(映像は、かなり引いたアングルから、サンデー社外へ出る二人の図、なのですが、『伸彰?』と言いながら、鷲津さんのほうをチラッと見るアランが何気に可愛いかったり♪)

アランには、鷲津さんのような、『ものごとの裏側まで見通す目』、バルチャー・ビジネスをやって行く上での、獲物のすべてを見極める『ハゲタカの目』が、まだまだ備わっていないという事が判ります。
ゆえに、芝野さんの離反や(素人っぽい)スパイ活動、加藤さんへの働きかけにも、最後まで気が付かなかったのでござりましょう。

EBOの件で、やっぱり鷲津さんには到底かなわないという事を悟ったアラン、改めて謙虚に頑張らなければ、ホライズン・ジャパンの行く末は、危うい…という感じでござりまするな。


「何も見えていない」と言われたのは、実は、アランだけではござりませぬ。
そう、我らが(?)芝野さんも、三葉銀行に辞表を出した折に、同期の沼田さんから言われているのです。
「お前はなんにも見えていない。…いや、見ようとしていない」と。

以前書いたマイあらすじもどきでは、沼田さんの事はスルーしてしまっておりましたが、飯島さんからの重圧に苦しむ芝野さんのヤケ酒に付き合った時に、味わい深い励ましの言葉を送っていたりして、少ない登場シーンながらも、大事な登場人物の一人だと思っています。(同様に、由香の上司・野中さんの事も、あらすじでは曖昧に書いてしまいましたので、いつかちゃんとフォローしたいです♪)

話を戻しまするが、沼田さんは、芝野さんに向かってこう続けます。
「這いつくばって、罵られて、それでも与えられた仕事を一つ一つこなして行く、そうやって生き続けた時、次が見えて来る…」

そう、エエカッコしいエリート・芝野さんは、『這いつくばったり、罵られたりする』という事を、極力避けて生きて来た人なのです。

だからこそ、最終回で牛島Jr.から「帰れ!」と罵られるまで、自分にとって真につらい事や都合の悪い事を『何も見ようとしていなかった』のです。
(対する鷲津さんは、『這いつくばった』のが出発点で、『罵られ』続けても、ずっと頑張って来たのですな)

少々脱線いたしまするが、沼田さんは「俺は、最後まで三葉に残る。辞めないのも勇気だよ、芝野」と、言い置いて去ります。
その少し前のシーン、飯島さんの「沼田君に調べてもらった…」というセリフから『芝野さんが三葉を裏切った事を調査した』のは、他ならぬ沼田さんであるという事が判ります。
仕事とはいえ、同期であり大事な友人であった芝野さんを、沼田さんは、事実上、告発してしまっているのです。

芝野さんが辞表を出さざるを得ない状況に追い込む事に、自分自身も関わってしまった沼田さん…。
沼田さんの話は、ドラマではその後一切触れられませぬが、「辞めないのも勇気だよ」と言った彼のその後に、幸多かれ…と思う次第であります。

人それぞれの、「何も見えていない」という面を、さりげなく『見せて』いる「ハゲタカ」。
そういうところも、深いドラマだな~~と感じ入るばかりにて候です。



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